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第4章
内緒のこと
しおりを挟む最近、エリアスはダンジョンって所を探す仕事をしてるんだって。
それは、魔物が出現しなくなったって事が原因で、魔物を討伐することを生業とする冒険者達の仕事が無くなっちゃうからなんだって。
まぁ、その魔物を大人しくさせてるのは私なんだけど……
でも、なるべくなら魔物の驚異に怯えない生活を維持させたい。武器を持たない人達の安全を確保したい。だから私は魔物の気配があればその場まで飛んでいく。人々を不安にさせたくないからだ。
ダンジョンなら魔物を倒したい人が行けば良いんだし、入口には結界が張ってあるから容易に魔物は出てこないしで、今冒険者達は挙ってダンジョンに行くんだそうだ。
今日はリオの誕生日で、私も去年と同じように一緒に祝ってもらった。やっぱり誕生日は楽しくて、料理も美味しかったし、皆でするゲームも楽しかった。こうやって何かを祝ったりするのって、凄く楽しい。だってこういうことは、やっぱり人間じゃないとしない事なんだから。
楽しかった時間が過ぎて、エリアスと二人で家に帰る。帰ってからはいつものように、今日あった事をお互いに報告し合う。っ言っても、自分が楽しかったことや、教えて貰って覚えたことなんかを楽しく喋っているだけで、報告しているって感じじゃないんだけどね。勿論、エリアスもちゃんと今日あったことを話してくれる。
エリアスは、私が子供だから知らなくて良いなんて事は言わなくて、聞けば詳しく何でも教えてくれる。だから、今の情勢なんかも大体分かっているし、何処の国が今どういう感じか、とか、どの国とどういう関係か、とか、色んな国を行き来するエリアスだから分かる情報なんかを教えて貰ってもいる。
もちろん、国家機密になっているような事は言わないし、そこはちゃんと線引きしている。と、思う。
今日もそんな感じで話をしながら、朝蒔いた野菜の種が成長してたので収穫して、それから一緒にお風呂に入って、一緒にベッドに入って眠りにつく。
朝、いつものように目覚めて、エリアスと一緒に朝食を作る。昨日、エリアスが言ったように、ナスビンって野菜を風魔法で切ってみた。そうしたら不揃いだったけど、ちゃんと切ることができた。「お!すげぇな!」ってエリアスは誉めてくれて、頭を撫で撫でしてくれる。
それからエリアスは切ったナスビンを炒めてくれた。
で、昨日宣言したとおり、今日は私が卵を焼く事にした。
「卵は火加減が難しいんだぞ?」ってエリアスに言われたから、あまり強火にしないようにして卵を割り入れる。目玉焼きを作ろうと思ったのに、黄身が全部崩れちゃって、仕方なく全部をグルグルってかき混ぜると、黄身と白身があまり混ざりあっていないスクランブルエッグになった。
こんなつもりじゃなかったのに……って思いながら、お皿に乗せる。エリアスは私を見て微笑みながら、ワイバーンの肉を焼いていた。
「ひっくり返すか?」って聞くので、「うん!」って答えて、ターナーを肉の下に入れて、サッとひっくり返す。
上手く出来た!って思ったんだけど、ひっくり返した拍子に油がハネて私のおでこに飛んできた!
「あちっ!」って言ったら、「大丈夫か?!」って凄く心配された。こんな事くらいなんでもないのに、エリアスはすぐに心配する。
「大丈夫だよ!」って笑ったけど、額に触れて、すぐに回復させてくる。
「大丈夫なのに……」って言ったら、「女の子の顔に傷が残ったらどうすんだ?!」って怒られた。本当に心配性だ。
そんな感じで朝食を二人で作って食べて、今日もエリアスを見送ってから片付けをして、畑に種蒔きをして、それから魔物の気配を探る。
……遠く……で……気配を感じる……
どこだろう?はっきり見えてこない。遠いからかな?もっと近づかないとダメなのかな?
方角は……シアレパス国の方、かな?
