31 / 72
本編
31
しおりを挟む
「シュリエル様!」
学園に着くと、何だかザワザワしているような嫌な感じがした。
何だろう、と思ってクライヴ様やジタリヤ様と顔を見合わせていると、クラスメイトであるコリン・ベルガー伯爵令息が駆け寄ってきたのだ。
柔らかな金髪の目立つ、優男風の彼が、珍しく焦っているような顔をしてる。
それから、他のクラスメイトの面々も、心配そうに僕を見ているのに気付く。
「コリン殿?シュリエルに何か用か」
「……っ、知らないのですか?クライヴ殿下。朝、食堂を使われない殿下は知らないでしょう!こんな紙が、ベタベタ貼られていたのです!」
「……なんだこれは……」
コリン様が机に叩きつけるようにした紙には。
『シュリエル・エバンスは目の前の病人も見捨てる』
『シュリエル・エバンスは婚約者を寝取られた負け犬』
『シュリエル・エバンスは金の亡者』
『シュリエル・エバンスは人の痛みを知らない』
僕への誹謗中傷。それも、下手なイラストまで。僕が悪そうに笑っていたり、裸で人を踏みつけているようなものまで。
なんて、程度の低いことをするのだろう……。この学園はほとんどが貴族なのに、こんなことをする人がいるだなんて。
しかも憎らしいことに、この絵の中の僕らしき男は轟々と陰毛を生やしている。実にワイルド。
半分でいいから分けて欲しい……と思って見ていると、クライヴ様がそれをぐしゃっと握りつぶした。
「シュリエル、ここは俺に任せて欲しい。こんな事をした犯人は、絶対に、……潰してやる」
その手に握られた紙がぎゅうっと圧縮され、何の魔術を使ったのか、塵となってパラパラと溢れていく。
クライヴ様の漏れ出す威圧に、クラスメイトが苦しそうだ。そっと腕に触れさせてもらう。とんとん、と撫でると、幾分か圧が軽くなった。
「はぁ、はぁ、シュリエル様、私たちは一切、こんなものは信じていないので!私たちはシュリエル様を信じています!」
「ありがとうございます、コリン様。……皆様も。クライヴ様も。」
信じてくれると言うのが、嬉しい。
今の僕は一人ではないと実感し、こんな状況であるのに笑顔になってしまった。
それにしても。
あの紙に書かれていたことは、僕にも身に覚えがある。もちろん事実という意味ではなく、ルルーガレスで受けていた冷たい視線を思い出す。
面と向かって言われた訳ではないけれど、あの学園の生徒達の認識では、そうだったのだろうと推測できた。
決して目の前の病人を見捨てたことはない。目の前の病人の家族には、教会を通せと言った。
お金の亡者には心当たりがない、だって教会から与えられた正当な報酬を受け取っているだけ。
痛みについても、すべての怪我や病気にかかったことは無いけれど、人並みには知っている筈だ。
婚約者を寝取られたことは事実だし、負け犬といえばそうかもしれない。ただし、僕にとって相手があまりに強すぎた。
人付き合いですら慣れていない僕の前に出てきたプリシラ嬢は、いわば、新米冒険者の前にいきなり迷宮主のような、強大な敵が出てきてしまったようなもの。それも、孤立無縁な状態で。
もう、仕方のないことだったと、納得している。
当時と違い、ここには僕には信じてくれる友人たちがいるから、ダメージとしてはあまり感じていない。
信じてくれる人の力とは、思っていた以上に絶大だ。
「ということは、ルルーガレスの学園関係者に情報を得たのか。自ずと犯人は絞られるな……」
「あ……」
「ですね。へばりついて見張るよう手配します」
クライヴ様もジタリヤ様も、僕が何か言う前に恐ろしいスピードで指示を出していた。もう、犯人は、皆の頭に思い浮かぶ人物だと確信しておられるようだ。
僕、当事者なのに何もしていない……。
何かすると言ったって、僕では証拠を集めるのにスイちゃんたちを派遣するくらいしか出来ないのだけど。
おずおずとそう申し出ると、クライヴ様が微笑んでくれる。
