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第2章
誰がために
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突然リュカの中から自ら現れたセームルグに、俺とリュカは二人して驚いた。
なんか嫌な気がする……
「なんだ……?どうしたんだ、セームルグ……?」
「突然すみません。お伝えしておきたい事がありまして……」
「何をだ?なんかヤバい事でもあるのか?!」
「今すぐどうこういうわけではありません。リュカ……」
セームルグがリュカの頭に手をやると、そのままリュカは崩れ落ちるようにして眠った。すかさず俺が抱き止めて、眠ったリュカをそっとベッドに寝かせ、布団をかける。
「なんでリュカにこんな……聞かせたくなかったのか?」
「これから話をする事は、私からではなく必要とあればエリアスさんからリュカに伝えてください。」
「……分かった……」
「リュカは黒龍2体分の、とてつもなく大きな力を手に入れています。まぁ、リュカ自身は無自覚でしたが。」
「そうみてぇだな。」
「その膨大な力は、リュカの体内で一旦私が預かるような感じで留めている訳ですが、リュカが生きるのにこの力が必要となります。」
「ん?なんだ?どういう事だ?」
「今は奪った力を少しずつ使っている状態です。それがリュカを維持させています。現在その力は有り余る程にありますからね。しかし、その力が無くなった場合……」
「え?無くなったら……って、リュカはどうなるんだよ?!」
「落ち着いて聞いてください。その力が無くなってしまったら、リュカは自分自身を維持することが出来なくなります。」
「維持できねぇって……じゃあどうなるんだ?!リュカはどうなるって言うんだよっ!」
「……力が無くなると……リュカは生きてはいられません。」
「なっ!なんで!なんでだよっ?!なんでそんな事になんだよ?!」
「元々は人から産まれ出る存在です。しかし、黒龍に宿った事で、大きくその理が変わってしまったんです。リュカは触れると力を奪ってしまう。そうしたくなくてもです。けれど、それがリュカを生きさせる方法となりました。」
「じゃあ、リュカが誰かから体力とか魔力とかを奪えば、リュカはこのまま生きていられるって事なんだな?」
「簡単に言えばそういう事です。しかし、そんなに単純ではありません。」
「なんでだよ?!誰かから奪わなきゃいけねぇんなら、俺から奪えば良いだろ?!」
「エリアスさんが思うより大きな力が必要なんです。毎日与え続けるなんて出来る訳はありません。そんな事をしたら、貴方の体が持ちませんよ?」
「俺の事なんて……」
「そうされてリュカが喜ぶと思いますか?今リュカには貴方しかいないんですよ?」
「そうだけど……じゃあどうすれば……!」
「人間以外からでも奪えれば良いのですが……それもリュカは拒否しそうですね……」
「魔物からでもいいのか?」
「えぇ。生きている者であれば問題なく。ですが……」
「魔物をリュカは殺せない、か……?」
「はい。貴方と別れてから、リュカは魔物の巣窟と呼ばれる場所で過ごしていました。いつもそばにフェンリルはいましたが、リュカは常に孤独を感じでいましたよ。リュカの心はいつも、張り裂けんばかりに泣いている状態でしたから……」
「リュカ……」
「そんな生活の中、段々魔物を従えられるようになって、そんな魔物を可愛く思う心が芽生えました。あの環境でそうなるのは自然な流れでしょうね。」
「じゃあ……じゃあどうすればいいんだよ?!せっかく会えたのに!リュカにはこれから人としての幸せを感じさせてやりてぇのに!!」
「落ち着いてください、エリアスさん。今すぐに、という事ではないんです。まだ黒龍の力は有り余る程ですから。」
「じゃあいつまでだよ?!リュカはこのままだったらいつまで……」
「今の状態であれば10年程でしょうか……」
「10年って……」
「あくまで、今の状態で、です。」
「え?」
「リュカはまだ自分の力を覚醒出来ていません。」
「え……それは……」
「はい、通常であれば、自分の力に覚醒する年齢は、個人差はありますが大体10歳から11歳です。覚醒すると魔法が使えるようになったり、自分にあった力に目覚めたりします。」
「まぁ、そうだな……俺も11歳の時に魔眼が使えるようになって、それから魔法も使えるようになったからな……けど、リュカは魔法を使ってたぜ?!火魔法も水魔法も、雷魔法も!」
「それがリュカの凄いところですね。ですが、それでもまだ覚醒していないんですよ。」
「え、待ってくれ……もしリュカの力が覚醒したら……」
「えぇ。今よりもっと力を使うことになるでしょうね。」
「んな事……!なんでリュカにばっかりっ!なんでだよっ!」
「本当は天に還る魂だったんです。それが現世にとどまってしまったが為……とでも言いましょうか……」
「とどまってしまったって……!」
「エリアスさんの思いが強かったからですよ。」
「えっ……」
「貴方がリュカを思う気持ちが、リュカをこの世にとどめたんです。」
「俺が……」
「貴方の為に、リュカはこの世に存在する事になったんです。」
「そんな、こと……っ!」
俺がリュカの命を奪った……なのに、俺が天へ還る筈のリュカを引き止めたのか……?!それが良かったのかどうなのかは分からねぇ……いや、俺にとっちゃあ良かった事なんだ!けど、リュカは……リュカにしたらどうなんだ?!
