虚構の愛は、蕾のオメガに届かない

カシナシ

文字の大きさ
37 / 95
第二章 二回目の学園生活

24 フィル・シュー side

しおりを挟む

 ぼくはオメガ男娼の子供だった。産み親が病気で死ぬと、父親だと言う男爵がぼくを引き取りに来た。本当に親かどうかは知らない。似てないもの。

 12を過ぎた頃だ。発情期はまだだというのに、男爵は僕を嬲った。
 元々母に生き写しのぼくをヤるために引き取ったらしい。

 笑っちゃうくらいド下手くそだった。ぼく、娼館でもお触りはされていたのに痛いくらい。

 でも、すぐに産み親を思い出す。生まれた時からソノ場面は見て育ってきた。ぼくの親は、他の男娼より数段上手で、誇りだった。そのイメージはばっちりだから、それとなく誘導して、大事に抱かせるようにすればいい。

 ぼくの顔は最高に可愛いのと、身体も最上級のものを遺伝されていたおかげで、男爵はぼくを溺愛するようになった。その結果、居候ではなく、養子にしてくれた。

 ぼくには天賦の才能があるようだ。使わないなんて勿体無い。


 発情期がくると、花紋まで現れた。これは極上のオメガを意味していて、アルファによって取り合いになる程価値が高まる。
 その頃すでにセックスをたしなんでいた僕は、たまたまその時抱かれていた男で開花した。呆気なく。まったく、この時ばかりは金をせしめたかった。勿体無い。

 男爵は僕の体に溺れてはいるものの、最終的には良いところの坊ちゃんに嫁いで欲しいらしい。それはぼくの願いと合致する。

 ぼくら花紋付きオメガには、たくさんのアルファとの見合いを斡旋される。けれど国から紹介されたのは、商家、男爵や子爵家などの、身分に合ったアルファばかり。嘘でしょ、ぼくのこの容姿と、花紋もあるのに、もっと上のアルファじゃないとさぁ。


 やっぱり高位貴族の優良アルファと結婚して、一生遊んで暮らしたいよねぇ!











 平民から練習して、男爵令息、子爵令息を落としていく。

 良心の呵責?ある訳ない。恋人を取られたって?恋人はモノじゃない、心があるんだよ、おじょーさん。つまり、心がキミから離れただけってこと。ぼくのせいじゃない。

 ぐうの音も出ない正論に、女の子やオメガたちは顔を真っ赤にして去っていく。あははっ!おかしい!自分の魅力不足に、今頃気付くなんてね!


 伯爵令息、侯爵令息も落とす。彼らは非常に太っ腹で、少しリクエストに応じただけで、なんでも買ってくれた。ぼくの美肌を保つためのクリームも、高級香油も、宝石だってなんだって、ぼくのもの。


 婚約者を誘惑するな?えっと、誘惑してません、ぼくの溢れた魅力に、釣られただけ。
 婚約者がいるならちゃんと手綱を引いておくように!ぼく、か弱いからさぁ、婚約者に嫌がらせされたら病気になっちゃう。

 そう言って次に会った時には、婚約が解消されていたのには笑った。だってぼくの本命じゃないのに、ご苦労だね?

 綺麗な顔の婚約者が、ぼくを見て嫉妬に歪ませるんだ。その醜い顔を見るのが、めちゃくちゃ好き。元が綺麗であればある程、腹が捩れるほど笑えた。


 婚約解消には違約金みたいなのを払わなくちゃいけなくて、それは令息が払ってくれる。そしたらちゃんと、ぼくも相手をしてあげる。






 そしてついにぼくは、この国の王子、マルセルク様にも見初められてしまった。マル様に抱かれた時は、うっかり本気で昇天するかと思った……!

 やっぱりめちゃくちゃ格好いいし、身体もイイ。アルファの匂いも最高。ちょっと荒いけど、箱入りだから仕方ないよねぇ。それはいくらでも調教出来るもの。

 番にはなりたくないけど、結婚はしたい。マル様って王太子になるって言うんだから、この国の中で一番上ってことだよね?


 ぼくの本命は、マル様に決めた。そうすると、邪魔なのはその婚約者、リスティア。

『私は清楚です』みたいないけすかない顔をしたオメガだ。オメガのくせに成績も良く、オメガのくせに鍛錬して筋肉も付けて、オメガのくせに誰からも侮られていない。薬師によって花紋持ちだと診断されているオメガで、共通点がある故に余計に気に食わない。

 なぁに、あれ。見ているだけで苛々する。

 マル様を奪ったら、あの顔を真っ赤にして黙って逃げるんだろうか。それって……最高に面白い。スカッとしそうだ。

 運の良いことに、マル様との身体の相性は最高で、大勢に抱かれるぼくを見て興奮もしている。つまり、ぼくはマル様に限定しなくてもいい!趣味嗜好がこんなにぴったり合うなんて、これは運命なんじゃないかな?


