39 / 95
第二章 二回目の学園生活
26
しおりを挟む
「私たち二人は、……貴方のことを愛しています」
「ティア。心から愛している」
どっ、どっ、……心臓が、痛いほどに打っている。
リスティアの眠気など一瞬で吹き飛んだ。真剣な二人の表情が、どうしようもなく格好良くて、綺麗で。
どちらからも、熱い視線をもらっている事実にくらくらした。薄々、気付いていたが、まさか、こんなに直球でくるとは。
「初めて会った時から貴方を慕ってきました。本に熱中している姿も、チェチェを愛でる姿も、真剣に調合している姿も綺麗で……愛らしい」
「俺も、ティアの努力家なところや、気高さに惹かれた。笑顔の可愛さや、掴みどころの無い謎めいた感じでいて、どこか危ういところ……全てが愛おしい」
「……っ!」
二人に容赦なく褒め称えられている。誰か違う人と間違ってないか確認したい程、自覚はなかった。
とても、とても嬉しい。嬉しいが……どうしたらいいのか分からない。
そう困惑するリスティアへ、二人は畳み掛けるように言い募る。
「困ったことに、どちらも譲れない。私たち以外の者に掻っ攫われるのが不安で、時期尚早に告白してしまったことをお許しください」
「決めるのはもちろん、ティアだ。しかし卒業パーティーは目の前で、その前に誰か決めろというのは酷だろう。それで話し合って、こうなった」
「なる、ほど……?」
「幸いにして、どちらも嫌、と言うわけでは無さそうですよね?先ほどの注文を却下しないあたり」
「それは、うん。勿論、嬉しかったよ。二人に大切に思われていると表すようなものだから。でも……ごめんなさい。僕はまだ、婚約を解消したばかりで……」
「知っています。……貴方が、まだ、殿下を慕っていることは」
「………………えっ?」
リスティアのマルセルクへの気持ちは無くなったはずだ。それよりも、二人から気持ちを貰えて嬉しいと、素直に喜んでいる。
問題は、マルセルクに振り回された自分が、二人のことを信用しきれていないこと。
そんな人間では無いと、知っている。理解している。しかしまた信じて傷つけられるのは、あまりにも辛い。
何も知らないリスティアではないからこそ、臆病になってしまっていた。
「まだ慕っているなんて。……ちが、」
「殿下と会っている時のリスティアは……可愛らしい表情でした。最近は、少しずつ我々にも見せてくれるようになりましたが、やはり、長年相思相愛でやってきたのです。すぐに切り替えは出来ないでしょう」
いつの事なのか。思い当たりがありすぎて、リスティアには分からない。マルセルクはリスティアと仲睦まじい様子を誇示するかのように、人目のある中で会い、距離を詰めてきたから。
切ない表情のノエルに、ひどく胸が痛む。
(僕のせいで、悲しませたくない……)
「それは、殿下の作戦だ。僕を逃すと王太子になれないから……そうさせられた、だけで」
「そうだとしても、相思相愛と評判になるのに納得の睦まじさでした。ですから、それも理解した上で、この想いを伝えておきたかったのです。これからは遠慮なく口説かせて頂きます、ね。もちろんあなたを困らせることはしません」
「どうか、側にいる権利を」
向かいに座っていた二人は、リスティアの両隣にやってくる。そして、意味ありげに微笑んでいるなと思っていると……。
「っ!」
チュッ。ちゅ。
ノエルは右頬に、アルバートは左のこめかみに、口付けを落としてきた……!
「ふぁ……っ」
「ふふ。可愛い。真っ赤ですね。ほら、唇も……」
ノエルにつんつんと唇を突かれる。長い指が、ふにふにと唇の柔らかなところを、悪戯に歩いている。
顔が赤い自覚はあった。こんな、婚約者でもない友人、それも、美人と美形に挟まれているからだ!
アルバートはごくりと唾を飲み込んだ後、ぎこちなくリスティアの耳にキスをしようとしたのか。しかし遠慮がち過ぎて唇は触れず、吐息だけが、ふ、とかかった。
「ひゃあッ……!」
ピクン!