リュカが黒龍の子として生まれて龍として育てられたのも、その力の代償にフェンリルに連れ去られ魔物を統べるように強制されたのも、そしてリュカが奪わないと生きられない体になったのも!
全部……全部俺が!俺のせいでリュカがこんな事になっちまってる……っ!
「セームルグ……っ!セームルグ!俺はどうすれば良い?!俺がリュカをこんな目に合わせた!俺、どうしたら……っ!!」
「エリアスさん、お気持ちは分かりますが、まずは落ち着いてください。貴方がしっかりしなくてどうするんですか?」
「あ、そう、だな、ちょっと待ってくれ……」
天井を仰いで、大きく深呼吸する。
そうだ、俺が落ち着かねぇとな……
何度かそうやって、何とか冷静になるように努める。
「すまねぇ、セームルグ……続けてくれ。」
「はい。先程も言いましたが、このままであれば、リュカは10年程の命です。しかし、力が覚醒すれば、その力によって留めてあった力を大きく使うことになります。こればかりはどれだけとは今の段階で断定はできませんが、長くても……」
「長くても……?」
「5年程かと……」
「……っ!長くてもかっ?!」
「そうですね……リュカの能力は素晴らしいんです。エリアスさんとアシュリーさんの子供ですからね。その力を多く受け継いでいます。けれど、それが大きく黒龍の力を奪う事になります。短ければ……覚醒してから1年も持たない場合もあるかも知れません……」
「そん、な……うそだろ……」
「本当の事です。ですが、何処まで黒龍の力が持つのかはまだ分かりません。まずはリュカがそうなることを理解しておいてください。」
「……なにか……なにか方法はないのか?!リュカを助ける方法はっ!?セームルグっ!!」
「助けるには……与え続けるしかありません。しかし……」
「リュカが受け入れない……のか?!」
「黒龍の命を奪った事が大きくリュカに傷を残していますからね……もう誰からも奪う事はしたくないと考えているようです。」
「リュカ……っ!」
自然と涙が溢れてきた……
俺が命を奪ったリュカ……けれど、俺の為に現世に残ってくれた……でもそのせいでリュカの命が……
全部俺が……!俺のせいでリュカが!
どうしたらいい?!
どうすればリュカは助かる?!
俺はまた何も出来ないのか?!
リュカから奪うばっかで、何も与えてやれてねぇっ!
結局俺は何も出来ねぇのか?!
こんなの……リュカが可哀想過ぎるだろっ!
「一つだけ思いつく方法があるのですが……」
あまりに何も言えなくなって動揺していた俺を見かねたのか、セームルグが重い口を開く。
「それに……あまりお勧めしたくない事なんですが……」
「なんだよ?!どんな事でもいいっ!教えてくれっ!頼むっ!!」
セームルグは本当は伝えたくは無かった、と前置きしながら、ゆっくり話してくれた。
どんな方法であれ、俺は少しの可能性があるならやってみせる……!
これ以上、リュカを俺の犠牲にしちゃいけねぇんだ!
守るって決めたんだ!絶対守るって!
今度こそ、絶対そうしねぇとダメなんだ!
リュカ!何も心配しなくていいからな!
