婚約破棄された銀の猫は、チートスキルと激甘伴侶をゲットしました

カシナシ

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本編

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「さっきジョスリン殿下に、踊っている最中、言われたんだ」

 がっつりと肩を掴まれた。ディオンは唇を舐め、湿らせ、少し震えていた。

「兄さんと、義兄上を離縁させなければ、兄さんの過去のことを詳細に暴露する、と。この国だけでなく、他国の王族たちにも」
「他国……!?」

「もしそうなれば、今後兄さんを見る視線は厳しいものになってしまう。……流石に、他国はズルいよな。国民ならまだしも、権力が及ばない」
「それ、いつまでに決めろ、とか言われた?」

「今日中、だとか。明日には各国に知らせる準備が出来ているとか言ってたんだ。どうしよう、どうしよう……!」

 動揺しているディオンは、僕をきつく抱きしめてきた。ちょっ、こんなに、大きかったっけ?すごく力も強くなって、お兄ちゃんびっくり。
 あやすようにぽんぽんと背中を叩くのだけど、びくともしない。ちょっと、早く離れてくれないと、これは誤解されてしまいそうだ。


「ディオン、ちょっと、落ち着いて。ね?」
「落ち着ける訳ないよ!だって、兄さん、ああ、ごめん。ここじゃだめだね。近くの空いている部屋に行こう」

「いいけど……」


 ディオンも、気付いたのだろう。これではあまり外聞が良くない。僕たちもまた、控え室へ入りゆっくり対策を立てようとしたの、だが。


「……っ!?」
「兄さん、はぁ、兄さん……っ!」
「ディオン!?」

 息を荒げたディオンが、僕に倒れ込んできたのだ。咄嗟に受け止めたが、重たくて押し倒される。なんてことだ、僕だって基礎鍛錬は毎日こなしているのに、弟に負けるなんて!


「どうしたの、ディオン!?何か、変なもの飲んだ!?あ、もしかして」
「シャンパンを少しだ、け……、の、はず、なのに」

「ああもう……っ!それ、グロリアスも飲んだやつだよ。……ディオン?」
「ごめ、ん、兄さん、ちょっと、こうさせて……」

 ディオンの手が、僕をかき抱いて離さない。ピキリと硬直する。
 背中は床の絨毯にくっついており、そのうちにディオンの手は不埒な動きで、僕の胸元へ降りてきた。ちゅ、ちゅ、と首元に吸い付かれて、ちくちくと痛む。

「え、うそ、でしょ、ディオン!ぼ、僕は兄さんだよ!?目を覚まして!」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 ああ、だめだ、僕を見ているようで見ていないような目。あの薬、人間には結構、強かったのかもしれない。

 ディオンはあっという間に僕の衣服をするすると解き、胸元が、露わになってしまった。どこで覚えたの、その技は。
 弟の意外なテクニックに驚いている場合ではない。僕を兄だと認識していないらしいディオンは、僕の乳首へと顔を寄せ、ぱくりと咥えてしまったのだ。

「でぃ、ディオン!後で絶対後悔するから、やめて!お願い、うっ、離して!」
「わ、美味しい……っ」
「うわ……っ」

 弟を相手に手荒なことも出来ないし、かと言ってこれは非常によろしくない状況だ。そう、僕もグロリアスの元へ行かなくちゃいけないのに、この状態の弟を放置するのも危険。

 ディオンは花に吸い寄せられる蜜蜂のように、僕の胸の飾りをくちゅくちゅと舐って、快感を引き出そうとしている。その頭を引き剥がそうとしているのに力が強くて、全然離れない。

 僕の尻を掴んでいる手がそろりそろりと移動し、衣服の中へと辿り着いてしまいそうで――僕は、諦めて、スキルを発動させた。

「っ!」
「ごめん、ディオン!」

 ちょうど部屋に置かれていた花瓶。生けられていた花を急成長、改変させ、触手のようなものを伸ばしてディオンを捕らえさせる。

 ぐるぐる巻きになったディオンは、ようやく、僕から離れてくれた。未だ顔を真っ赤にさせて、息苦しそうだ。

「はぁ、はぁ……もう、どうしよ」
「シオン、戻った。ここか……」
「あ」

 僕が衣服を整える間もなく、グロリアスが入ってきた……!
 そして目を見開き、胸元をはだけさせた僕と、巨大な花の触手に絡め取られたディオンを見て、ビキリと青筋が立つ。

「クソガキが……っ!」
「す、ストップ!グロリアス!弟だよ!薬で、ほら、グロリアスのと同じシャンパンで……」
「だからと言って、許せない!」

 竜化した腕でディオンを殴ろうとしたので、慌てて抱きついて止める。それではディオンが死んでしまう!

「シオン。ここを、ヤツに?触られたのか?」
「え、えっと、その。ディオンを、どうすれば離せるかって考えているうちに……ごめん!すごく早くて!グロリアス、なんでもするから許して……!」
「ほう。それは興味深いね。お仕置きは後でだ」



 グロリアスはぱちんとミニ白蛇を召喚すると、意識を朦朧とさせているディオンの体に忍ばせる。

「天国を見せてやれ。枯れるほど抜けば、そのうち気がつくだろう。すぐに医師団も呼んできてやる。鉢合わせても恨むなよ」

 了解、とばかりにペロッと赤い舌をだしたミニ蛇さん。何をするのかは、弟の名誉のために想像しないことにした。それからグロリアスは弟の耳元へ何かを囁くと、僕を包み込むようにして抱きしめた。

「さて、俺ももう限界だ。家へ帰る」
「え、今日は……」

 お城に泊まる予定、とは続けられなかった。
 熱く硬い体を、押し付けられている。

「きついお仕置きをしなくてはならないからね。お家の部屋の方が安心でしょう?」

 うっそりと笑ったグロリアスに、僕は喉まで出かかった悲鳴を飲み込んだ。
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