「それは助かる。彼らは透明でサイズも変えられるし、追跡に適任だ」
「それなら是非、使って下さい。ねっ、スイちゃんたち、頑張ってね」
りょーかい!と言うように、触手を伸ばして敬礼するスイちゃんたち。それぞれに録音機――僕の作った小型の魔道具だ――を持たせて、クライヴ様の指示どおりの場所に散らせていく。
たった数日間で、証拠はざくざくと集まってきた。
その間にも、量産したらしい僕の評判を落とす紙は貼られていていた。
スイちゃん達は、貼っている犯人を特定。紙は皆の目に晒される前に回収してくれた。
………
程なくして、クライヴ様は茶会を開いた。
ジタリヤ様には壁側に、侍従のように控えている。
フォンタナ公爵令嬢とクライヴ様、そして少し離れたところに僕が座る、それだけの茶会だ。
恐ろしく冷たい視線のクライヴ様に、フォンタナ公爵令嬢はおろおろと視線を彷徨わせては、手元を弄る。
そんな彼女に、まずは僕が口火を切る。
「フォンタナ公爵令嬢。貴方は僕へは色々と言ってきましたが……恐らく、クライヴ殿下へ伝えるべき言葉が足りていません。本当は僕なんかより、殿下とお話ししたいのでしょう?」
「……っ!」
キッ、と睨む赤い瞳は力強い。
それなのに、クライヴ様と話す時には一気に弱々しいものになる。
「……クライヴ様。その、シュリエル様が何か貴方に吹き込んだかもしれませんが、わたしは、彼の言うようなことはしていませんから。ただ、貴方様の名誉を傷付けられるのが耐えられず……」
「他に、言うことが、ある、だろう」
クライヴ様の声、視線は、肺を圧迫するほどの威圧が込められていた。それを真正面から受けたフォンタナ公爵令嬢は、ぶるりと震え上がり、俯く。
ビビる僕に構わず、クライヴ様は怒りを乗せて、一言一句に力を込める。
「俺の名誉は、俺が守る。お前は一体、何様のつもりだ?」
「ヒッ……!わ、わ、私は、クライヴ様をお支えしたくて……」
「戯言を。子も作らず、同居もしない結婚生活?ああ、そんな婚約申し込みが来ていたが……棄却する時、言った筈だ。二度とこのようなふざけた真似をするなと」
「違います……っ!私、本当にクライヴ様のことを愛しているんです!生涯、貴方様だけを!」
「俺はお前に魅力を感じたことは一度もない。シュリエルを貶めようとこそこそ画策し、他の者を駒のように使い捨て、お前自身は何の向上心もない。何の魅力が?諦めるんだな。…………ジタリヤ。」
「フォンタナ公爵令嬢。我が国に賓客として招いている、シュリエル様へ悪意のある中傷をしましたね。使用人に生徒の服を着せてあの紙を貼らせていました。無関係の者を無許可で学園にいれさせ、犯罪を指示。また、ルルーガレスの学園の情報を買った履歴も。絵師は流れのものに書かせて……」
「なっ、知らないわ!私じゃない!私が指示をしたって証拠なんて無いでしょ!?」
「ありますよ。音声が録音されています」
カチ。ジタリヤ様が『再生』を押すと、小さな魔石から声が聞こえてくる。
『ふふっ、これで、あの水の巫子の評判は落ちるわ。あんた、見つからないように気をつけなさい。パッと見じゃわからないだろうけど』
『は、はい……、しかし、こんなことをして、私は大丈夫でしょうか?もし破門なんてことになったら……』
『大丈夫。フォンタナ公爵家が責任を持ってあんたを保護してあげる。さ、行きなさい。忠実な働きを期待してるわ。』
音声はこれだけではない。たくさんありすぎて、綺麗に纏めるのに収納箱を作ったくらい、証拠はたっぷりとあった。
「こ、こんなの知らない……!私は、私は、」
「俺は全て聞いたぞ。聞きたいのなら結構だが、続きは拘留所で聞け。日が暮れる」
「そんな……っ!」
「幸い、貴女の思惑に踊らされる者は居ませんでした。そこはシュリエル様の人徳とクライヴ殿下の威圧のおかげですね。拘留の後、罰として一定期間、修道院で修行してきて貰いましょう。ちゃんと学園へは戻ってこられるので安心してください。殿下とは違う学年にはなるでしょうが」
