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幻
しおりを挟むこの世界は、ある一人の王様が納めていた。
その王様は、はっきり言って愚王だった。
誇れるものはその権力と言ってもいいだろう。
そして、その権力に釣り合わないほど、能力が低かった。
普通リーダーというと、他の者に指揮を取ったり、あるいは士気を上げたり、カリスマと頭脳が必要なのだが、その王にはどちらもなかった。
やることは、贅沢のみだ。
そして、その王が王であり続けられるのは、住民が優しすぎたからであろう。
違う言い方をすれば、依存性があるのだ。一人がこうしようといえば、だれしもそれに従う。意思が無いのである。
その中で突然変異的に生まれたその彼は、その性質を利用して王という権力を確立した。それは特別なものでもなんでもなく、現代人が行けば誰でもなれるであろう。
そして、その住人は純粋だった。
「王様のお召し物をお持ちしました」
「よかろう」
「サイズはLLLサイズでよろしかったですね」
「な、なんだと・・?!」
それはつまり彼が太っているということだ。
それに気が付いた王は怒鳴った
「何を言う!!これはSサイズだ!!」
「・・!1失礼しました!これはSサイズです」
「いいだろうふん」
LLLサイズがSサイズと変更された。
また、こういうこともあった。
「あの、すみません、城の労働者の半数が王様の言いつけを守って死亡しました。どうしましょう」
「何?!このわしが殺人しただと?!!」
「!!失礼しました!!」
「私は誰も殺していない!!いいな!!」
「は、はい・・!!」
こういうことを繰り返し、彼は悟った。
自分が言った言葉は、彼らにとって真実となる。
ならば、あらゆることが真実になるじゃないか!!と。
「いいか!わしは有能だ!!」
「はい、そうでございます」
「わしは天才だ!この世界の誰よりも!!」
「そうでございます!!」
「わしは偉い!!わしは強い!!わしはかっこいい!!わしはすごい!!」
「そうでございます!!そうでございます!!そうでございます!!」
言葉の上では、彼は無敵だった。
言葉の上では、何でも言える。
そして、それは、この王様だけの話ではない。
あらゆる言論、あらゆる文字、あらゆる言葉は、真実だろうか?
否、嘘でしかない。幻でしかない。
幻の中で悪戯に時間を消費する。
それはこの情報化社会においての猛毒だ
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