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8章
勘違いと痴情のもつれ
話が落ち着いたのを見計らって、アーロンさんがダンジョンに行く前のナイフの件の報告をしてくれた。
なんと解決したらしい。
「なんだったの?」
「いや……それがな……」
アーロンさんにしては珍しく言い淀んでいて、グレンが〈さっさと言え〉とせっついた。
「拒否したら、狙われたんだ」
〈「は?」〉
肝心なところがハショられてて意味がわからない。
順を追って説明を求めた。
アーロンさんの説明によると、キアーロ国から戻ってきた後、婚約者候補を何人も見繕われたらしい。それでその候補と会わされたりしていたんだけど、アーロンさんは結婚する気がなくて全員拒否。
そしたら、そのうちの一人が“想い人がいるに違いない”と他の人を蹴落すために人を雇ったんだそう。
私が数日お城に通っていたせいで雇われた人物に、“国王に手をつけられた少女”だと思われたらしい。“こんな少女にも手を出すなんて!”と、ちょっとケガをさせようとアーロンさんを狙っていたんだけど……グレンの威圧に驚いて思わず手に持っていたものを投げたら、それがナイフで、偶然私にナイフが飛んできたってことだったらしい。
貴族だったからお城に入れたみたい。
雇った人は他の人を蹴落としてまでアーロンさんと結婚したかったんだろうし、雇われた人はいい人なんだか悪い人なんだかよくわからない。それにしても……
「なんかとんでもない誤解されてるんだけど……」
「それはちゃんと説明しておいた。裁いて、セナにちょっかいは出させない」
「うん。ありがとう。雇った人はアーロンさんとそんなに結婚したかったんだねぇー。モテモテじゃん」
「俺は結婚なんかするつもりなんかないのにレナードが勝手にやったんだ」
レナードさんが候補を見繕うことと、アーロンさんがモテることって関係なくない?
「王族なら結婚しなきゃいけないんじゃないの?」
「王族は他にもいるからな。俺がしなくても他の誰かが継ぐだろ。俺の国は強い者が王になるだけだ。大体、なんで俺がその辺の令嬢と結婚しなきゃならんのだ」
「いや、王様だし。貴族は王家との繋がりとかいろいろあるでしょ」
「俺は強いやつじゃなきゃ認めん」
女の子に強さは求めないであげて欲しい。メンタルの強さは必要だろうけど、国母が脳筋とかになったら国民が可哀想すぎる。
「ともかく、私達はアーロンさんの痴情のもつれに巻き込まれたってことね」
「もつれる情もなにもない」
「はいはい」
「その雇われた人物というのは、どういった人物なのでしょうか? この先、セナ様が狙われる可能性などはありませんか?」
不服そうに話すアーロンさんの話を呆れながら話をまとめると、ジルが安全性について聞き始めた。
私はこの国にずっといるつもりもないし、もうお城に行くこともそうそうないと思う。
アーロンさんの説明では、雇われた人物は令嬢の幼なじみで影が薄い人物。他の令嬢にも嫌がらせらしい嫌がらせはしていなかったんだそう。ナイフはデザインがカッコイイと買ったもので、お守りにと持っていただけ。扱い方も知らなかったらしい。
身辺を洗いざらい調べたけど、特に何も出てこなかったから裏はなさそう……とのことだった。
「その婚約者候補の女性達からセナ様が狙われる可能性は?」
「ハッハッハ! すっかり従者が板についたな。今回の女は罰を与えるし、他の女も調べさせている。何か見つけたら罰を与える。どのみちセナには近付かせない。安心しろ」
アーロンさんが自信満々に言うと、ジルはようやく納得したらしい。
〈セナがケガをしたかもしれんのに詫びもないのか?〉
「それは……すまなかった」
〈フンッ。今さらだな。セナが許可すれば我が暴れてやるのに〉
「それだと関係ない街の人がケガしちゃうからダメ。心配してくれてありがとう」
〈我らのセナだ。今後は利用しようなどとは思うな。それにこの中敷きは平民優先だ〉
「……わかった。すまんかった」
頭を下げたアーロンさんにグレンは言いたいことを言い終わったのか、私を撫でながらフンッと鼻を鳴らした。
私が怒るよりもグレン達が怒ってくれるから、私は普通でいられるんだと思う。なんだかんだいつも付き合ってくれるグレンもジルも優しい。
その後はなんだかんだと話して、明日は工房見学に行くことになった。
◇
宿に戻ってきてから調査をしてくれてた闇の子達を呼んで報告を聞く。
アーロンさん達が発見する前に精霊達はその男の子を見つけていたらしい。
男の子はアーロンさん達に捕まる前、私にナイフを投げちゃったことを後悔しまくっていて、令嬢に「相変わらず使えないわね」と怒鳴られていたんだそう。
令嬢はアーロンさんが好きなワケではなく、王妃になりたかったみたい。男の子に自分を庇えと最後まで命令していたらしい。
「酷い女の子だね。貴族にはありがちかもしれないけど……アーロンさんは幼なじみって言ってたのにそんな扱いするの?」
《それ、しらべた》
渋い声の子が前に出てきてくれた。
おそらく私が聞くだろうと思って令嬢達の家を調べてくれたらしい。素晴らしくできる子!
男の子は伯爵家で令嬢は侯爵家。
その伯爵家は、爵位を継がない子は高位貴族の執事や付き人になることが多いらしく、男の子はその令嬢の執事になるべく小さい頃から引き合わせられていたみたい。
侯爵家は父親は普通だけど、母親がワガママ。伯爵家の人は良心的だそう。
「男の子が可哀想すぎるんだけど……」
「セナ様に故意ではないといえ、攻撃したのですから罰はあるべきだと思います……」
そう言うジルは過去を思い出したのか苦い顔をしている。
うーん。どうしようかな?
「いっぱい調べてくれてありがとう! とっても助かったよ!」
裏話まで調べてくれていた闇の子達に、ダンジョンで作ったパンのご褒美。渋い声の子はパンを渡すと、パタパタしている羽のスピードが上がった。喜んでくれているみたい。可愛い!
闇の子達は《また呼んで!》と精霊の国に帰っていった。
「さてさて、アーロンさんに手紙書かないとね」
『どうするの? まさか増えないわよね?』
「アハハ! それはないない!」
ジルは戦えるけど、普通の貴族の少年が戦えるとは思えない。それに精霊の子に聞いた限りではジルみたいな決死の覚悟みたいな感じじゃないと思うんだけど……
そういえばラノベ系だと結構酷い仕打ちとかされてる描写もあったな……
「……関わったわけじゃないからそれはないと思うし、私自身家族になるつもりはないよ。でも、わからないからちゃんと調べてもらおう!」
グレンは〈優しすぎる!〉と怒っていたけど、アーロンさんに手紙を書いてプルトンに届けてもらった。
虐待はよくない。何よりも、聞いたジルが辛そうだからね。
きっとなんとかしてくれるでしょう。数時間前にグレンが脅したしね。自国の問題なんだからなんとかして欲しい。
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