「全く、軽すぎる。これで済んだのはシュリエルのお陰だ、感謝するんだな」
クライヴ様はそこでようやく、威圧を解く。フォンタナ公爵令嬢はかひゅ、と大きく息を吸い込み、崩れ落ちていた。
涙や鼻水で顔はぐしゃぐしゃ。
しかし、最後までクライヴ様はその冷たい仮面を脱ぐことは無かった。
フォンタナ公爵令嬢は拘留され、事情を全て吐かされた。彼女の動機を要約すると、
『これまで殿下は人を寄せ付けなかったから良かった。突然現れたライバルを蹴落とす為、心を折ろうとした』
彼女がなんの躊躇いもなく、人を蔑むのに慣れていた理由は、僕が来る前から、気に食わない令嬢に対してちくちくと嫌味を言ったり、物を隠したりしてきたらしい。それの延長だったという訳だ。
皆、フォンタナ公爵令嬢より立場が弱かったため、黙って飽きられるのを待つしか無かったよう。
彼女はクラリッサ嬢と同じ、若い令嬢や平民の女性たちが礼儀を習うと有名な修道院へ行くこととなった。そのため、学園は一年留年。
そこで学ぶのは経歴的には箔がつくものではあるが、そこへ至る経緯が知れ渡ってしまっているため、結婚相手には難儀すると思われる。
僕はルルーガレスで、修道院に視察に(というか遊びに)行くこともあったため、とても身近な感覚だ。優しくも厳しいシスター達ならば、クラリッサ嬢も、フォンタナ公爵令嬢も心置きなく頼れると思う。
僕だったらプリシラ嬢に慰められるなど絶対に嫌だ。だから、彼女に声をかけることは無かった。立場は全然違うとは言えど、彼女の中では似たような括りに入っていると、理解はしていた。
学園に着くと、何だかザワザワしているような嫌な感じがした。
何だろう、と思ってクライヴ様やジタリヤ様と顔を見合わせていると、クラスメイトであるコリン・ベルガー伯爵令息が駆け寄ってきたのだ。
柔らかな金髪の目立つ、優男風の彼が、珍しく焦っているような顔をしてる。
それから、他のクラスメイトの面々も、心配そうに僕を見ているのに気付く。
「コリン殿?シュリエルに何か用か」
「……っ、知らないのですか?クライヴ殿下。朝、食堂を使われない殿下は知らないでしょう!こんな紙が、ベタベタ貼られていたのです!」
「……なんだこれは……」
コリン様が机に叩きつけるようにした紙には。
『シュリエル・エバンスは目の前の病人も見捨てる』
『シュリエル・エバンスは婚約者を寝取られた負け犬』
『シュリエル・エバンスは金の亡者』
『シュリエル・エバンスは人の痛みを知らない』
僕への誹謗中傷。それも、下手なイラストまで。僕が悪そうに笑っていたり、裸で人を踏みつけているようなものまで。
なんて、程度の低いことをするのだろう……。この学園はほとんどが貴族なのに、こんなことをする人がいるだなんて。
しかも憎らしいことに、この絵の中の僕らしき男は轟々と陰毛を生やしている。実にワイルド。
半分でいいから分けて欲しい……と思って見ていると、クライヴ様がそれをぐしゃっと握りつぶした。
「シュリエル、ここは俺に任せて欲しい。こんな事をした犯人は、絶対に、……潰してやる」
その手に握られた紙がぎゅうっと圧縮され、何の魔術を使ったのか、塵となってパラパラと溢れていく。
クライヴ様の漏れ出す威圧に、クラスメイトが苦しそうだ。そっと腕に触れさせてもらう。とんとん、と撫でると、幾分か圧が軽くなった。
「はぁ、はぁ、シュリエル様、私たちは一切、こんなものは信じていないので!私たちはシュリエル様を信じています!」
「ありがとうございます、コリン様。……皆様も。クライヴ様も。」
信じてくれると言うのが、嬉しい。
今の僕は一人ではないと実感し、こんな状況であるのに笑顔になってしまった。
それにしても。
あの紙に書かれていたことは、僕にも身に覚えがある。もちろん事実という意味ではなく、ルルーガレスで受けていた冷たい視線を思い出す。