空間移動で、シアレパス国の首都ワルナバスにやって来た。ここは前にエリアスと来たことがあったから来れた。
人気のない場所を探して路地に入る。そこでもう一度魔物の気配を探ってみる。
見える……村が襲われてる……!早く行かないと!
すぐにそこまで空間移動で飛んでいく。
そこは小さな村で、まさに今魔物達が村を襲っているところだった。
大きく息を吸って、威圧を放つように村全体を覆っていくと、暴れていた魔物達がピタリと動きを止めた。それから何事も無かったように、ゾロゾロと大人しく村から出て行った。
私の横を通りすぎる魔物達は、皆下を向いて、震えるようにして去っていく。その様子を、村人達は何が起こったのか分からない、といった感じで呆然としながら見続けていた。
自分に注目が集まっているのを知って、すぐにその場から立ち去ろうとしたけれど、至るところにいる怪我人が目に入ってしまって、そうなったらすぐに立ち去る事なんかできなくなってしまった。
血だらけになって倒れている人の元へ行って回復魔法を施すと、凄くビックリした顔をされる。ここには回復魔法を使える人はいなかったのかな……?
「な、なんで傷が治ったの?!何をしたの?!」
「え?魔法で治癒させただけだよ?」
「そんな事が出来るの?!」
「うん。あ、怪我人がいたら連れてきて?皆治してあげるよ。」
「本当に?!」
私に話し掛けてきた女の子が嬉しそうにして走り出す。私とその子の会話を聞いていた人達も、走って行って怪我人を連れて来る。
何人もの怪我人が私の元へ集められて、一人一人回復魔法を施していく。すると、今にも生き絶えそうだった人も、手足を食べられた人も、皆が元通りに元気になっていく。中には亡くなってしまっている人もいたけれど、回復魔法を使うふうにしてコッソリ蘇生させていく。その様子を見た村人達は驚いて、皆が私に感謝の言葉を投げ掛けてくる。
皆の治療が終わったみたいだったので、すぐに村を出ようとしたところで、また呼び止められる。
「ねぇ!あなた!この子もお願いできないかしら?!」
「え?あ、はい……」
母親と思われる人が私よりも小さな子供を抱きかかえてやって来た。
けれど、その子を見て私は驚いてしまった。
なぜなら、その子は所々皮膚が黒く固くなっていて、それは魔物に襲われたとかじゃなくて、何かの病気みたいだったからだ。けれど、こんな病気は見たことも聞いたこともない。
私はその子に回復魔法を施してみる。
けれど、その子の症状は良くならなかった。何度も試すように魔法を放つけれど、何の変化も見られない。なんだろう?これは……?
この症状がいつからなのかと母親に聞くと、一週間位まえから熱が出て、少しずつ体に黒い部分が広がってきた、と涙ながらに言っていた。
回復魔法では治せなかったのを謝ると、母親は首を横に振ってから、頭を下げて、ガックリと肩を落として去って行った。
何だったんだろう?今の……何の病気なんだろう?
考えるけれど分からない。初めて見た症状だった。あとで帝城で調べてみようかな。
あ!そうだ、早く行かないとリオとミーシャが心配する!そうなるとエリアスに連絡が行っちゃう!
気にはなるけれど、どうにも出来ないし、とにかく早く帝城に行かなくちゃ!
私を引き留めようとする村人達に急ぐから、と言って、すぐに帝城へ飛んでいく。もちろん村から出て見られないようにして、だ。
「リュカ、遅かったね!どうしたのかと思って、エリアスさんに連絡しようとしていたところだったよ!」
「あ、うん、ごめんね!あの、部屋の掃除とかしてたら遅くなっちゃって!」
「なら良いんだけどさ、心配しちゃったよ。」
「うん、ごめん!」
良かった!間一髪だった!
こんなことをエリアスが知ったらきっと怒る!絶対怒る!凄く怒る!メチャクチャ怒る!
だから知られないようにしないと!
けど、さっきの病気はなんだったんだろう?
あとで図書室に行って調べてみよう。
応援ありがとうございます!
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