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24章
153.パレードとその後
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エンドラスト国からゲムデース国へと移動。
すでに魔王を倒したことが広まっているようで道中、感謝の言葉や贈り物を大量に貰うことになった。
白い箱があってよかったと詰め込みながら思う。
学校近くを歩いていると、ナルが口を開いた。
「僕は学校に戻るよ。抜けて来たからね」
「そうだったの? ごめんね、ありがとう」
「別に、僕が勝手に来ただけだから」
少し照れくさそうにしながら、ナルは足早に校門を潜って行ったのだった――
「魔王討伐、ご苦労だったな。それで? うちのイナトは救世主を口説き落とせたのか?」
「……その話はやめてください。救世主様、次に行きましょう」
「おいおい、流石に何もしないのは国としてやばいって! パレード開くから参加してくれ」
促されるまま豪華な馬車に乗せられ皆の前で手を振る作業。これはかなり疲れる作業だ。
私達を見る視線はとても温かく、やりがいはあったのかなと少しだけ感傷的になってしまう。
時々、「イナトさま~」「ルーパルドさま~」と黄色い声が聞こえてくるが、2人とも完全無視。むしろ目を合わせないように必死だ。ここで合わせたらきっと勘違いされてしまうからだろう。徹底している。
「ロク、こういう時くらいフード脱いだら?」
「渡者は無闇やたらと顔を出さない」
「せっかくかっこいい顔なのにね」
「そんなに好きならリンの前ではフードを脱ぐ」
「突然デレてきたなぁ……」
パレードも終わりを迎え、そのあとはデボラとゼヴリンに出会ってしまいそのまま食事へ。
レストランを貸切にしたのか、他に人はおらず無駄に広い部屋でポツンとテーブルが置かれている。
流されるまま、なんとなく食事が始まってしまった。
そして開口一番、デボラから質問された。
「それで、お兄様との小説はお読みになられまして?」
「忙しくて読めてないです……」
「まあ、仕方ないですわね。でも、これからゆっくり読めますわよね?」
「あ、はい。そうですね」
早く読んで感想を聞かせてくれと言いたげな表情。隣にいるゼヴリンから聞けばいいだろうと思ったりもしたが、さすがに兄から聞くのは躊躇うのだろうか。
ちらっとゼヴリンを見ると、顔を赤くして目を逸らされてしまった。更に悪化している気がするが、もしかして全部読んでしまったのだろうか。ミマお手製の小説を……
「その話はやめましょ、ね? それよりもコンタクトレンズでしたっけ。あれ、かなり売れてるらしいじゃないですか」
イナトがゼヴリンを視線で殺してしまいそうな雰囲気を醸し出しているため、ルーパルドは慌てて話題を切り替える。
「はい。これもリンのおかげです」
「ゼヴリンの役に立ったみたいでよかったよ」
「え、ちょ、いつから呼び捨ての仲に?」
「堅苦しいのが苦手だから、私が提案した」
ルーパルドは動揺しつつもイナトを見た。イナトから殺意が消えたかと思えば、動揺で持っていたカップが揺れ、中身が飛び出してしまいそうなほど波打っている。それはまるで漫画のようだ。
ロクはそんなイナトを見て突っ込む。
「そんなに悔しいならお前も敬語と救世主様呼びをやめたらいいだろ」
「そうだよ。私は許可したはずだよ?」
イナトにそう言えば、何を悩んでいるのか顔をくしゃっとしている。
そして、やっと口を開いたかと思えば、イナトは小さな声で独り言かのように言う。
「僕は、敬語が抜けると口が悪くなってしまいます」
「自覚あったんですね、団長」
ルーパルドは乾いた笑いを浮かべている。ルーパルドにだけかと思っていたが、そうでもないようだ。
「もしかして、イナト様の罵りが聞けるんですの?」
「待ってください、なんで罵る前提なんですか?」
思わずデボラにツッコミを入れた私。だって口が悪くなってしまうと言う話だけだったはずだ。それなのにまるで敬語が抜けたら罵るのが普通。みたいな感じになるとは誰も思わない……よね?
