悪役令嬢は、もう推しません

カシナシ

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本編

33 聖女ユリアナside

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 レオナルドが、ダリアローズを側妃にしたいと言う。理由は、ユリアナの勉強があまりにも進まないから。


 ダリアローズを便利に使うのはいい。無駄に頭がいいのだから、使ってやればいい。それでユリアナが勉強しなくて良くなるのなら、賛成してやってもいい。


 だが少し躊躇したのは、ダリアローズは側妃の立場を喜んでしまうかもしれないから。レオナルドに愛されているとは、万が一にも勘違いしてはいけない。愛されているのはユリアナただ一人で、ダリアローズはただの事務方であることを、きちんと教えてやらなくてはならない。



 ダリアローズを側妃に迎えるため、新婚旅行はダリアローズのいるパールブレス侯爵領で行うことになった。どうやらそこで、トリスタンに何か罪を犯させ、離縁させる作戦のよう。詳細は教えてもらっていないが、準備は万端らしい。


(さすがレオさま!ふふっ、そこで、あたしとのイチャイチャを目の前で見せつければいいのね。それに、ダリアローズがあたしをいい気分になんて出来ないんだから、その手柄もぐちゃぐちゃにするの。そして――――)


 本命の、トリスタン。ダリアローズなんかと白い結婚をし、これから有責側として離縁される予定の、可哀想なトリスタン。すぐにでも、ユリアナというご褒美をあげたい。


(待っててね……、あたしの、愛人最推し……!)





 ***








 パールブレス侯爵家についたその晩のこと。

 ユリアナは、レオナルドからその話を受けて驚いたと共に、最高に気が合う、と思った。まさか、同じことを考えていただなんて。


「トリスタンを呼んでくる。ユリアナはトリスタンも好きだろう?」

「えっ?え、ええ、そうだけど……一番は、レオさまよ?」


 そう言っておかなければ、次期王妃にはなれない。それは分かっていたため、ユリアナは本心にもないことを言った。けれど顔はもう、期待でテカテカと照りついていた。


「ああ、もちろん。だが、トリスタンもいい男だ。連れてくるから、ユリアナの情けをかけてやったらいい。あれは一度も経験が無いはずだ」

「そうなの?レオ様は……」

「ああ、私も後で行くよ。ユリアナ」


(きゃあっ!うそうそ、本当に夢みたいっ!まさかの二人の美男子に、隅から隅まで愛されちゃうのっ!?あんなことやこんなこと…………あ~んっ、どうしよう、あたし、どうなっちゃうのぉ……っ!)


 もじもじクネクネと体を捩らせるユリアナ。それが自身の不貞になるとは、全く考えもせず、大人向け小説のような場面を想像しながら準備を始める。

 もちろんその妄想は妄想のまま、現実となることは無い。











 ***






 どうして、ユリアナの完璧な身体を前にして、トリスタンは逃げたのか。

 夜中一日中考えて、出した結論は。


(ダリアローズが……いけないのよ。あの女は闇魔法を多少使える設定のはず。そうよ!トリスタンと契約結婚をする時、なにか呪いでもかけたんだわ!妻以外の女とは関係してはいけない、とか!ゴボウに見える、とか!そうに違いない)

 だから、取り戻さなくては。トリスタンを、魔女から解放しなくては。



 そう思って、大衆の前で演説した。大衆によって、ダリアローズが追放されるか、殺されれば良い。後はグッと心を掴むだけ、と、聖女として聖歌を歌おうとしたのに。

 喉に宿っていた暖かなものが、急に暴れ出した。もがき苦しみ、もう嫌だ、と思った瞬間、それは飛び出て、あろうことかダリアローズの元へ飛び去ってしまったのだ。

(悪役令嬢なのに……!!ありえない!!)


「返して!あたしのカナリアよ!」


『無理だピ!君の心は欲深過ぎて臭いっピよ!もう我慢出来ないピ!お姉さんに永久就職するピなの!』


 その高い澄んだ声は、はっきりと聞こえた。






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