今度こそ、俺が必ずリュカ守る……!
なんか嫌な気がする……
「なんだ……?どうしたんだ、セームルグ……?」
「突然すみません。お伝えしておきたい事がありまして……」
「何をだ?なんかヤバい事でもあるのか?!」
「今すぐどうこういうわけではありません。リュカ……」
セームルグがリュカの頭に手をやると、そのままリュカは崩れ落ちるようにして眠った。すかさず俺が抱き止めて、眠ったリュカをそっとベッドに寝かせ、布団をかける。
「なんでリュカにこんな……聞かせたくなかったのか?」
「これから話をする事は、私からではなく必要とあればエリアスさんからリュカに伝えてください。」
「……分かった……」
「リュカは黒龍2体分の、とてつもなく大きな力を手に入れています。まぁ、リュカ自身は無自覚でしたが。」
「そうみてぇだな。」
「その膨大な力は、リュカの体内で一旦私が預かるような感じで留めている訳ですが、リュカが生きるのにこの力が必要となります。」
「ん?なんだ?どういう事だ?」
「今は奪った力を少しずつ使っている状態です。それがリュカを維持させています。現在その力は有り余る程にありますからね。しかし、その力が無くなった場合……」
「え?無くなったら……って、リュカはどうなるんだよ?!」
「落ち着いて聞いてください。その力が無くなってしまったら、リュカは自分自身を維持することが出来なくなります。」
「維持できねぇって……じゃあどうなるんだ?!リュカはどうなるって言うんだよっ!」
「……力が無くなると……リュカは生きてはいられません。」
「なっ!なんで!なんでだよっ?!なんでそんな事になんだよ?!」
「元々は人から産まれ出る存在です。しかし、黒龍に宿った事で、大きくその理が変わってしまったんです。リュカは触れると力を奪ってしまう。そうしたくなくてもです。けれど、それがリュカを生きさせる方法となりました。」
「じゃあ、リュカが誰かから体力とか魔力とかを奪えば、リュカはこのまま生きていられるって事なんだな?」
「簡単に言えばそういう事です。しかし、そんなに単純ではありません。」
「なんでだよ?!誰かから奪わなきゃいけねぇんなら、俺から奪えば良いだろ?!」
「エリアスさんが思うより大きな力が必要なんです。毎日与え続けるなんて出来る訳はありません。そんな事をしたら、貴方の体が持ちませんよ?」
「俺の事なんて……」
「そうされてリュカが喜ぶと思いますか?今リュカには貴方しかいないんですよ?」
「そうだけど……じゃあどうすれば……!」
「人間以外からでも奪えれば良いのですが……それもリュカは拒否しそうですね……」
「魔物からでもいいのか?」
「えぇ。生きている者であれば問題なく。ですが……」
「魔物をリュカは殺せない、か……?」
「はい。貴方と別れてから、リュカは魔物の巣窟と呼ばれる場所で過ごしていました。いつもそばにフェンリルはいましたが、リュカは常に孤独を感じでいましたよ。リュカの心はいつも、張り裂けんばかりに泣いている状態でしたから……」
「リュカ……」
「そんな生活の中、段々魔物を従えられるようになって、そんな魔物を可愛く思う心が芽生えました。あの環境でそうなるのは自然な流れでしょうね。」
「じゃあ……じゃあどうすればいいんだよ?!せっかく会えたのに!リュカにはこれから人としての幸せを感じさせてやりてぇのに!!」
「落ち着いてください、エリアスさん。今すぐに、という事ではないんです。まだ黒龍の力は有り余る程ですから。」
「じゃあいつまでだよ?!リュカはこのままだったらいつまで……」
「今の状態であれば10年程でしょうか……」
「10年って……」
「あくまで、今の状態で、です。」
「え?」
「リュカはまだ自分の力を覚醒出来ていません。」
「え……それは……」
「はい、通常であれば、自分の力に覚醒する年齢は、個人差はありますが大体10歳から11歳です。覚醒すると魔法が使えるようになったり、自分にあった力に目覚めたりします。」
「まぁ、そうだな……俺も11歳の時に魔眼が使えるようになって、それから魔法も使えるようになったからな……けど、リュカは魔法を使ってたぜ?!火魔法も水魔法も、雷魔法も!」
「それがリュカの凄いところですね。ですが、それでもまだ覚醒していないんですよ。」
「え、待ってくれ……もしリュカの力が覚醒したら……」
「えぇ。今よりもっと力を使うことになるでしょうね。」
「んな事……!なんでリュカにばっかりっ!なんでだよっ!」
「本当は天に還る魂だったんです。それが現世にとどまってしまったが為……とでも言いましょうか……」
「とどまってしまったって……!」
「エリアスさんの思いが強かったからですよ。」
「えっ……」
「貴方がリュカを思う気持ちが、リュカをこの世にとどめたんです。」
「俺が……」
「貴方の為に、リュカはこの世に存在する事になったんです。」
「そんな、こと……っ!」
俺がリュカの命を奪った……なのに、俺が天へ還る筈のリュカを引き止めたのか……?!それが良かったのかどうなのかは分からねぇ……いや、俺にとっちゃあ良かった事なんだ!けど、リュカは……リュカにしたらどうなんだ?!
