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第2章 全知全能のゴブリン
第10話 F級戦士
しおりを挟む後ろから大きいオーラが少しずつ近づいてくる。
ゴブリンになっても尚敵のオーラはすぐに察知することができる。
明らかに他のF級戦士と呼ばれるゴブリンが震えだし、緊張感が走る。
「おはよう、ザク共。A級戦士のジャグラス様が通るぞ」
一際大きな声。
A級と言ったか?
上から二番目の級か。
足音が少しずつライオネルの横に近づくにつれて、鼻をツンと刺すような強烈な悪臭がした。
「クセーな」
思いの外、簡単に言葉が出た。
次の瞬間、あたりの緊張感がより一層増したことが分かった。
「誰が臭いんだ?ライオネル」
横を見ると、ジャグラスが立っている。
「いや、臭いなと思って‥」
話し終えるや否や、ジャグラスの持つ棍棒がライオネルの横腹を強打した。
その反動でライオネルは数十メートル吹っ飛び、壁に激突。
「あのバカ‥死んだな」
アルが下に俯き、呟いた。
「ふん、あとで死体は片付けておけ。腐って悪臭がしたら敵わんからな」
ジャグラスがF級戦士の列の先頭に着く。
危なかった。
どうやらフィジカル面に置いても前世の勇者ライオネル・ブラッドの防御力も引き継がれているようだ。
避けることも反撃もできたが、自分の今を知りたかった為、敢えて攻撃を直で受けた。
これならヒールをする程でも無いことを確認。
ダメージを受けたフリをして、ゆっくりと立ち上がった。
壇上には既にゴブリンキングらしき者が立っている。
他のゴブリンは直立不動で前を見たまま動いていない。
統率はかなり取れているようだ。
気づかれないうちに列の一番後ろに並び直す。
「先日、我らの魔王様が死んだ、勇者ブラッドによって」
ブラッド?
ライオネルでは無いのか?
それかただ言っていないだけか。
「我らゴブリン族は今後単独の王都襲撃を行う。これは他種族には極秘の作戦である」
どうやら新たな魔王は決まっていないようだ。
魔王軍全体でまだ統率が取れていないことは明確だった。
「襲撃は一ヶ月後。それまでに個々の隊の能力の底上げを行うこと、以上」
失敗する。
この作戦は失敗する。
王都の兵士配置は頭の中に入っている。
それに加えて、ゴブリンのみの単独行動は全滅を招く恐れもある。
朝会は思いの外すぐに終わった。
ゴブリンたちが後ろを向き、驚きの表情を自分に向ける。
「なんだ、生きていたのか、ライオネル。あたりどころが良かったんだな。悪運のいいやつめ」
ジャグラスが近づいてきて言った。
「あ、はい」
これ以上目立つわけにはいかない為、穏便に過ごした。
アルも目を丸くして、こちらに近いた。
「まぁそうだな。ところで、A級戦士はジャグラス程度の強さなのか?」
「程度って。そうだよ、俺たちなんて歯も立たないだろうけど」
「あいつと対戦するにはどうすればいい?アル」
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