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8章
商会の本領発揮
私達が外に出ると、パンを渡した暗部の人に驚かれた。
「ケガもしてないから大丈夫だよ」
「「……」」
寄ってきた二人に手をヒラヒラさせながら大丈夫アピールをすると、安心したように頷かれた。
手紙を渡されたので読んでみると“パン、美味しかった。ありがとう”と書かれていた。
「ふふっ。どういたしまして。私が戻ってきたら二人もお仕事終わり??」
一人が紙を出してサラサラと書いていくのを見ると、今日一日いっぱい貸し切り予定だから明日の朝まで見張りをしなきゃいけないらしい。
一緒に馬車に乗って帰れば楽だと思ったんだけど、そうはいかないらしい。
再びパンを渡して、私達は馬車に乗り込んだ。
手を振ってくれている二人に手を振り返してお別れした。
◇
街に入ってそのまま冒険者ギルドに寄って依頼完了報告。その後商業ギルドへ。
満面の笑みのボンヘドさんに応接室で出迎えられると、笑顔に引き付けられるようにプルトンがアフロへダイブ!
〈『『《「「ぶふっ!」」》』』〉
《あはっ! 柔らかーい!》
「セナ様ァー?」
「ぐっ……ダイジョブ……」
《ヤダ! 絡まったわ! エルミス助けて!》
〈『『「「ぶはっ!」」』』〉
「お疲れですカナー?」
私達が笑いに耐えていたのに、プルトンがアフロの上でジタバタし始め、再び噴き出してしまった。
そんなプルトンを《だから言ったではないか》とエルミスが笑いながら引っ張っている。
《一回やってみたかったんだもん! ポワンポワンで面白いわよ?》
《遠慮しておく。儂は主のツルツルサラサラの髪の方が好きだ》
《あら! 私だってセナちゃんの髪の方が好きよ? コレは別》
プルトンがポフポフとアフロを叩いている。
念話で「笑っちゃうからやめて」とお願いして、アフロから離れてもらった。
「ゴホンっ。すみません。もう大丈夫」
「なら良かったデス。お戻りになったということは集まったのですカナ?」
「うん」
気分を落ち着けるように淹れてもらった紅茶を飲んで、リシータさんを待つ。
リシータさんだけ呼んだのかと思ってたのに、アーロンさんが先に現れた。
ほどなくリシータさんも来てくれたので、商業ギルドの倉庫に案内してもらった。
「かなり用意できたからしばらくは大丈夫だと思うよ。これがなくなる前に買い取りを周知させて欲しいな。キャンペーンとかやったら話題になると思うんだよね」
「きゃ、きゃんぺんとはなんでございましょう?」
「キャンペーンね。“スライムのドロップ品を高価買い取り中!”って大々的にお知らせするの」
「それだとドロップ品から作られていることがバレてしまいますヨ」
「うん。だから時期をズラすの」
中敷きが話題になった後にそれを発表して、中敷きに結び付かせないようにすること。期間限定で高めに買い取って、噂になるように仕向けること。理由は、“新しい物を作りたいからいろいろな素材を買い取り中”とかにすれば怪しまれないと思う。と、いうことを説明すると、三人ともフリーズしてしまった。
「まぁ、買い取り金額を上げちゃうから先行投資になっちゃうんだけどね。サンドスライムだけじゃなくて全てのスライムのドロップ品を買い取れば、この先新しい商品を作っても、どれで作られたのかわからないっていう利点はあるよ」
「…………セナ様は神様でしょうか……」
「はい?」
リシータさんに呆然と呟かれて意味がわからなかった。
「神でなければ先読みの力でもあるのでしょうか……」
「なにそれ?」
「言葉通りの先を読み通す力のことです!」
「そんなスキルあるの?」
先見の明みたいなスキルあるの? そんなの知らないんだけど、私が知らないだけ?
