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第二部 10章
監査
翌日、私達はのんびりとすごした。アーロンさん達は私の案のために準備してくれている……ハズ。
さらに次の日、再び王城を訪れた。今回は執務室ではなく、お城の敷地内にある、兵士さん達の訓練場。
そこには日本の学習机のような机とイスが三セット用意されていて、すでに少年少女が各々着席していた。
「手間を取らせてすまんな。セナが来たから説明する。セナはお前達と婚姻をするつもりも、侍女になるつもりもない。今回、お前達がしでかしたことによって、すでに王位継承権は剥奪されている。これは納得したな?」
少女の継承権もなくなったらしい。
昨日説得したのか、二人はものすごく不満そうに頷いた。
騒ぐかと思っていたけど、一応大人しく座っている。アーロンさんを軽く睨みつけているけど。
「セナはお前達と今後一切関わりたくないと言っている」
「「なっ!?」」
「しかし、お前達は不満だろう。そこで、今日ハッキリさせる。婚姻や侍女云々は別として、セナに勝てたら会うことを許可しよう」
声を上げた二人は、あからさまにホッとした様子で頷いた。
そして自信があるのか、先ほどまでの緊張した雰囲気から一変してフフンと鼻を鳴らしている。
「しかし、勝負に負けたらセナに会えないことはもちろん、金輪際王族という身分を笠に着ることを禁ずる。これまで通り敷地内の別邸に住むことは許してやろう。ただ、そうだな……それだけでは甘いか……学習の時間も増やすことにしよう」
「「え!? 学習も!?」」
「勝負しないのならそれで構わん。セナには会えんがな」
アーロンさんは驚いた二人にニヤリと笑いかけた。
さらに「王族たる者己の言動に責任が生じる。自信がないなら降りるんだな」と、悩む素振りを見せた二人を煽った。
「か、勝てばいいのよ!」
「そ、そうだな!」
「なら勝負するということでいいんだな?」
アーロンさんが確認すると、二人はコクコクと首を縦に振った。
後から文句を言わせないために、アーロンさんは誓約書まで書かせる徹底ぶり。
リスクのことはもちろん、勝負内容も考えていないらしい。子供だからかもしれないけど……王族という身分のことよりも勉強を嫌がったことといい、脳筋は間違いない。
「まずは王族として最低限の知識を試す。簡単な計算問題だ。全員の問題を変えているから盗み見ても無駄だからな」
「「ゲッ!」」
アーロンさんが二人に試験内容を発表すると、二人して顔をしかめた。脳筋だけあって勉強は苦手らしい。国の歴史とかになったら私はわからないのに、そういうのも思い付かないみたい。
日本のテストのようにアーロンさんのスタートの合図で、リシクさんが作った計算問題を解いていく。
さすがに問題の内容までは指示していないから、リシクさんのオリジナルだ。
簡単な足し算と引き算の文章問題のみで構成されている、五問。私は五分もかからずに終わってしまった。
少年少女は頭をかきむしり、悩んでいる。
「もう終わったのか?」
「うん」
「早いな。こいつらは……まだまだかかりそうだな」
一時間経っても終わらない二人にアーロンさんがしびれを切らし、問題用紙を回収。リシクさんが答え合わせをすると、一問しか解けていないことが判明した。
一時間に一問って……日本なら幼稚園児でも解けそうな問題だったのに……
事前に問題を知っていたんじゃないかと疑ってかかる二人の目の前で、二人と同じ内容の問題を解いて見せる。文句が言えなくなったのか、唸っていた。
筆記試験の次は実技試験。少年は武器、少女は魔法の二戦だ。
兵士さん達に学習机を移動してもらい、私達は二人と対峙。
「これから実力を試す。お前達はセナ達の中から対戦相手を選べ。降参する、意識を失う、戦闘不能になる、このどれかになった方が負けだ。誰を選ぶのか人を見る目が問われ、引き際を見極められるかが問われる。ちなみに、ガルド達はSランクパーティ、セナ達はCランクパーティだ。誰を選んでも一発勝負。異論は認めない。よく見て、よく考えろ」
アーロンさんがガルドさん達のパーティランクをわざわざ教えたのは、ガルドさん達を選ばせないため。理由は、いくらアーロンさんが許可を出しても、王族と戦うことをガルドさん達が嫌がったから。
〝ガルドさん達がいたら選んだのに〟なんて文句を言わせないように、選択肢に入れさせてもらった。
大人の、しかもSランクパーティなんて普通は選ばない。
案の定、少女は私を、少年はジルを指名した。
正直、少年がジルを選んだことが意外。彼いわく、「何も悪いことをしていない女に手を上げることは男の矜恃に関わる」んだそう。ストーカー行為はいいのかよ……と半目になっちゃった私は悪くないと思う。
アーロンさんの掛け声でジルと少年の戦闘が始まったけど、一時期とはいえ影として活動していたジルに勝てるワケもなく……勝負は一瞬でついた。
ジルは素早く後ろに回り込み、模造剣を首に突き付ける。
誰がどう見てもジルの勝ち。なのに「まいったと言わなければ負けじゃない!」なんて吼えた少年をジルは軽く昏倒させた。見守っている兵士さん達も見惚れちゃうくらいの華麗さだった。
次は私の番。
少女がスティック杖を片手に詠唱を始めたところで、私はデコピン空気砲を彼女のおデコ目掛けて放つ。一発で、おでこを弾かれた少女は気絶してしまった。
「クソ……そんな馬鹿な!」
「馬鹿はお前だ! ここの兵達にも勝てないのに、勝てるわけないだろ!」
「「ひっ!」」
意識を取り戻した少年が悪態をつくと、アーロンさんが怒鳴った。さすがに目覚めて早々大声で怒られるのは怖いらしい。
そこへ彼らの母親……アーロンさんの姉がやってきた。「負けたアンタ達はお呼びじゃないのさ。強さが気に入ったよ。アタシに仕えないかい?」と自分の子供の立場がなくなるのにも構わず、私を勧誘。
そんな姉に「いい加減にしろ!」とアーロンさんがブチギレ。
「なんだい? 今から囲っておいて嫁にでもするつもりかい?」
「んなワケないだろうが! 国を滅ぼすつもりか!? 姉上がそんなんだからこいつらがこうなんだろうが!」
「む? 強い者が全てじゃないか。学びなど役に立たん」
「役に立たないワケないだろう!」
「なんだい!? 訳わからんこと言いおって! 文句があるなら受けて立つよ!」
〝受けて立つ〟って言ったのに姉はアーロンさんに向かって、背負っていた大剣を振り上げた。
アーロンさんは難なく躱し、兵士から受け取った片手剣で応戦。
ドカンバキンと派手な姉弟喧嘩が始まってしまった。
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