「ギャルゲーの親友ポジに憧れた俺が、なぜかモテてしまう話。」

はっけよいのこっ太郎

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有栖桃花編

28話「ナイショの話」

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新川優希しんかわゆうきと、有栖桃花ありすももか白雪雫しらゆきしずくと会ってなぜ彼女が
小さくなってしまったのかの原因を探る事となった。

「なあ、桃花それは本当なのか?」

「言ったでしょ、彼女がなぜ小さくなったか自分で知ってるって。」

「そうよ、私は戻りたかったの。過去にね、だってそうすれば昔みたいに優君が可愛いねって言ってくれると思ったんだもん。
でも、私だけ小さくなって、過去に戻れた訳じゃない。」

そう、桃花は昔に戻りたかったのだ。
ずっと昔にその気持ちが有栖桃花を過去に戻してしまったのだ。

「どうせ優君は覚えてないだろうけど...」

そう言って彼女は小学生の頃の話を始めた。

.

.

.

これは小学三年生の頃、新川優希と有栖桃花の初めての出会いである。

「今日からみんなが3年3組のみんなだから仲良くするんだぞ。」

当時の彼女はかなりの人見知りだったらしい。

「ゆりちゃんもさちもクラス離れちゃった...」

「お前、友達いないのか?」

「え?」

「俺、ゆうき。よろしくな!!」

そう言って当時の俺は話をかけたらしい。

「私、桃花。」

「そうか、よろしくな、桃花!!」

中一の頃と同じ、席が隣だったとか本当それぐらいの出来事だった。
だが、当時の俺は覚えてなかった。と言うよりは忘れるようにしていたのかもしれない。

「桃花は好きな事とかあある?」

「絵を描くことかな?」

「そうなんだ、確かにお前、絵上手いもんな!!」

「なんで知ってるの?」

「去年、廊下にずっと飾ってあったでしょ?
俺それ見てすげーと思ってたんだ!」

「そんなに凄くないよ?」

「そうかな?俺昔から絵描くの下手くそだからすげーって思ってたよ!」

「そうなんだ、ありがとう。」

こうして他愛もない会話をしながらも距離を縮めていった。

別の日。

「じゃあ、今日の図工の時間は自分の好きな物を描きましょう。」

「はーい」

「じゃあ好きな人とペアになってねー」

「どうしよう、他の友達は組んじゃってるし,,,」

「おーい桃花!」

「ゆうきくん!」

「一緒に描こうぜ~!」

「今日の服可愛いから描いてやるよ!」

「え?」

「だから、桃花のこと描くって言ってるの!」

そうこれが文化祭の時スピーチで桃花が言ってたことの話らしい。
こうやって俺たちは仲良くやっていた。
のだが、そんな楽しい時は割と一瞬だった。

時は立ち小3のバレンタイン当日。

「ゆうき君これ、あげる。」

そう、これは有栖桃花の初恋である。

「サンキューな。」

「これ、私の本命だから。」

「え?」

こうして自分の気持ちだけを伝えた桃花は次の日から学校に来ることは無かった。
彼女は親の仕事の都合で転校してしまったのである。
当時の俺は、多分自分の気持ちを伝えられないままお別れした事が辛くて記憶から消していたのかもしれない。

.

.

.

「それで私は中1の頃に帰ってきたの、ここにね
それでまた優君とクラスが一緒になって席が隣になって嬉しかったけど、私は言い逃げしたから最初は凄く怖かったなぁ。
でも久々に会った優君は別人のようだった。
卑屈っていうか暗くてさ、私のことも覚えてる感じじゃ無かったしね。」

