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リベンジャー2
しおりを挟む「それで、、私をどうするんです?」
十中八九、殺されると思った。
あれだけのことをしたのだ。
そう、こいつの口から出た言葉は、
「殺す」
予想していたことだった。
「・・・だめか
私は本気を出してそいつを殺そうとしたのだが、、駄目だ。
やはり能力が通らない。
このままでは私は殺されるのだろう。
「・・・・でも、」
だが私は、満足していた。
今までの人生に。
今まで虐めてきた害獣を殺せたというだけで、溜飲が下がっていた。
罪悪感どころか、爽快感さえあった。
間違いなく今までで一番最高の瞬間だ。
ならば、、殺されるのも悪くない。
この先どんなゴミが待ち受けているのか分からない。
そんな未来が来るくらいならば、ここで終わりにするのも悪くない
目を閉じて殺されるのを待つ。
こんな時でなければ、恐怖で怯えてみっともなく殺されていたに違いない。
タイミングの絶妙さに感謝した。
死を受け入れようとした。
だが、、、
「なーんちゃって」
「・・・・はい?」
相手から殺意が消えた。
いや、殺意なんて最初から無かったのだろう。
今の一言から、こいつには初めから殺すつもりがなかったんだろうということが理解できた。
「殺さないんですか・・?」
妙な話だが残念そうな気色がその言葉には含まれていただろう。
それに対して相手は、
「いや、殺すつもりだったよ?」
「・・・・???」
どういうことなのだろう。そう聞く前に相手は持ち前の饒舌さでことの次第を教えてくれた
「僕はね。薄々君も察してた通り、能力者専門の警察みたいなところに所属しているんだ。
FBIとかそういった名称があったはずだけど、、えっと、、忘れたから能力者警察でいいか。
その能力者警察に所属している僕は、当然上からの達し通りに君を殺さなくちゃあいけない
でも、やめた」
「やめた・・・?」
「そう、やめた。
だってつまらないだろう?上からの権力に従順だなんて。
人は自分の欲求に従うべきだ。
んまあだからと言って殺しまくるのはさすがにやりすぎだと思うけど、、
でもむしろやりすぎたからこそ僕は君を殺すのをやめた。
つまり、、まとめるとこういうことだ。
その能力を見込んで、能力者警察の殺害依頼を出したい」
「・・・・?」
話が見えてこない。
こいつは能力者警察というところの手下なんじゃないのか?
「いや、違うんだよ。大人っていうのは色々あるもんなの
上司だからって何でもホイホイ聞くわけじゃないし、自分が所属している組織が好きな奴なんてほとんどゼロだと思うよ。いや例外はあるかもだけど
まあともかく、僕は自身が所属している能力者警察が嫌いだから殺してくださいってことだよ」
敵からその味方を殺してくれというのは、
いや、あるいはこれは何らかのテストなのだろうか。
この依頼にイエスを出した途端、殺されるとか、、
いや、でも、殺されることになんらデメリットはない。
私は今この時が最高なのだから。
今殺されるのならばそれで本望だ。
むしろ殺してほしいくらいだ。
目の前の人間も他の人間と同じくらい気持ちが悪いのだから。
だから私は
「・・・・わ、分かった」
了承した。
それに対してゴミの一人は、
「ふふふ」
と機嫌よく気色悪く笑った。
「それじゃあ、計画の詳細を説明するよ。
といってもやることは簡単だ。
僕の見立てならば、君の能力は、範囲も強度も最高クラスだ
つまり君はある敷地にいる人間生命体全てを殺してくれればそれで計画は終わる。
後の処理は僕に任せてほしい。考えがあるんだ」
「・・分かりました」
シーンと、車の中で静寂が鳴り響く。
だが、相手はきょとんとした顔でこちらを見ていた。
耐え切れなくなって言う。
「あの、何か・?」
「いや、他に聞きたいことはないのあkなって・・」
「・・殺せばいいんでしょう。あなたの嫌いな人たちを」
殺す。ただただ殺す。それが何より大事なことだ。
「まあそれは間違っていないね。
でも、同時に最も大事なことを言っていない。
達成報酬や、相手の情報、やってきたことやその証拠。