面と向かって言われた訳ではないけれど、あの学園の生徒達の認識では、そうだったのだろうと推測できた。
決して目の前の病人を見捨てたことはない。目の前の病人の家族には、教会を通せと言った。
お金の亡者には心当たりがない、だって教会から与えられた正当な報酬を受け取っているだけ。
痛みについても、すべての怪我や病気にかかったことは無いけれど、人並みには知っている筈だ。
婚約者を寝取られたことは事実だし、負け犬といえばそうかもしれない。ただし、僕にとって相手があまりに強すぎた。
人付き合いですら慣れていない僕の前に出てきたプリシラ嬢は、いわば、新米冒険者の前にいきなり迷宮主のような、強大な敵が出てきてしまったようなもの。それも、孤立無縁な状態で。
もう、仕方のないことだったと、納得している。
当時と違い、ここには僕には信じてくれる友人たちがいるから、ダメージとしてはあまり感じていない。
信じてくれる人の力とは、思っていた以上に絶大だ。
「ということは、ルルーガレスの学園関係者に情報を得たのか。自ずと犯人は絞られるな……」
「あ……」
「ですね。へばりついて見張るよう手配します」
クライヴ様もジタリヤ様も、僕が何か言う前に恐ろしいスピードで指示を出していた。もう、犯人は、皆の頭に思い浮かぶ人物だと確信しておられるようだ。
僕、当事者なのに何もしていない……。
何かすると言ったって、僕では証拠を集めるのにスイちゃんたちを派遣するくらいしか出来ないのだけど。
おずおずとそう申し出ると、クライヴ様が微笑んでくれる。
「それは助かる。彼らは透明でサイズも変えられるし、追跡に適任だ」
「それなら是非、使って下さい。ねっ、スイちゃんたち、頑張ってね」
りょーかい!と言うように、触手を伸ばして敬礼するスイちゃんたち。それぞれに録音機――僕の作った小型の魔道具だ――を持たせて、クライヴ様の指示どおりの場所に散らせていく。
たった数日間で、証拠はざくざくと集まってきた。
その間にも、量産したらしい僕の評判を落とす紙は貼られていていた。
スイちゃん達は、貼っている犯人を特定。紙は皆の目に晒される前に回収してくれた。
………
程なくして、クライヴ様は茶会を開いた。
ジタリヤ様には壁側に、侍従のように控えている。
フォンタナ公爵令嬢とクライヴ様、そして少し離れたところに僕が座る、それだけの茶会だ。
恐ろしく冷たい視線のクライヴ様に、フォンタナ公爵令嬢はおろおろと視線を彷徨わせては、手元を弄る。
そんな彼女に、まずは僕が口火を切る。
「フォンタナ公爵令嬢。貴方は僕へは色々と言ってきましたが……恐らく、クライヴ殿下へ伝えるべき言葉が足りていません。本当は僕なんかより、殿下とお話ししたいのでしょう?」
「……っ!」
キッ、と睨む赤い瞳は力強い。
それなのに、クライヴ様と話す時には一気に弱々しいものになる。
「……クライヴ様。その、シュリエル様が何か貴方に吹き込んだかもしれませんが、わたしは、彼の言うようなことはしていませんから。ただ、貴方様の名誉を傷付けられるのが耐えられず……」
「他に、言うことが、ある、だろう」
クライヴ様の声、視線は、肺を圧迫するほどの威圧が込められていた。それを真正面から受けたフォンタナ公爵令嬢は、ぶるりと震え上がり、俯く。
ビビる僕に構わず、クライヴ様は怒りを乗せて、一言一句に力を込める。
「俺の名誉は、俺が守る。お前は一体、何様のつもりだ?」
「ヒッ……!わ、わ、私は、クライヴ様をお支えしたくて……」
「戯言を。子も作らず、同居もしない結婚生活?ああ、そんな婚約申し込みが来ていたが……棄却する時、言った筈だ。二度とこのようなふざけた真似をするなと」
「違います……っ!私、本当にクライヴ様のことを愛しているんです!生涯、貴方様だけを!」