飛び上がってしまったが、後の祭り。リスティアは自分のはしたない声にビックリして、もう顔を上げられない。
その為、二人が咄嗟に腰を引いたのにも気付かなかった。
「も、も、もう、勘弁して……!」
「ふ、ふ。か、可愛すぎます……っ。でも、今はそうですね、やり過ぎました」
「わ、悪い。その……わざとでは」
「アルバート、君もやりますね」
「……すまない」
(僕、早速困らせられてない……?困るというか、嬉しいというか……、心臓が、追いつかない)
二人から愛を告白されたが、返事はまだ要らないと言う。しかしリスティアを口説く気満々な二人に対して、リスティアは混乱の中にいた。
(そりゃあ……嬉しい。嬉しいけれど……)
とても大事な友人。ちょっぴり、ドキドキする親友。好きな人、と言うには、まだ怖い。
その次の日には、マルセルクが花束を持ってやって来た。
それも、朝から。人目など一切気にせず。
「……リスティア。どうか、受け取って欲しい。他意はない」
「マ……、殿下」
マルセルクは少し痩せたことで、より精悍な顔立ちになった。見目はやはり非常に良いが、もうフィルと婚姻している既婚者。お披露目も何もしていない書類上の婚姻でも、噂話に目のない貴族なら誰しもが知っていること。
そんな中、マルセルクから『真実の愛』を示す可愛らしい花束を受け取る勇気は無かった。
悔しいことに、繊細な花びらを付ける可愛い花は、リスティア好み。花に罪は無いとはいえ、受け取るには、あまりに重い。
「卒業式に、アレを着てくれないのか……?新しい衣装を、注文したと……」
「おや、さすが耳が早い。元婚約者が何を着ようと、殿下の許可は必要ありませんよ?」
青筋を立てたノエルが、美麗な笑みで口撃している。ド迫力でマルセルクすら圧倒していた。そんな中、アルバートはすっとマルセルクに近寄り、流れるように花束を受け取った。
何故受け取ったのかとリスティアが首を傾げていると、
「これは殿下から買い取ります。後で代金を払いますので、リスティアの前から立ち退いて下さい」
「この……っ、り……リスティア!どうか後生だ、私とあの衣装を着よう……!」
「………………申し訳ありません」
名前を連呼するマルセルクの前に、アルバートが立ち塞がる。その間に、リスティアはノエルに連れられてその場から立ち去った。幼馴染の鮮やかな連携プレーに、マルセルクはどうすることもできなかった。
アルバートはその後、花束を学園の庭師に寄付した。そうすることで、花瓶に生けられて随所に飾られる。
マルセルクは花束を持ち帰る惨めな思いをしなくて済み、花も皆に鑑賞されて、リスティアもホッとしたのだった。
アルバートはリスティアの目を見て、あの花を気に入ったことに気付き、あの行動をとった。それを聞いて、リスティアは、きゅっと胸を掴まれるような思いをした。
リスティアの好きな花を知っている。それほどに真実リスティアの事が好きであれば、もう構わないで欲しかった。マルセルクは一度目の記憶があるということだから、恐らくあの宝剣で自死したはず。リスティアの血を使ったのなら可能なのだろう。
(何を考えているのだろう……?)
再び結婚などしたらまた、リスティアを失うとは考えられないのだろうか?それとも、リスティアが死んだ後に起こった出来事を、取り消すためにだろうか?
