達観した紫の上と、年上旦那様

旦那様、狼になる

「どうしてあなたは、私から逃げようとするのです？」
　どうして、ですか。愚問だと思うのは私だけでしょうか。
「だって、旦那様には好きな方がいらっしゃるのでしょう？」
　その言葉に旦那様が怪訝そうな顔をします。
「……知っていたのですか？」
「はい。どう見たってどなたか好きな方がいるような素振りですし、喫茶店でも旦那様のお知り合いの方がそう言ってましたし。
　だったら、私が出る幕ないですよね」
「……あいつらは何と言った？」
　いきなり口調が変わりました！　怖いです！
「ただ、ずっと好きな人がいて、結構厄介だってしか聞いてません！！」
「それが、誰か、までは？」
「言ってませんし、聞いてません！！」
　何でいきなり怒るんですか！　

「私はあなたが思うほど器用じゃないっ」
　いきなりそんなことを言ったかと思うと、いきなり耳朶みみたぶを舐め始めました。
「だんな……さま？」
「いい加減私の名前を呼んでほしいんですがね。麻帆佳」
　いやぁぁぁ！！　耳元でいきなり呼び捨てしないでください！　心臓に悪いし腰が砕けそうです。
「ひゃぁっ！？」
　他のことに気を取られていると、旦那様が私の服の中に手を入れてきやがりましたよ。なんでそんなことするんですか！
「私の下半身事情を知ってて、その態度ならこっちにも考えというものがある」
　下半身事情って何ですか！？　……え、お尻に何やら固いものが……下半身事情ってこれですか？
「だ、だんなさまっ！」
「私の名前は旦那様じゃない」
　言うに事欠いてそれですか！？
「……ねぇ、麻帆佳。私は麻帆佳を怖がらせないために必死だったんだけど」
「……っふ」
　気がついたら胸をもまれ、乳首を弄られてました。何でしょう、この感覚。
「そんな目で見たら、逆効果だよ。私を煽るだけ」
　そう言って片手が私のショーツの中に入っていきました。