僕がどんな人間なのか、どんな風に嫌いなのかとか、僕が何を目指しているのかだとか。
君は殺し屋として雇われたのだからそのくらい聞いてもいいはずだ。少なくとも裏ではそうなっている」
「裏って・・」
中二病的な単語だと思ったが、しかし思い直せば私はもはやおもてには戻れないだろう。
ゴミとはいえ無関係な人を殺したのだ。それはもやはやくざとか犯罪者とかの領域。
だが、ともかく、こいつとこれ以上無駄な口を利きたくないので、
「では、、話してくださいよ。全部。」
「わかった」
それからこいつは、中二病的な、それでいてアウトローな、犯罪的な。
本当かどうかも分からない到底荒唐無稽な話を、
とてつもなく嬉しそうに時節にやけが止まらないというふうに笑いを凝らしながら、
「まず僕のことだが、、」
話したのだ。
「まず最初に最も関係ない僕の能力を話しておこう。
僕の能力はひところでいうならば生きる。二文字ならば生存。四文字ならば生存戦略といったところか
あらゆる物理や精神、魔法、能力から身を守る能力だ」
「そう、最初君が能力を発動しただろうけども、、それは僕の能力で相殺されたのだろう。
殺す力と生きる力。逆に言えば僕が生きる力がなければ死亡していて話にならなかったわけだし、
まあこの力があるからこそ最初に僕が派遣されたわけだが、、まあそういうわけだから安心してほしい」
「とはいえ、生存できたとしても、能力者の中には相手を異空間に引きずり込んだり、拘束したり石の中にいるしてきたりする奴がいる。僕では到底能力者警察の猛者には勝てない。
だが君なら勝てるはずだ。君の能力は殺人に特化している。
最初君は、相手が能力者ならば自分の能力が利かないと思っていたかもしれないけども、それは間違いだ。
経験則で分かっていることだが、能力者相手でも、その能力が矛盾しない限りは能力は適用される。
そしてたとえ矛盾したとしても、その強度が高いほうが勝つわけだから、君ならばあの組織のほとんどの能力者は殺すことができるはずなんだ」
「そして、、ここからが重要だが、何故僕が能力者警察が嫌いなのか、そのわけを話しておこうと思う。
無論、これは彼らに限ったことじゃないのだが、、組織というものは、あまりに一つが特化されて強くなりすぎると横暴になる傾向がある。
そしてsれが能力者ならばなおさらだ。当初は能力者犯罪を取り締まるために作られた組織なわけだが、、その強すぎる物理的な力によって、政府さえも裏で掌握してしまうことになってしまったんだ。
いわば過激派ヤクザが今の社会を運営していると言ってもいい。今や政治に関与しているものは、能力者警察と癒着しているし、そうでないものは物理的に消された。そう殺されたって意味だ」
「そして奴らはこの支配をさらに完全なものにするために、洗脳能力者を使って、効率的に興行的に人を家畜として、自由に考えられないような精神にするための計画を発動させた。
考えてもみたまえ。一部の能力者だけが富や権力を独占し、そして多くの者を娯楽のために殺し、工業のために死ぬまで利用し、総人口全員イエスマンとなる姿を。
それはまさしくこの世の地獄。末世。
そしてこの事件の厄介なところは、能力者警察が居なければこの社会から能力者犯罪者が処理できないってことだ
何も考え無しに君が能力者警察を殺すと、世界はヒャッハーであふれかえる。
かといってこのままでは能力者警察が洗脳支配計画を実行に移してしまう。
仮に殺した後、不正のない新しい自警団を作ったとしても、同じ歴史をたどるだけだろう。
自警団が第二の能力者警察になるだけ
いわば八方塞がりというわけさ。」
「だが、、だからこそ燃える
「そう敵が強いほど正義も全力を出せるってことだよ。
僕は実はある大学の出身で、その恩師は天才なんだ。名前は出せないが、彼はこの地獄を効率的に解決するほう歩を編み出した。
それが、完全VR世界」
「VRというのは、もう一つの世界を作り出す技術と言ってもいい。
しかし、今のVRは視覚だけの不完全なものだ。
準備もヘッドセットや器具などを使わないといけない。