リュカが黒龍の子として生まれて龍として育てられたのも、その力の代償にフェンリルに連れ去られ魔物を統べるように強制されたのも、そしてリュカが奪わないと生きられない体になったのも!
全部……全部俺が!俺のせいでリュカがこんな事になっちまってる……っ!
「セームルグ……っ!セームルグ!俺はどうすれば良い?!俺がリュカをこんな目に合わせた!俺、どうしたら……っ!!」
「エリアスさん、お気持ちは分かりますが、まずは落ち着いてください。貴方がしっかりしなくてどうするんですか?」
「あ、そう、だな、ちょっと待ってくれ……」
天井を仰いで、大きく深呼吸する。
そうだ、俺が落ち着かねぇとな……
何度かそうやって、何とか冷静になるように努める。
「すまねぇ、セームルグ……続けてくれ。」
「はい。先程も言いましたが、このままであれば、リュカは10年程の命です。しかし、力が覚醒すれば、その力によって留めてあった力を大きく使うことになります。こればかりはどれだけとは今の段階で断定はできませんが、長くても……」
「長くても……?」
「5年程かと……」
「……っ!長くてもかっ?!」
「そうですね……リュカの能力は素晴らしいんです。エリアスさんとアシュリーさんの子供ですからね。その力を多く受け継いでいます。けれど、それが大きく黒龍の力を奪う事になります。短ければ……覚醒してから1年も持たない場合もあるかも知れません……」
「そん、な……うそだろ……」
「本当の事です。ですが、何処まで黒龍の力が持つのかはまだ分かりません。まずはリュカがそうなることを理解しておいてください。」
「……なにか……なにか方法はないのか?!リュカを助ける方法はっ!?セームルグっ!!」
「助けるには……与え続けるしかありません。しかし……」
「リュカが受け入れない……のか?!」
「黒龍の命を奪った事が大きくリュカに傷を残していますからね……もう誰からも奪う事はしたくないと考えているようです。」
「リュカ……っ!」
自然と涙が溢れてきた……
俺が命を奪ったリュカ……けれど、俺の為に現世に残ってくれた……でもそのせいでリュカの命が……
全部俺が……!俺のせいでリュカが!
どうしたらいい?!
どうすればリュカは助かる?!
俺はまた何も出来ないのか?!
リュカから奪うばっかで、何も与えてやれてねぇっ!
結局俺は何も出来ねぇのか?!
こんなの……リュカが可哀想過ぎるだろっ!
「一つだけ思いつく方法があるのですが……」
あまりに何も言えなくなって動揺していた俺を見かねたのか、セームルグが重い口を開く。
「それに……あまりお勧めしたくない事なんですが……」
「なんだよ?!どんな事でもいいっ!教えてくれっ!頼むっ!!」
セームルグは本当は伝えたくは無かった、と前置きしながら、ゆっくり話してくれた。
どんな方法であれ、俺は少しの可能性があるならやってみせる……!
これ以上、リュカを俺の犠牲にしちゃいけねぇんだ!
守るって決めたんだ!絶対守るって!
今度こそ、絶対そうしねぇとダメなんだ!
リュカ!何も心配しなくていいからな!
今度こそ、俺が必ずリュカ守る……!
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