しかしその最期の話は、マルセルクからは聞かされなかった。
自分が死んだ後、何が起こってマルセルクが自死したのか気になる所ではあったが、それはもう、関与すべき事ではなかった。
「ティア。心から愛している」
どっ、どっ、……心臓が、痛いほどに打っている。
リスティアの眠気など一瞬で吹き飛んだ。真剣な二人の表情が、どうしようもなく格好良くて、綺麗で。
どちらからも、熱い視線をもらっている事実にくらくらした。薄々、気付いていたが、まさか、こんなに直球でくるとは。
「初めて会った時から貴方を慕ってきました。本に熱中している姿も、チェチェを愛でる姿も、真剣に調合している姿も綺麗で……愛らしい」
「俺も、ティアの努力家なところや、気高さに惹かれた。笑顔の可愛さや、掴みどころの無い謎めいた感じでいて、どこか危ういところ……全てが愛おしい」
「……っ!」
二人に容赦なく褒め称えられている。誰か違う人と間違ってないか確認したい程、自覚はなかった。
とても、とても嬉しい。嬉しいが……どうしたらいいのか分からない。
そう困惑するリスティアへ、二人は畳み掛けるように言い募る。
「困ったことに、どちらも譲れない。私たち以外の者に掻っ攫われるのが不安で、時期尚早に告白してしまったことをお許しください」
「決めるのはもちろん、ティアだ。しかし卒業パーティーは目の前で、その前に誰か決めろというのは酷だろう。それで話し合って、こうなった」
「なる、ほど……?」
「幸いにして、どちらも嫌、と言うわけでは無さそうですよね?先ほどの注文を却下しないあたり」
「それは、うん。勿論、嬉しかったよ。二人に大切に思われていると表すようなものだから。でも……ごめんなさい。僕はまだ、婚約を解消したばかりで……」
「知っています。……貴方が、まだ、殿下を慕っていることは」
「………………えっ?」
リスティアのマルセルクへの気持ちは無くなったはずだ。それよりも、二人から気持ちを貰えて嬉しいと、素直に喜んでいる。
問題は、マルセルクに振り回された自分が、二人のことを信用しきれていないこと。
そんな人間では無いと、知っている。理解している。しかしまた信じて傷つけられるのは、あまりにも辛い。
何も知らないリスティアではないからこそ、臆病になってしまっていた。
「まだ慕っているなんて。……ちが、」
「殿下と会っている時のリスティアは……可愛らしい表情でした。最近は、少しずつ我々にも見せてくれるようになりましたが、やはり、長年相思相愛でやってきたのです。すぐに切り替えは出来ないでしょう」
いつの事なのか。思い当たりがありすぎて、リスティアには分からない。マルセルクはリスティアと仲睦まじい様子を誇示するかのように、人目のある中で会い、距離を詰めてきたから。
切ない表情のノエルに、ひどく胸が痛む。
(僕のせいで、悲しませたくない……)
「それは、殿下の作戦だ。僕を逃すと王太子になれないから……そうさせられた、だけで」
「そうだとしても、相思相愛と評判になるのに納得の睦まじさでした。ですから、それも理解した上で、この想いを伝えておきたかったのです。これからは遠慮なく口説かせて頂きます、ね。もちろんあなたを困らせることはしません」
「どうか、側にいる権利を」
向かいに座っていた二人は、リスティアの両隣にやってくる。そして、意味ありげに微笑んでいるなと思っていると……。
「っ!」
チュッ。ちゅ。
ノエルは右頬に、アルバートは左のこめかみに、口付けを落としてきた……!
「ふぁ……っ」
「ふふ。可愛い。真っ赤ですね。ほら、唇も……」
ノエルにつんつんと唇を突かれる。長い指が、ふにふにと唇の柔らかなところを、悪戯に歩いている。
顔が赤い自覚はあった。こんな、婚約者でもない友人、それも、美人と美形に挟まれているからだ!
アルバートはごくりと唾を飲み込んだ後、ぎこちなくリスティアの耳にキスをしようとしたのか。しかし遠慮がち過ぎて唇は触れず、吐息だけが、ふ、とかかった。
「ひゃあッ……!」
ピクン!
飛び上がってしまったが、後の祭り。リスティアは自分のはしたない声にビックリして、もう顔を上げられない。
その為、二人が咄嗟に腰を引いたのにも気付かなかった。
「も、も、もう、勘弁して……!」
「ふ、ふ。か、可愛すぎます……っ。でも、今はそうですね、やり過ぎました」
「わ、悪い。その……わざとでは」
「アルバート、君もやりますね」
「……すまない」
(僕、早速困らせられてない……?困るというか、嬉しいというか……、心臓が、追いつかない)
二人から愛を告白されたが、返事はまだ要らないと言う。しかしリスティアを口説く気満々な二人に対して、リスティアは混乱の中にいた。
(そりゃあ……嬉しい。嬉しいけれど……)
とても大事な友人。ちょっぴり、ドキドキする親友。好きな人、と言うには、まだ怖い。
