慟哭の時

レクフル

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第六章

白の石

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翌朝、宿屋の一階にある食堂で、エリアスと朝食を摂った。
エリアスは少し二日酔い気味だったので、軽く回復魔法をかけておいた。
そしていつもの様に、エリアスは私の隣に座ってきた。

「これでアシュレイも晴れてCランク冒険者だな!」

「ランクが上がっても、今までと何も変わらないよ。依頼を受ける訳でもないし。」

「なんだ、アシュレイ、知らなかったのか?Cランクになったら、個人的に依頼を頼まれる事も増えるが、国からの依頼を指名される事もあるんだぜ?」

「そうなのか?」

「悪い、言っときゃよかったな……まぁ、Cランクじゃあ滅多に無いことだから、そんなに気にしなくても言いと思うけどな。」

「じゃあ、Aランクだと結構依頼を指名されたりするんじゃないのか?」

「まぁ、そうだな。俺がここにいた時は、ほぼそんな仕事だったからな。」

「じゃあ、今は……」

「旅に出る時に、アルベルトに止められたのがそれだ。俺の仕事が殆ど国がらみだったから、ギルドは国に大きな顔が出来てたんだよ。ったく、俺に頼り過ぎだっつぅんだよ……」

「エリアスなら、難なく依頼をこなせていたんだろうな。」

「ったりめぇだ!俺が依頼を失敗したのは、アシュレイに出会った時だけだぜ?」

「それ……は……悪かった……」

「その事については……俺も悪かったと思ってる。アシュレイの肩に傷を残したから……」

「あの時は仕方がなかった。お互いもう気にしないでいよう?……そうか……でも、ギルドにしたら、私は疫病神だな……」

「関係ねぇよ。ここにはBランクの奴らもいっぱいいる。他の街より冒険者には恵まれてると思うぜ?」

「この国には、Sランクの冒険者はいないんだろうか?」

「Sランクはいねぇな。国は俺に、Sランクに上げろとよく言われたけどな。アルベルトは上げるなって言ってたけど。」

「それは……」

「そうだ、Sランクだと国の冒険者になっちまう。まぁ、金は破格に貰えるらしいけど、それには興味なかったな。ギルド経由にならないとギルドに儲けが出ないから、アルベルトはランクを上げるのに反対してたけど。俺は好きにしてたから、国からの依頼もたまに断ってたしな。」

「そうなんだな……」

「もしアシュレイに指名で依頼が来ても、受けたくなかったら断りゃ良い。まぁ、殆どの冒険者は絶対断らねぇけどな。」

「それはなぜ?」

「依頼金が高額だからだ。そうなりたくて、冒険者になるヤツが殆どなんだぜ?」

「そうなのか……私、冒険者のこと、分かってなかったな……」

「ランクアップを提案しちまったけど、しねぇ方が良かったか?」

「ううん、それは構わない。決めたのは私だし。これで、エリアスも馬鹿にされなくなる……」

「俺の事を気にしてたのか?ったく、んな事どうでもよかったのによ……」

「でもここは……この場所は、エリアスの大切な場所だから……」

「アシュレイ……」


エリアスが私の頭をワシャワシャしてから


「ありがとな。」


と嬉しそうに言う。

王都に戻って来てから、エリアスは何だか落ち着いて来ている様だ。
王都に来て良かった。


「あ、それからアシュレイ、そう言えば白の石、まだ短剣に嵌めてねぇんだろ?後で嵌めるか?」

「え…?あ、うん……」

「どうした?」

「……多分……」

「多分?」

「私に白の石は嵌められないと思う……」

「え?なんでだ?」

「石を触った時、何となく分かった……」

「そうなのか?でも、一回試してみろよ。もしかしたら嵌められるかも知んねぇぜ?」

「……うん。分かった。」


食事が終わってから、私の部屋で、短剣に白の石を嵌めてみる事にした。

エリアスもそばにいて、その様子を見守っていた。

短剣と白の石を取り出し、短剣の窪みに石を当て嵌めてみる。

しかし、思った通り、少しうっすらと輝きはするものの、石は短剣には嵌まらなかった。


「やっぱり……ダメだった……」


私がエリアスの方に振り返って微笑みながら言うと、エリアスが私を引き寄せた。
それからずっと、私の頭をワシャワシャし続けた。


「エリアス……髪が……メチャクチャになるから……いや、なってるから……」


そう言うと、エリアスは私を抱き寄せた。


「……気にしてくれてたのか……?石を全部嵌められたら……誰にでも触れられる様になれるかも知れないって……」

「俺には……いっぱい触って良いからな!」

「それは……何だか違う気がする……」

「何でだよ!」


エリアスを見ると、目にちょっと涙を浮かべていたので、それを見てなんだか安心して、笑ってしまった。


「何で笑ってんだよ!」

「フフ……なんか大丈夫だ。エリアスがいてくれたから。」


そう言うと、また頭をワシャワシャする。

それから頭を自分の胸に寄せて、私の背中をポンポンした。


「エリアス……ありがとう……大丈夫だから……ありがとう……」


私より、エリアスが気にしている様で、何だか少し申し訳なく思ってしまった。

でも、エリアスがそうしてくれたから、私は思ったより落ち込まなかったんだ……




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