「俺はお前に魅力を感じたことは一度もない。シュリエルを貶めようとこそこそ画策し、他の者を駒のように使い捨て、お前自身は何の向上心もない。何の魅力が?諦めるんだな。…………ジタリヤ。」
「フォンタナ公爵令嬢。我が国に賓客として招いている、シュリエル様へ悪意のある中傷をしましたね。使用人に生徒の服を着せてあの紙を貼らせていました。無関係の者を無許可で学園にいれさせ、犯罪を指示。また、ルルーガレスの学園の情報を買った履歴も。絵師は流れのものに書かせて……」
「なっ、知らないわ!私じゃない!私が指示をしたって証拠なんて無いでしょ!?」
「ありますよ。音声が録音されています」
カチ。ジタリヤ様が『再生』を押すと、小さな魔石から声が聞こえてくる。
『ふふっ、これで、あの水の巫子の評判は落ちるわ。あんた、見つからないように気をつけなさい。パッと見じゃわからないだろうけど』
『は、はい……、しかし、こんなことをして、私は大丈夫でしょうか?もし破門なんてことになったら……』
『大丈夫。フォンタナ公爵家が責任を持ってあんたを保護してあげる。さ、行きなさい。忠実な働きを期待してるわ。』
音声はこれだけではない。たくさんありすぎて、綺麗に纏めるのに収納箱を作ったくらい、証拠はたっぷりとあった。
「こ、こんなの知らない……!私は、私は、」
「俺は全て聞いたぞ。聞きたいのなら結構だが、続きは拘留所で聞け。日が暮れる」
「そんな……っ!」
「幸い、貴女の思惑に踊らされる者は居ませんでした。そこはシュリエル様の人徳とクライヴ殿下の威圧のおかげですね。拘留の後、罰として一定期間、修道院で修行してきて貰いましょう。ちゃんと学園へは戻ってこられるので安心してください。殿下とは違う学年にはなるでしょうが」
「全く、軽すぎる。これで済んだのはシュリエルのお陰だ、感謝するんだな」
クライヴ様はそこでようやく、威圧を解く。フォンタナ公爵令嬢はかひゅ、と大きく息を吸い込み、崩れ落ちていた。
涙や鼻水で顔はぐしゃぐしゃ。
しかし、最後までクライヴ様はその冷たい仮面を脱ぐことは無かった。
フォンタナ公爵令嬢は拘留され、事情を全て吐かされた。彼女の動機を要約すると、
『これまで殿下は人を寄せ付けなかったから良かった。突然現れたライバルを蹴落とす為、心を折ろうとした』
彼女がなんの躊躇いもなく、人を蔑むのに慣れていた理由は、僕が来る前から、気に食わない令嬢に対してちくちくと嫌味を言ったり、物を隠したりしてきたらしい。それの延長だったという訳だ。
皆、フォンタナ公爵令嬢より立場が弱かったため、黙って飽きられるのを待つしか無かったよう。
彼女はクラリッサ嬢と同じ、若い令嬢や平民の女性たちが礼儀を習うと有名な修道院へ行くこととなった。そのため、学園は一年留年。
そこで学ぶのは経歴的には箔がつくものではあるが、そこへ至る経緯が知れ渡ってしまっているため、結婚相手には難儀すると思われる。
僕はルルーガレスで、修道院に視察に(というか遊びに)行くこともあったため、とても身近な感覚だ。優しくも厳しいシスター達ならば、クラリッサ嬢も、フォンタナ公爵令嬢も心置きなく頼れると思う。
僕だったらプリシラ嬢に慰められるなど絶対に嫌だ。だから、彼女に声をかけることは無かった。立場は全然違うとは言えど、彼女の中では似たような括りに入っていると、理解はしていた。
653
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
優秀な婚約者が去った後の世界
月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。
パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。
このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる