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第四章
闇夜の明星
しおりを挟む「なぁアンタ。『闇夜の明星』って組織、知ってるか?」
「いや、知らないな。」
「まぁ、裏の組織だからな。裏ってぐらいだから思い付く悪い事は大体やってるよ。そいつら、なかなか尻尾を出さなかったんだけどな、この前やっと嗅ぎ付けたんだ。まぁ、失敗したけどな。」
「それは……私が邪魔をしたからか?」
「まぁ、そうだな。最近あちこちの村や街で若い女、子供が行方不明になる事件が相次いでよ。それにどうやら『闇夜の明星』って組織が絡んでるのが分かったんだよ。あん時は、本当は俺が行く予定じゃ無かったんだけどな。一緒に行ってた奴らは、連れ去られた人達の男や親さ。まぁ、それでも冒険者や傭兵とかをやってる奴らが集まったから、それなりに戦力になったんだけどな。ギルドが、相手は裏組織だから危ねぇって言って、俺に依頼が回ってきたって事だったのさ。」
「そうだったんだな……」
「まぁ、あの場面だけ見りゃあ、商人が盗賊に襲われてるって思うよなぁ。でも俺も最初はアンタを奴等の仲間と思ったぜ?こんなに強い奴がいるとは聞いてなかったから面食らったけどな。」
「そう…か。でも、何故私が仲間じゃないと分かった?」
「俺以外の奴ら、気絶させただけだっただろ?『闇夜の明星』だったらそんな事しねぇしな。それに、奴らがノコノコこんな場所まで来ねぇだろうしな。」
「そうか…それが本当なら、悪いことをした。」
「悪いって思ってんならさ、アンタ、俺と組まねぇか?」
「え?!組む?!何を?!」
「その、『闇夜の明星』を撲滅するんだよ。俺とアンタならそれが出来そうだからな。」
「そんな簡単にいく話でもないだろう?」
「まぁ、な。俺だけじゃ無理だったし、俺以外の他の冒険者の奴らの力を借りても勝算はなかったけどな。」
「なぜそんなに私を買っている?」
「あのなぁー。俺はこれでもAランク冒険者なの!本当はSランクにも届く実力を持ってんだぜ?でもそうなりゃ貴族御抱えの冒険者になっちまうからよぉ。俺は自由を求めて、渋々Aランクで留まってんだよ。そんな俺が、アンタから逃げたんだぜ?そりゃあ屈辱だったけどよ。アンタの力に惚れたってのも事実なんだよ。」
「急にそう言われても、すぐに答えは出せない。まだエリアスの事を完全には信用していないしな。」
「信用かぁ。どうすりゃ信用して貰えっかなぁー。」
「…一先ず、仲直りの握手でもしようか?」
私は右手を差し出した。
「あぁ?握手ぅ?…まぁ良いけどよ。」
それにエリアスも答えた。
エリアスとガッチリ握手をする。
…見えない……
エリアスの過去が見えない…!
ビックリした表情をしていると
「ん?どうしたんだよ?」
不思議そうな顔でエリアスが私を見てくる。
「あ、いや、何でもない。」
それからすぐに手を離した。
「どうやって俺の事を信用させて良いかは分かんねぇけどさぁ。そこにいる奴らにでも聞いて貰ってかまわねぇし。あぁ、朝と夕方頃はここにいる事が殆どだから。まぁ、俺の居所を知りたけりゃぁ誰かに聞けば分かると思うぜ?」
「分かった……」
そう言って席を立つ。
「じゃあな、ボウズ。」
エリアスはレクスに手を振った。
レクスは何も言わずに私の後を追ってきた。
「アッシュ、どうなんだろう?アイツ本当に盗賊じゃなかったのかな?」
「それはまだ分からないが……エリアスと握手をしても、彼の過去が見えなかった。もしかしたら、彼は銀髪の血が入っているのかも知れない。」
「そうなのか?!」
「あぁ。エリアスは黒髪だ。と言うことは、親が銀髪の可能性がある。そう思うと、エリアスの能力にも納得がいく。」
「アイツ、強かったからな。でも、アイツが悪い奴じゃなくても、俺はアイツが許せない。だって、アッシュを殺そうとしたんだぞ!」
「それは私も彼にした事だ。ああ言う時は仕方がなかったとは思う。でも…」
「そのせいでディルクはあんな事になったんだ!俺はアイツが嫌いだ!」
「ディルクがそうなったのは……私のせいだ。」
思わず首飾りの石を握りしめる。
「アッシュ!そんな事ないぞ!アッシュのせいじゃない!」
「レクス…」
石を握りしめても、まだ何の反応もない。
ディルクのそばにいれない自分に苛立つ。
不安だけが私を襲う。
でも今は……
自分の出来ることをする。
そうするしかない。
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