リシータさんは今までカミカミだったのに、今回だけは普通だった。素だったら噛まないのかもしれない。
〈そんなスキル聞いたことない〉
「本当に五歳か?」
「そうだよ?」
アーロンさんよ、何言ってるの? 見てわかるでしょ?
中身は三十路だけどね! アレか! 五歳児の思考回路の発言じゃありえないからか! これはマズイ。乗り切らなければ……
〈そんなことよりどうするんだ? 我らはダンジョンから戻ってきたばかりだ。さっさと休みたい〉
どうしようかと頭をフル回転させる前に、グレンがナイスアシストをしてくれた。
「そうだね。出しちゃうね」
ひと声かけてから、倉庫に大量の【スライム砂】を出していく。核から作ったやつもドロップ品もごちゃ混ぜにして。
「こんなに狩ったのか……」
「す……素晴らしいですっ! さすがセナ様! ありがとうございますっ!」
「オオオオオオーーー!! 圧巻ですネ!」
三人に三種三様の反応をされた。
ここまで協力したんだから、しばらくは大丈夫だと思う。これからは自力で集めてもらいたい。
「あとは工房と作業員を雇えば……」
「す、既に手配してありますっ」
「え? 両方とも?」
「はっ、はい! しょ、商会長より、行動は早い方がいいと。工房は明日中に出来上がる予定ですっ。セ、セナ様が仰っていたリョウも現在建てておりますっ!」
「わーお」
まさか私達がダンジョンに籠っている間にここまで話が進んでいるとは思ってなかった。
さすがタルゴーさん仕事が早い。……いや、この場合はリシータさんか。
「き、きん、近日中に制作に入れるかと思いますっ!」
グッと拳を握って声を張ったリシータさんは、“言い切ったぜ”みたいなちょっと達成感に満たされたように笑顔になった。
「さすがタルゴー商会! 仕事が早いねー!」
「セ、セナ様が貧民や孤児をと仰っていたので、人員はすぐに確保できました。現在、教育中なのですが……」
「どうかしたの?」
先程とは一転して言いにくそうに「作業の説明に戸惑っていて、何か助言をいただきたいのです」と肩を落とした。
どう説明しているのかを聞くと、全ての作業を一人でやるやり方だった。工程を覚えられない人が多いらしい。
「なるほど。それは流れ作業にしたら解決するんじゃないかな?」
「流れ作業……」
「作業を流すのですカナ?」
「なんだそれは?」
流れ作業の説明をすると揃って感心された。ジルまで「なるほど」と頷いている。
ベルトコンベアーがあるわけじゃないから、流れ作業っていうか分担作業だけど。
「作業効率も上がるだろうし、各作業のリーダーを決めて責任持たせたりしたらミスも少なくなると思うよ。そのリーダーは責任者手当てってことでちょっと給料を上げたらやりたい人も増えると思う。そうだな……勤務態度で寮に入れるか決めるとか、給料上げるとかすれば全体的にやる気も上がるんじゃないかな? ただ“給料いいよ!”ってするよりサボったり、不正する人が減ると思う」
こんな感じの説明で大丈夫だよね!?
時給じゃなくて日給だろうし、この世界の給料事情は知らない。あんまり細かい説明すると私が代表者になりかねないし、タルゴー商会自体に影響しちゃいそうで怖い。
「な、なるほど……」
「セナ様は料理だけではなく、運営についても博識なんですネー! 素晴らしいーデス!」
「はぁ……まったく。セナの頭はどうなってるんだ?」
「ちょっと! アーロンさん、どういう意味?」
「そのむくれた顔は年相応なんだがな。ハハッ。そんなにふてくされるな」
リシータさんは早速タルゴーさんへ許可をもらうための手紙を書き始めた。
ボンヘドさんにカレーとベビーカステラについて聞くと、美味しくするために練習しているらしい。
ベビーカステラの方は最終段階で、近々タイミングを合わせて発売するんだそう。
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