しかし、博士が発明した超最強装置によって、周囲の人々を集団的に管理された夢の世界にいざなうことができるんだ。
管理された、といっても、管理するのはその夢の主人本人だ。パソコンを使える人ならば簡単に扱えるインターフェイスによって、あらゆる欲望を実現させることができる。
いや、そもそも夢を操ったところで、起きる必要がないのだからあまり意味がないのだが。
これによって、人は新たなるステージに上ることができる。
人と人とがつながるとかいう、意味の分からない、上のものによって都合よく正当化されたスローガンは、物理的に意味を成さなくなるんだ。
そう、これは完全な一人遊び人生ゲーム。オナニーの最終極地。
つまり人とつながる必要がないのだから、誰かに迷惑を掛けられる心配もないし、かける心配もない。
その一方で、繋がりたい相手とだけ、両者が認証することによって特別に回線を引くことができる。つまり好きな人同士ならばいっしょになれる。無論片方がブロックすれば永遠に合うことはない。
気の合う仲間が居なければ博士が開発したAIによって制御された仮想ロボ体によって寂しさを癒すこともできる。あれはヒトと全く変わらない対応ができる。チューリングテストを完全にクリアしたAIだ。
これによって、能力を使わずとも人の精神は満足する。多大なコストを払わずに、手軽に番人が幸せになれるんだ。
さて、この世界で犯罪が起こる可能性は?ほぼゼロパーセントに限りなく近い。
仮に起こるとしても少数。それならば精鋭チームが十分時間をかけて対処することができる。
そう、君が能力者警察を無事に殺してくれれば、夢のような世界が待っているんだ。」
「・・・・分かった」
正直、ゴミが幸せになることに、若干腹立たしいものを感じなくもなかった。
いや、あるいは私が人類の味方だったからと言って、その計画に賛同しただろうか。
なんかの漫画で見たが、幸福な夢の世界にいざなうラスボスに対し、主人公サイドは否定的だった気がする。
だが、、、、幸福か。
彼の言うその理想の世界が気になっている自分もいる。
そうだ。もし気に入らなければ自分を殺せばいい。
だから私は了承した。
そして、それからは早かった。能力者警察の本拠地は地下であり、何の変哲もない土地の下に力を使えばそれですべては終わったのだ。
そして、夢の世界に行くプロジェクトが発足される。
その当日の夜、気が付いたら私は白い空間に居た。
「・・・?」
「ようこそ。夢の世界へ」
目の前に、女の人がいた。清潔で若干体が光っている。それはまるで電脳空間をモチーフとした模様であり、それがAIなのだろうなと直感的にわかるようになっていた。
「あの・・・」
「戸惑うのも無理はありません。しかし、私たちはあなたを幸福にするために計画を発動させました」
私はこのことを知っていたが、まさかここまでのものとはおもわず戸惑っていたのだ。
体の感覚はかなりはっきりしており、意識も、もしかしたら起きているときよりもすっきりとしているかもしれない。思考速度がいつものよりも数倍はスムーズな感覚がある。
「はい、ところで、何をすれば、、
「まずはこの世界のイントロダクション、および操作方法を簡単にお教えします」
そして、私は色々な世界に行った。
町の中海の中火の中地下の中、地上、宇宙、銀河系、ミクロ系、概念系、、、ありとあらゆる世界に一瞬で旅ができ、そして全てを操ることができるという。
「この世界での10年間は、元の世界での一秒となっています。さらに睡眠をとる必要がありません。つまり何をしても自由なのです。努力するも遊ぶも良しです。」
「・・・・」
「これにてイントロダクションは終了です。操作方法が分からない点があればヘルプと言うか助けを求める意思を表示していただけると幸いです。では」
そういってAIは消えていった。
「私は・・」
私はこの白いデフォルトの空間の中、、、
『何もしなかった』
ずっと、ずっと、白い空間。
ここならば敵はいない。
そうか、この世界が、私のいるべき場所。
だからこそ、もうしばらくは、
この場所で何もせずにいたい。
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