その次の日には、マルセルクが花束を持ってやって来た。
それも、朝から。人目など一切気にせず。
「……リスティア。どうか、受け取って欲しい。他意はない」
「マ……、殿下」
マルセルクは少し痩せたことで、より精悍な顔立ちになった。見目はやはり非常に良いが、もうフィルと婚姻している既婚者。お披露目も何もしていない書類上の婚姻でも、噂話に目のない貴族なら誰しもが知っていること。
そんな中、マルセルクから『真実の愛』を示す可愛らしい花束を受け取る勇気は無かった。
悔しいことに、繊細な花びらを付ける可愛い花は、リスティア好み。花に罪は無いとはいえ、受け取るには、あまりに重い。
「卒業式に、アレを着てくれないのか……?新しい衣装を、注文したと……」
「おや、さすが耳が早い。元婚約者が何を着ようと、殿下の許可は必要ありませんよ?」
青筋を立てたノエルが、美麗な笑みで口撃している。ド迫力でマルセルクすら圧倒していた。そんな中、アルバートはすっとマルセルクに近寄り、流れるように花束を受け取った。
何故受け取ったのかとリスティアが首を傾げていると、
「これは殿下から買い取ります。後で代金を払いますので、リスティアの前から立ち退いて下さい」
「この……っ、り……リスティア!どうか後生だ、私とあの衣装を着よう……!」
「………………申し訳ありません」
名前を連呼するマルセルクの前に、アルバートが立ち塞がる。その間に、リスティアはノエルに連れられてその場から立ち去った。幼馴染の鮮やかな連携プレーに、マルセルクはどうすることもできなかった。
アルバートはその後、花束を学園の庭師に寄付した。そうすることで、花瓶に生けられて随所に飾られる。
マルセルクは花束を持ち帰る惨めな思いをしなくて済み、花も皆に鑑賞されて、リスティアもホッとしたのだった。
アルバートはリスティアの目を見て、あの花を気に入ったことに気付き、あの行動をとった。それを聞いて、リスティアは、きゅっと胸を掴まれるような思いをした。
リスティアの好きな花を知っている。それほどに真実リスティアの事が好きであれば、もう構わないで欲しかった。マルセルクは一度目の記憶があるということだから、恐らくあの宝剣で自死したはず。リスティアの血を使ったのなら可能なのだろう。
(何を考えているのだろう……?)
再び結婚などしたらまた、リスティアを失うとは考えられないのだろうか?それとも、リスティアが死んだ後に起こった出来事を、取り消すためにだろうか?
しかしその最期の話は、マルセルクからは聞かされなかった。
自分が死んだ後、何が起こってマルセルクが自死したのか気になる所ではあったが、それはもう、関与すべき事ではなかった。
588
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
出来損ないと虐げられ追放されたオメガですが、辺境で運命の番である最強竜騎士様にその身も心も溺愛され、聖女以上の力を開花させ幸せになります
水凪しおん
BL
虐げられ、全てを奪われた公爵家のオメガ・リアム。無実の罪で辺境に追放された彼を待っていたのは、絶望ではなく、王国最強と謳われるα「氷血の竜騎士」カイルとの運命の出会いだった。「お前は、俺の番だ」――無愛想な最強騎士の不器用で深い愛情に、凍てついた心は溶かされていく。一方、リアムを追放した王都は、偽りの聖女によって滅びの危機に瀕していた。真の浄化の力を巡る、勘違いと溺愛の異世界オメガバースBL。絶望の淵から始まる、世界で一番幸せな恋の物語。
婚約破棄された令息の華麗なる逆転劇 ~偽りの番に捨てられたΩは、氷血公爵に愛される~
なの
BL
希少な治癒能力と、大地に生命を呼び戻す「恵みの魔法」を持つ公爵家のΩ令息、エリアス・フォン・ラティス。
傾きかけた家を救うため、彼は大国アルビオンの第二王子、ジークフリート殿下(α)との「政略的な番契約」を受け入れた。
家のため、領民のため、そして――
少しでも自分を必要としてくれる人がいるのなら、それでいいと信じて。
だが、運命の番だと信じていた相手は、彼の想いを最初から踏みにじっていた。
「Ωの魔力さえ手に入れば、あんな奴はもう要らない」
その冷たい声が、彼の世界を壊した。
すべてを失い、偽りの罪を着せられ追放されたエリアスがたどり着いたのは、隣国ルミナスの地。
そこで出会ったのは、「氷血公爵」と呼ばれる孤高のα、アレクシス・ヴァン・レイヴンだった。
人を寄せつけないほど冷ややかな瞳の奥に、誰よりも深い孤独を抱えた男。
アレクシスは、心に傷を抱えながらも懸命に生きようとするエリアスに惹かれ、次第にその凍てついた心を溶かしていく。
失われた誇りを取り戻すため、そして真実の愛を掴むため。
今、令息の華麗なる逆転劇が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる