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小山田栞菜編
48話「THE FIRST QUESTION AWARD」
しおりを挟むなんだかんだで遊園地を満喫してた俺らはすっかり夕方になっていた。
「日が暮れるのも早くなったね~」
「そうだな‥」
「翼君!あれ乗りたい!」
「観覧車か、いいね。優希と栞菜は?」
「俺は別に良いよ?」
「私も乗りたい!」
「じゃ最後にこれ乗るか!」
観覧車なんて何年ぶりだろうか
昔もこの4人で乗ったな‥
「あ、あのさ、私‥その‥」
「どうした舞?」
「私!翼君と2人で乗りたいな~的な?」
「せっかく来たんだし4人で‥」
「いいよ!優希は栞菜と2人で乗りな?」
「だってよ、栞菜。」
「うん!いいよ!」
さっきのよそよそしさはまさか舞の奴、翼に告白する気なんじゃ‥
.
.
.
「ワンダーランド観覧車最後までお楽しみください!」
ついに乗り出してしまった。
舞の奴大丈夫だろうな‥
「あ、あのさ優ちゃん」
「どした?」
「私さここ最近さなんか色々あった気がするんだよね~」
「そうだな‥」
「でさ、やっぱり優ちゃんって凄いな~って思って」
「またその話か?」
「いやいや、だってさみんなの事助けたりしちゃってさ!」
「逆だと思う。」
「え?」
「俺はみんなに助けられてるんだよ。ずっと、最近すごくそれを実感してさ。」
「でも、私はすごく助けられたな。」
「そうか?」
「昔からずっと優ちゃん見てるけど困ってる人ほっとけなくて自分の事を犠牲にしてもさ頑張って辛くなって‥それでもさ前向いててかっこいいなって~」
「そんなに褒めてもなにも‥」
「だからさ、私そんな優ちゃんの事本気で好き。」
「ありがとう。」
「違うの!」
「え?」
「幼馴染とかじゃなくて翼とかとも違う、本当に好きなの。だからさ、他の人のために頑張れる優ちゃんも凄いけどもっと幸せになってほしい。」
「そ、そっか‥」
「だから好き。私と‥」
「ごめん。その気持ちには応えられない。」
いや、分かっていた。
昔から俺に対する感じと翼に対する感じは違う事が分かってはいた。
なんならこいつ俺のこと好きなんじゃね的な事も分かってはいた。
でも、この関係を壊したくなくて、この3人でいる空間が好きで気にしない様にしていたんだと思う。
「な、な、なんちゃって~嘘だよ~元気ないから元気付けようと‥」
「ごめん‥栞菜‥」
目の前で泣き出してしまった栞菜にかける声も無かった。
そうして長くも短い観覧車は終わった。
「ご乗車ありがとうございました~!
足元に気をつけてください!」
「降りるか‥」
「ごめん、無理だ‥私最低‥」
「おい!栞菜!」
涙が止まる事もなく俺から逃げるように栞菜は走り去っていった。
「待ってくれ‥」
俺に追いかける権利なんてあるのだろうか‥
戸惑う自分に嫌気がさした。
「兄貴お待たせ!って栞菜ちゃんは?」
「‥」
「おい!優希!栞菜は?」
「俺がその‥告白されて、その‥」
「兄貴ってアホだけどさ、もっと気持ちわかる奴だったよね?」
「え?」
「今の兄貴最低だよ。」
「‥」
「おい優希、お前さ、そんな奴じゃ無かっただろ?」
そんな奴ってどんな奴だよ。
俺だって今、色々悩んでるんだよ
そんな時に色々言われたって
「自分の苛立ちを栞菜にぶつけるようなやつになるなよ‥」
あ、そっか
それだ、俺がずっと思っていた感情
ただ振ったんじゃない。
無碍にしてしまったんだ。
俺はずっと分かっていた気持ちを話さないでいたんだ。
「ごめん‥」
「謝る相手は俺らじゃないだろ?」
「そ、そうだよな‥」
「あのな、栞菜は夏休みの宿題”わざと”終わらせなかったんだぞ毎年‥」
「そ、そうだったのか‥分かった。ありがとう、俺ちょっと探してくる」
「ごめんね舞ちゃん」
「何がですか?」
「優希の事も栞菜のことも、でも多分、いや絶対2人なら大丈夫だから‥」
「はい!」
.
.
.
どこ行ったんだ栞菜のやつ
よく考えろ‥俺らがよく来てたここ、昔の事とかも考えて‥
あ、あそこか!今日行ってないところで尚且つ栞菜が好きだったところ‥
.
.
.
「やっぱりここだったか‥栞菜!」
「優ちゃん‥」
「ごめん!俺さ、本当は栞菜がもしかしたら俺の事好きなんじゃないかってずっと気が付いてた、でも夏休みの宿題は怠けてるだけとか思ってたし、俺より良いやつが現れたら消えちゃうとかそういう事勝手に考えて‥」
「もう、いいよ。」
「え?」
「私ね、ずっと好きだった。多分幼稚園の頃からずっと、でもその気持ちとは裏腹にこの幼馴染って関係がずっと続いて、翼と優ちゃんと私で何もない日々を続けるのも悪くないとも思ってたの。
でもさ、優ちゃんも中2の頃色々あったでしょ、その時に永遠なんてないんだなって思っちゃったよね。
それでもまた優ちゃんは私達のところに戻ってきたしさ~
でもさ、また少しずつ大人になってく優ちゃんに置いてかれる気がしたら私さ‥」
「ごめん。でも栞菜は大切だよずっと、でもごめんその気持ちには応えられないよ。」
「うん。知ってた‥でも!嘘だから本当に付き合いたいとかそういうの一切ないよ!ただ一緒に居て欲しかっただけ!それにちょっとは元気出たでしょ?早くしないと朝比奈先輩もっともっとイケメンに取られちゃうぞ~」
「あのな‥でも、サンキューな!」
優しい栞菜にそれ以上の言葉はかけられなかった。
誰かを好きになるって事は逆に誰かを幸せにできなく誰かを貶めるのかもしれない。
それでも俺は朝比奈風夏の事が大好きだ。
だからもうこの俺のこの人生にそろそろ決着をつける時が来たのかもしれない。
「優ちゃん、帰ろっか!翼も舞ちゃんも待ってるし!」
「そうだな‥」
.
.
.
「優希!俺、栞菜のこと家まで送るから。」
「分かった、ありがとう、また明日!」
「おう!」
「ばいばい!優ちゃん、舞ちゃん!」
「うん!また明日!」
「あのさ、」
「どうしたの?翼?」
「俺達は変わらないよ。」
「何だよ~いきなり~」
「大丈夫だよ、もう優希も舞ちゃんもいない」
「ウッウッ‥ウワァァア!!!私、優ちゃんに振られちゃったよ、分かってても辛いよ~」
「そうだよな、よく頑張ったな。
今日は好きなだけ泣いて良いぞ」
「ありがど~‥」
「大丈夫だよ、俺らは絶対変わらないからさ。」
「うん‥でもやっぱり!優ちゃんの事大好きだよ‥」
誰かの幸せ、誰かの不幸、誰かの想い、全てが凍ってくような寒空と共にクリスマスが近づいていた。
小山田栞菜編終幕
ー続くー
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