「イナト、遠慮せずどうぞ?」
「…………リン、僕は何を言ったら」
「おお、新鮮な感じ」
私が笑顔でイナトに頷くと、顔を手で覆い唸っている。
その様子を「きゃー! 可愛いですわ~!」とデボラがはしゃいでいる。カメラがあったらきっと連写しまくりだったことだろう。
「気持ち悪いな」
「わかる。その気持ちはすげーわかる」
小声で言い合うルーパルドとロク。チラチラとイナトを見ていたが、イナトは聞こえていないのか睨むこともなく、ずっと顔を覆っている。
ゼヴリンは何か見てはいけないものを見たと思っていそうな顔だ。
「すみません僕にはまだ早いようです」
頭を冷やしてくるとイナトはどこかへ言ってしまった。デボラは今がチャンスと思ったのだろう、立ち上がり私を見た。
「追いかけてもいいですわよね?」
「へ? いいんじゃないですか?」
「……余裕な態度ですこと」
ちょっとムッとしたデボラだったが、すぐさまイナトが行った方向へと駆け足。
健気だなぁとその背中を見つめていると、ゼヴリンが私の名前を読んだ。
「リン、本当によかったのか? 妹のせいならば、どうか気にせずイナト殿の元へ行くと良い」
「リンなら大丈夫ですよ。私は帰るから誰とも恋人になるつもりはない! て豪語してましたから」
私の代わりにルーパルドがゼヴリンに言う。
ゼヴリンはその言葉を聞いて「そうですか……」と納得した表情を見せる。
「だから皆さん余裕がないのですね」
「えっ、バレてたんですか……」
「あいつもお前も焦ってるからな。バレるだろ」
ロクはずっと肉を中心に食べ続けている。給仕の人もびっくりの量をすでに平らげている。
その様子を気にも留めず、ゼヴリンはロクの発言に頷いた。
「確かにイナト殿とルーパルド殿は特にわかりやすいですね」
「だってリンってば、俺の言動で照れたりしてくれるくせに、一線だけは越えないようにしてるんですもん」
「帰るつもりなのに、思わせぶりな態度はよくないでしょ」
照れてしまうのは、私が慣れてないからどうかそこは許してほしい。
すでに魔王を倒したことが広まっているようで道中、感謝の言葉や贈り物を大量に貰うことになった。
白い箱があってよかったと詰め込みながら思う。
学校近くを歩いていると、ナルが口を開いた。
「僕は学校に戻るよ。抜けて来たからね」
「そうだったの? ごめんね、ありがとう」
「別に、僕が勝手に来ただけだから」
少し照れくさそうにしながら、ナルは足早に校門を潜って行ったのだった――
「魔王討伐、ご苦労だったな。それで? うちのイナトは救世主を口説き落とせたのか?」
「……その話はやめてください。救世主様、次に行きましょう」
「おいおい、流石に何もしないのは国としてやばいって! パレード開くから参加してくれ」
促されるまま豪華な馬車に乗せられ皆の前で手を振る作業。これはかなり疲れる作業だ。
私達を見る視線はとても温かく、やりがいはあったのかなと少しだけ感傷的になってしまう。
時々、「イナトさま~」「ルーパルドさま~」と黄色い声が聞こえてくるが、2人とも完全無視。むしろ目を合わせないように必死だ。ここで合わせたらきっと勘違いされてしまうからだろう。徹底している。
「ロク、こういう時くらいフード脱いだら?」
「渡者は無闇やたらと顔を出さない」
「せっかくかっこいい顔なのにね」
「そんなに好きならリンの前ではフードを脱ぐ」
「突然デレてきたなぁ……」
パレードも終わりを迎え、そのあとはデボラとゼヴリンに出会ってしまいそのまま食事へ。
レストランを貸切にしたのか、他に人はおらず無駄に広い部屋でポツンとテーブルが置かれている。
流されるまま、なんとなく食事が始まってしまった。
そして開口一番、デボラから質問された。
「それで、お兄様との小説はお読みになられまして?」
「忙しくて読めてないです……」
「まあ、仕方ないですわね。でも、これからゆっくり読めますわよね?」
「あ、はい。そうですね」
