慟哭の時

レクフル

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第三章

マリーの暴走

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マリーの家に着くと、すぐにマリーが飛び出してきた。

それから私に抱きついてきた。

こんなに抱きつかれるのは、幼い頃に母に抱き締められた時以外はないな。

ナディアと抱き合った時も、軽くハグをするって感じだったし。


しかし、人の温もりとは良いもんだな。

人が抱き合う事に理由等いらないのだろうが……


その人の香りを感じとれる。


柔らかさに触れられる。


温かさが伝わってくる。


安心する。


……良いことしか思い浮かばない。


大切な人と寄り添うと言うのは、心に大きな影響があるんだろうな…


そんな事を考えていると、マリーが顔を上げて、潤んだ瞳で私を見つめてきた。

それからそっと目を閉じた。



「えっ!?」

戸惑っていると、

「マリー‼️」

叫びながらセルジが家から飛び出してきた。

「何やってんだ!離れろ!」

「嫌よ!セルジ!邪魔しないで!」

「マリー、取り敢えず家に入ろうか…」

「あ、そうですね、アシュレイ様。アシュレイ様と抱き合ってたら、つい我を失ってしまいました。」

「アシュレイさん、どうぞお上がり下さい。」

マリーの母親も出てきて、中に入るように促した。



それからマリーの家で、テーブルでお茶とお菓子をいただく。

「本当にマリーを助けて頂いて、ありがとうございます!」

マリーの父親と母親は頭をテーブルに付けてお礼を言ってきた。

「いえ、大したことはしていませんよ。マリーとの旅は楽しかったですし。」

「そうなんですね!アシュレイ様!」

「あ、うん……」

彼女の押しの強さに、ちょっと後込み気味になる。

イライラしながら、セルジが私を睨んでいる。

「お父さん、お母さん、私、決めました!」

いきなり私の腕に抱きつくようにして、

「私、アシュレイ様と旅に出ます!」




「「「「「ええーーっっっ!!!」」」」」




マリー以外が全員驚いた!

「いや、それはっ!」

「ダメだ!ダメだ!マリー!」

「どういう事ですか?!アシュレイさん?!」

「アッシュと旅をするのは俺だけだぞ!」

「詳しく話を聞かせてもらえませんか?!」

「いや、ちょっと皆さん、落ち着いて下さいっ!」

「これが落ち着いていられるかっ!」

「そうだ!ちゃんと説明しろっ!」



もう、誰が何を言っているのか分からない!



「私、アシュレイ様と結婚したいです!」

「マリー‼️」

「もうそこまで行ってるのか?!」

「おまえ!マリーに何て事を‼️」

「待てよ!アッシュは何もしてないぞ!」

「娘を傷物にしたんですか?!」

「いえ!私はなにも……っ!」

「おまえ、それは許さないぞ!!」


「静かにしなさーーーーーいっっっっ!!」



マリーの母親がその場を制した。



一瞬で皆がピタッと止まり、取っ組み合いになろうかとしていた者も、静かに席に着いた。


落ち着いた口調で、母親が私に聞く。


「本当にマリーと旅をされるつもりですか?」

「いえ、私は人を探している身です。旅は一人で続けるつもりです。」

「俺も一緒だけどな!」

そう言うレクスに、うんうん、と頷いて答える。

「でも、娘は貴方と結婚したいと…」

「そうだぞ!マリーに、おまえ、あ、あんな事やこんな事、し、したんだろっ?!」

「何を言うの、セルジっ!恥ずかしいっ!」

「アッシュ、あんな事やこんな事って、どんな事だ?」

「えっ、と、それはっ……!」

「大事に育てた娘がっ!」

「いえ、なにもしていません!」

「嘘をつくな!」

「私はアシュレイ様になら何をされても大丈夫です!」

「マリー、ちょっと黙っていようか?!」

「はい。アシュレイ様。」



はぁ……



困った……



まさかこんな事になるなんて……





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