 リスティアが一番ダメージを食らうタイミングと言ったら、奴が噛まれた後に違いない。オメガは噛まれたら終わりだ。そのアルファに一生縛り付けられ、人生を棒に振る。
 そんなの愚か過ぎてぼくには出来ないけど、リスティアみたいな世間知らずのオメガなら、マル様に捧げるはずだ。

 その後、愛しのアルファがぼくに夢中だと知ったら……どんな顔をするだろうね?










 そんな矢先。


 避妊はしていたのに何故か妊娠していた。ちょっと計画は狂ったけど、まぁいい。だって直感的に、マル様の子だと分かるもの。流産しない時期に入るのが待ち遠しかった!
 そしてやっと安定期になり、嬉々としてリスティアに言えば……悔し紛れか、祝福してくれると言う。

 信じてはいない。けれど、リスティアが本当にそうしてくれるのならぼくの思い通りだし、そうでなくとも、王族の子を宿すぼくに下手なことは出来ないもの。この腹の子がいるだけで、ぼくは無敵。

 リスティアと婚約は無くなったし、あとはマル様と婚約するだけ。

 ふふっ!リスティアは強がってるけど、平民になるんだって!一方、ぼくは王妃!

 それなのに、リスティアは顔を歪めなかった。それがどうしても気に食わない。……ふん。権力を持ったら、リスティアは散々不細工な男に嬲らせて弱らせてから、殺してもらおっと!




 そう思ってウキウキして、リスティアの澄まし顔を眺めていたのに――――――――


 ……なんで、ぼくは、ここにいるのだろう?


 一見普通の部屋に見えても、窓には格子が嵌っているし、扉は二重扉で、こちら側にノブが付いていない。
 衣食住に不足は無いし、薬師が毎日やってきては『順調です』と言う。

 けれど、誰にも会えない。

 最後に会ったマル様は、人が変わったように恐ろしかった。ぼくをリスティアの前で、見せ物のように、道具のように扱って、ぼくの心は傷ついた。なんなの?ぼくは、あんな風に扱われていい存在じゃない。愛される存在なんだ!

 だからマル様でなくてもいい。誰でもいい。
 三日と開けず誰かと性行為をしていたぼくの体は、疼いていた。
 時折食事を運んでくる人も、世話をしてくれる人も、全員女なんだ。薬師は枯れた爺さん。
 なんで!?


 怒ったぼくは、食事を摂らないようにした。
 すると薬師がやってきて、『意図的な飢餓状態は、王族の子を殺害容疑で処刑になります』と真顔で言う。ぼくは諦めて食べることにした。

 じゃあ、滑って転んで頭を打ったことにしよう!

 そうすれば男二人以上で運ばないといけないよね!?

 気絶したフリをしていたら、侍女がやってきて、また出ていく。
 しめしめ、と思ったら、またいつもの薬師がやってきて、ぼくの耳元で『王族の子殺害……ですか?』と囁くもんだから、飛び起きた。

 ぼく自身より、子供の方がそんなに大事?





 でも、そのうち殿下の側近たちが、夜中に忍び込んでくるようになった。善行を積んでおいてよかった!二人に同時に犯されて、ぼくの身体はすっかり元気になった。

 ちょっとここの狭さにさえ耐えれば、ぼくは、マル様の妻としてお披露目されるはず。最高の成り上がり!
 マル様のことはすっかりイヤになっちゃったけど、元々ぼくはマル様だけじゃ満足出来ないし、それは彼にだって知られていること。

 つまり、肩書きは王妃で、実際はいろんな男と楽しめるってこと!?

 それって最高過ぎる……!


 ふふふ。待っててね、目障りなリスティア。
 必ずぐちゃぐちゃにしてあげる!


しおりを挟む
感想 184

あなたにおすすめの小説

嫌われ魔術師の俺は元夫への恋心を消去する

SKYTRICK
BL
旧題:恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する ☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。

ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」 実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて…… 「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」 信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。 微ざまぁあり。

優秀な婚約者が去った後の世界

月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。 パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。 このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

婚約破棄を望みます

みけねこ
BL
幼い頃出会った彼の『婚約者』には姉上がなるはずだったのに。もう諸々と隠せません。

処理中です...