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番外編 もしも、人間だったなら
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深夜、雨音だけが支配するペントハウス。
あたしは、お兄様の膝の上に頭を乗せて、窓の外に広がる無数の「家々の光」を眺めていた。
「ねえ、お兄様。……もしも、あたしたちが普通に生まれてたら、今頃何をしてたかな?」
あたしの問いに、お兄様が髪を梳く手が、ほんの一瞬だけ止まった。
「そうだね。……きっと、君は普通の女子高生になって、流行りの服を着て、誰かに恋をしたりしていたんだろう。僕は僕で、動く足で大学へ通い、君が門限を破らないかハラハラしながら待っている。……そんな退屈で、幸福な毎日だったかもしれない」
「恋? あはは、お兄様、それはあり得ないよ。あたしはお兄様以外、誰もいらないんだもん」
あたしはお兄様の首に腕を回し、その冷たい肌に自分の熱を押し付けた。
普通の暮らし。スーパーで安売りを買い、学校の愚痴を言い合い、やがて老いて死んでいく。……想像するだけで、反吐が出るほどつまらない。
「お兄様、あたし、今の方がずっと幸せだよ。……だって、あたしたちは『特別』なんだもん。誰にも触れられず、誰にも邪魔されず、世界を自分たちの色に塗り替えていける」
「……ああ。そうだね、世璃。僕も、あの頃の無力な自分に戻りたいとは思わない。……君とこうして、一千万人の命の上に君臨している今が、何よりも愛おしい」
お兄様が、あたしの唇に静かな、けれど情念の籠った口づけを落とした。
もし人間だったなら、こんな風に深く、魂の根元まで愛し合うことはできなかったはずだ。
あたしたちは、怪物になることで、ようやく本物の「愛」を手に入れたのだから。
「大好きだよ、お兄様。……明日も、誰を食べるか一緒に決めようね」
「ああ。……おやすみ、世璃。僕の愛しい、半身」
あたしは、お兄様の膝の上に頭を乗せて、窓の外に広がる無数の「家々の光」を眺めていた。
「ねえ、お兄様。……もしも、あたしたちが普通に生まれてたら、今頃何をしてたかな?」
あたしの問いに、お兄様が髪を梳く手が、ほんの一瞬だけ止まった。
「そうだね。……きっと、君は普通の女子高生になって、流行りの服を着て、誰かに恋をしたりしていたんだろう。僕は僕で、動く足で大学へ通い、君が門限を破らないかハラハラしながら待っている。……そんな退屈で、幸福な毎日だったかもしれない」
「恋? あはは、お兄様、それはあり得ないよ。あたしはお兄様以外、誰もいらないんだもん」
あたしはお兄様の首に腕を回し、その冷たい肌に自分の熱を押し付けた。
普通の暮らし。スーパーで安売りを買い、学校の愚痴を言い合い、やがて老いて死んでいく。……想像するだけで、反吐が出るほどつまらない。
「お兄様、あたし、今の方がずっと幸せだよ。……だって、あたしたちは『特別』なんだもん。誰にも触れられず、誰にも邪魔されず、世界を自分たちの色に塗り替えていける」
「……ああ。そうだね、世璃。僕も、あの頃の無力な自分に戻りたいとは思わない。……君とこうして、一千万人の命の上に君臨している今が、何よりも愛おしい」
お兄様が、あたしの唇に静かな、けれど情念の籠った口づけを落とした。
もし人間だったなら、こんな風に深く、魂の根元まで愛し合うことはできなかったはずだ。
あたしたちは、怪物になることで、ようやく本物の「愛」を手に入れたのだから。
「大好きだよ、お兄様。……明日も、誰を食べるか一緒に決めようね」
「ああ。……おやすみ、世璃。僕の愛しい、半身」
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