早く読んで感想を聞かせてくれと言いたげな表情。隣にいるゼヴリンから聞けばいいだろうと思ったりもしたが、さすがに兄から聞くのは躊躇うのだろうか。
ちらっとゼヴリンを見ると、顔を赤くして目を逸らされてしまった。更に悪化している気がするが、もしかして全部読んでしまったのだろうか。ミマお手製の小説を……
「その話はやめましょ、ね? それよりもコンタクトレンズでしたっけ。あれ、かなり売れてるらしいじゃないですか」
イナトがゼヴリンを視線で殺してしまいそうな雰囲気を醸し出しているため、ルーパルドは慌てて話題を切り替える。
「はい。これもリンのおかげです」
「ゼヴリンの役に立ったみたいでよかったよ」
「え、ちょ、いつから呼び捨ての仲に?」
「堅苦しいのが苦手だから、私が提案した」
ルーパルドは動揺しつつもイナトを見た。イナトから殺意が消えたかと思えば、動揺で持っていたカップが揺れ、中身が飛び出してしまいそうなほど波打っている。それはまるで漫画のようだ。
ロクはそんなイナトを見て突っ込む。
「そんなに悔しいならお前も敬語と救世主様呼びをやめたらいいだろ」
「そうだよ。私は許可したはずだよ?」
イナトにそう言えば、何を悩んでいるのか顔をくしゃっとしている。
そして、やっと口を開いたかと思えば、イナトは小さな声で独り言かのように言う。
「僕は、敬語が抜けると口が悪くなってしまいます」
「自覚あったんですね、団長」
ルーパルドは乾いた笑いを浮かべている。ルーパルドにだけかと思っていたが、そうでもないようだ。
「もしかして、イナト様の罵りが聞けるんですの?」
「待ってください、なんで罵る前提なんですか?」
思わずデボラにツッコミを入れた私。だって口が悪くなってしまうと言う話だけだったはずだ。それなのにまるで敬語が抜けたら罵るのが普通。みたいな感じになるとは誰も思わない……よね?
「イナト、遠慮せずどうぞ?」
「…………リン、僕は何を言ったら」
「おお、新鮮な感じ」
私が笑顔でイナトに頷くと、顔を手で覆い唸っている。
その様子を「きゃー! 可愛いですわ~!」とデボラがはしゃいでいる。カメラがあったらきっと連写しまくりだったことだろう。
「気持ち悪いな」
「わかる。その気持ちはすげーわかる」
小声で言い合うルーパルドとロク。チラチラとイナトを見ていたが、イナトは聞こえていないのか睨むこともなく、ずっと顔を覆っている。
ゼヴリンは何か見てはいけないものを見たと思っていそうな顔だ。
「すみません僕にはまだ早いようです」
頭を冷やしてくるとイナトはどこかへ言ってしまった。デボラは今がチャンスと思ったのだろう、立ち上がり私を見た。
「追いかけてもいいですわよね?」
「へ? いいんじゃないですか?」
「……余裕な態度ですこと」
ちょっとムッとしたデボラだったが、すぐさまイナトが行った方向へと駆け足。
健気だなぁとその背中を見つめていると、ゼヴリンが私の名前を読んだ。
「リン、本当によかったのか? 妹のせいならば、どうか気にせずイナト殿の元へ行くと良い」
「リンなら大丈夫ですよ。私は帰るから誰とも恋人になるつもりはない! て豪語してましたから」
私の代わりにルーパルドがゼヴリンに言う。
ゼヴリンはその言葉を聞いて「そうですか……」と納得した表情を見せる。
「だから皆さん余裕がないのですね」
「えっ、バレてたんですか……」
「あいつもお前も焦ってるからな。バレるだろ」
ロクはずっと肉を中心に食べ続けている。給仕の人もびっくりの量をすでに平らげている。
その様子を気にも留めず、ゼヴリンはロクの発言に頷いた。
「確かにイナト殿とルーパルド殿は特にわかりやすいですね」
「だってリンってば、俺の言動で照れたりしてくれるくせに、一線だけは越えないようにしてるんですもん」
「帰るつもりなのに、思わせぶりな態度はよくないでしょ」
照れてしまうのは、私が慣れてないからどうかそこは許してほしい。
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