「確かにあの後から人に期待するのはやめちゃったのかもな、その頃ぐらいはつばさ栞菜かんなぐらいとしか話さなくなったし。」

「でも、原因は分かったけどあなたはどう戻れるか分かってる訳?」

「雫さんと優君の時はどうやって解決したんですか?」

「そ、それはだなぁ...」

「キスよ。」

「え?」

できれば隠したかったが、雫はそういうのは普通に言っちゃうタイプだもんな。

「そもそも私の力は新川君とキスすることである日時に戻れるっていうトリガーがあったの。」

「優君、この人とキスを,,,」

「そうなんだよね、で、その過去で今の時間軸に戻りたいって気持ちで俺から雫にキスしたら奇跡的に戻れたんだよね。」

今思っても不思議な力であった。
そして俺の戻りたいって気持ちが彼女のリセットを終わらせたのだ。

「だから、トリガーを見つけられない限り戻れないのよ。」

「わ、私流石に優君とキスはちょっと...」

「キスで全部解決する訳じゃないんだよ...」

正直俺は、この問題の解決の糸口はもう分かっていた。
でもそれは彼女にはきつい選択をさせることになるのだ。
でも、桃花の為を思えば仕方がないのかもしれない。

「ねぇ、新川君はなんとなく気が付いてるんでしょ?」

「俺ですか?」

「あなたは前を向くって決めたのでしょ、だったら言ってあげるのも彼女の為よ。」

「優君は分かってるの?」

「うん。」

そうそれは

「”桃花の恋を終わらせることだ”」

その時の桃花の顔は思い出したくないぐらい悲しい顔をしていた。

「それってさ」

「俺が今の桃花だけじゃなくて、昔も含めて完全に終わらせてあげなきゃいけないって事だ。」

「私もそれしかないと思うわ、有栖さんにはとっても辛いとお思うけど、しかたがないのよ。」

「い、嫌だよよんなの。終わりなんて嫌、だって私は、私はまだ...」

「ちょっと場所を変えようか、桃花。」

「あの雫、本当にありがとう。ちゃんとしたお礼はまた今度する。」

「分かったわ。ちゃんと終わらせてあげるのよ。」

「はい、行こう桃花。」

こうして俺たちは場所を移した。

.

.

.

俺が選んだ場所は昔通ってた小学校である。
答えが分かってからは桃花の元気がない。

「懐かしいな、ここ
おれさ、桃花の話聞いて忘れようとしてた俺の初恋を思い出せたよ。」

「え?」

「俺さ当時本当に馬鹿だったし、桃花の転校の理由知らなくてさ、俺てっきりバレンタインの貰い方悪かったかなとか、
俺の知らない所で桃花がいじめられてたのかなとか思っててさ、突然居なくなるから俺もさ、悲しかったし、ふざけんなって思ってた。
でも本当はここ来るちょっと前に思い出したんだ、実は昨日桃花がリビングで寝ちゃったからさ、自分の部屋まで連れてったんだ。
あの時は入ってないって嘘ついてごめん、で、そこに昔俺が描いた絵が飾ってあったね、懐かしいな~図工の時間で好きなものの絵を描くって授業でさ、
俺その時に直感で桃花を描きたいって思ったんだよね、恥ずかしくて言えなかったけど好きだったよ。あの時も好きだった。
中1で2度目の恋もまさか同じ人だったとはね、恥ずかしいな~」

「うん。」

「今思えば運命だったのかなって思うよ。大袈裟だけど好きで好きで仕方なかったしね、でも、でも、ごめん
今はそれ以上に好きな人ができたんだ。後悔してる事もいっぱいあるよ。
あの時バレンタイン貰ってすぐ俺も好きって言えば良かったなとか、普通に告白して自作の曲なんか贈らなきゃ良かったなとか、あの時、
黒板に書かれた文字なんか気にしないでちゃんと話聞いとけば良かったなとかさ~。」

「うん...」

「有栖桃花さん。あのずっと好きでした、でもごめんなさい。
俺は今好きな人が居てその人の事本当に大切に思ってるので気持ちに応えられません。」

「分かってた。あの、ありがとう優君
私も後悔してる事沢山あるけどでも分かってた。
でも小学生の私への気持ちもちゃんと言ってくれて本当にありがとう。
大好きだぞバカやろー」

二人共多分あり得ないぐらい泣いていたと思う。
お互いの気持ちが強くても磁石のように反発してしまう事もあるし、お互いの想いが知らぬ間にズレいって
好きでも上手くいかない事もあるんだと俺は知った。

「私の恋を終わらせてくれてありがとう...」

そうして桃花は眠ってしまった。
とりあえずこれが本当に正解かは分からないので桃花の家でもう一泊する事にした。

.

.

.

「優君起きて。」

「ん...」

寝ぼけていたがそこにはハッキリと高校2年生に戻った有栖桃花の姿が会ったので。

「良かった。」

「全部含めてありがとね、さ、私も戻った事だし早くこの家から出でけ~」

「はいはい。」

「ありがとね、さよなら。」

寝ぼけながらも油断していた俺のほっぺたにキスをしてきた。

「え?」

「良かったわね、超有名読モからのお別れのキスよ。
もうこれ以上一緒に居たらまだ好きな気持ちが爆発しそうだから、消えてくれる?」

「分かったよ、じゃあまたな。」

「優君が後悔するぐらい凄い女になるから私、だからもう会えないかもしれないけど、バイバイ優君。」

バタン

なんとなくもう会えないんだなって直感で分かった。
昔、運命の人は2人いて、1人目は愛することとその人を失う辛さを知って、2人目は永遠の愛を知るという
なんて名言を聞いたことがある。
きっと俺にとって桃花はそんな1人目の運命の人だったのかも知れないな。
そんな事を考えながらまた、いつもの日常に戻っていくのであった。

ー有栖桃花編閉幕ー

次回”七夕編”へ続く。
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