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木森林木林

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新しい主義

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 バベルの塔という逸話がある。

 元々世界は一つの国だった。

 その国では、高い塔を作っていた。

 みんながその高い塔を作ることを生きる喜びとしていた。

 それは、傍から見れば、現代人からみれば異様な光景といえるだろう。。

 だが想像してほしい。娯楽も宗教も何もない世界で、まるでスポーツのように等を作ることにのめりこんでいた人々がいるということを。ならば、それにつられることも仕方ないことであろう。

 元のバベルの塔というお話では、神様が狭量にも、自分へと登ってくるものたちを疎ましく思い、言語をバラバラにした。

 だが、この世界では神様は存在しなかった。

 どんどんと高い塔を作り、倒れてもまた新しく作り出した。

 その過程で、あたらしい技術が発明され、高度でもその建築物を維持する素材、あるいは高度でも活動できるような機械などを作っていった。

 そして、とうとうその塔は、宇宙にまで到達し、衛星や宇宙船などを作る技術なども発明されていった。それは、宇宙エレベーターともいえるものだった。

 数多くの宇宙エレベーターが作り出され、周囲の惑星を開拓していった。その過程においてシンギュラリティを突破。あらゆる問題が同時に解決された。

 そう、この世界の人類は、一定以上の科学力を持つ霊長類へと至ったのである。

 この世界において、一つ驚異的なことがある。

 それは、戦争が存在しないということ。人類が発展する過程において、絶対的であるかのように思える、負の遺産を経過『しなかった』ことだ。

 彼らにとっての宗教や領地は、全て塔という一つの存在で解決することだった。

 くだらない原点の解釈で人々は争うこともなく、資源の量の違いでいさかうこともなく、その惑星で産出される資源は、全て塔周りの技術に使われたのである。

 塔を作る技術力を持つものこそが、相応の地位と権力を得た。

 故に、幻想を心の中心に置くものたちよりも、その技術や思想は実践的であり、また最善のものであったのだ。

 彼らは現実と合致していた物理的な塔を信仰し、多くの幸福を手に入れた。

 そして現実では現実と乖離した、主義や宗教、領土を信仰し、多くの悲しみが生まれた。

 その違いは、元々は、小さなものだっただろうに。


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