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11章
腐呪の森【1】
しおりを挟む昨夜私はウェヌスを呼んで、以前風の子達が調べていてくれた詳細を聞いておいた。
この森に出てくる魔物も異臭を放っていたらしい……
クラオルとグレウスは今回影の中に入らなきゃダメかもしれない。
◇
私達はあのダンジョンと同じくマスクとゴーグルを装着して森に入る。
私達が泊まっていた森の入り口はそうでもなかったけど、進むとこの森の異様さがすぐにわかった。
森の木々や雑草すらも溶けて爛れ、腐っている。それなのに枯れてはいない。地面はぬかるみほどじゃないけど、腐葉土のような葉っぱで埋め尽くされていてふかふか。
『うぅ……臭いわ……』
《ホントね……風の子達が逃げ出した理由がわかったわ……》
「影に入ってる?」
『まだ耐えられるわ!』
クラオルとグレウスはギリギリまで頑張るつもりらしい。無理はして欲しくないのに……
私は使えるものがないかを鑑定かけまくっているけど、中々見つからない。
「うーん……」
浄化の結界を張り続けている私は魔力消費が激しいため、チートなリンゴを齧る。
「お前さん……この臭いの中よく食えるな……」
「へ? あ、うん。まだ平気」
「だぁー! オレっちもう無理ー! 吐くー!」
ジュードさんは叫ぶように宣言した後、木陰に向かって走っていった。
モルトさんも触発されたのか、ジュードさんに続いて木陰へ。
「俺もこれ以上はキツいな……なんでコルトは平気そうなんだよ?」
「……鼻で息してない」
「それにしてもだろ……」
ガルドさんとコルトさんが口呼吸の話しをしていると、顔色の悪いジュードさんとモルトさんが戻ってきた。
「吐いたら余計に気持ち悪くなっちゃったよー……」
「一回戻ろうか?」
《賛成ー!》
ジュードさん達を休ませるにも、ここはやめておいた方がよさそう。
私が言うと、プルトンが食い気味に同意した。
森の入り口まで引き返し、馬車を出す。
スッキリするかな? と魔女おばあちゃんの二日酔いのお茶を飲ませると、少し顔色がよくなった。
そのまま二人にはベッドで休んでもらう。
今度はガルドさんとプルトンも待機組。プルトンは大丈夫だったんだけど、ガルドさん達との連絡のために残ってもらうことになった。
コルトさんは大丈夫そうなので、私達と一緒に再出発。
先程の場所を越えて一時間もすると、クラオルとグレウスがダウン。二人は嫌々ながらも臭いには勝てないと影に入った。
「セナ様、もうお昼の時間をすぎていますが、どうなさいますか?」
「そうだね。休憩しようか? 食べられる?」
聞いてみると、三人共食欲は変わらないらしい。なんとも心強い。
少し開けた場所にビニールシートを敷いて、結界石内に浄化をかける。
三人はガッツリと親子丼。エルミスとアルヴィンの精霊二人は魔力水。ポラルはジャムパン。私はチートなリンゴを食べていたからおなかは減っていないため、お味噌汁だけにしておいた。
〈見つかりそうか?〉
「まだわかんないんだよね。北の国かもしれないって話だったから……付き合わせちゃってごめんね?」
「……ううん。大丈夫。新しい料理楽しみ。一緒に探したかったって……ジュードさん悔しがってた……見つけたら自慢する」
コルトさんは優しく微笑んでくれた。
(くっ! みんな優しい!)
付き合ってくれてるみんなのためにもこの森で発見したい。
リバースしないように長めに休憩をしてから、再び森の中を進む。
三十分ほど進むと、嗅いだことのある香りがしてきた。
〈なんだこの腐った卵のような臭いは……〉
「これ、硫黄じゃない!?」
〈イオウ? こんな臭いで食べられるのか?〉
「食べ物じゃないよ! 温泉!」
〈オンセン?〉
温泉の説明をしながら、匂いを辿っていくと……現れたのは温泉ではなく、木々の間に所狭しと咲く花だった。
「花?」
「セナ様がおっしゃっていた湧き水ではありませんね……違う物なんでしょうか?」
「んん? ああああ! そっか! これ、湯の花だ! うわ~。なるほどねぇ!」
鑑定して一人で納得。
まさか日本だと温泉の結晶である湯の花が、本当に花として存在してるなんて思わないじゃん?
鷹の爪みたいに名前のまんまってことらしい。
〈どういうことだ? 説明しろ〉
「あのね、私が説明した温泉の成分の花なんだよ。これを一輪湯船に浮かべるだけで、私が言ってた温泉になるの」
「この花を入れると疲れが取れやすくなる……ということですか?」
「そうそう! 匂いはこのままだけど、体は温まるし、他にもいろいろ効能があるんだよ」
グレンは匂いがこのままだと聞いて、渋い顔をした。
確か、草津温泉とかだと皮膚病とか婦人病とかに効いたと思うんだけど……旅行で一回行っただけだから自信がない。
鑑定では〝成分が溶けて温泉になる〟としか書かれていないから、溶かしたお湯を鑑定したら効能がわかるかもしれない。
「これ、いっぱい採取しよう!」
〈むむ……わかった……〉
グレンは渋面のまま、ジルとコルトさんはいつも通りに採取を手伝ってくれる。
辺り一帯の湯の花を全て回収すると、硫黄の匂いは薄まった。
〈セナ! 我の手が臭くなったぞ!〉
素手で採取していたから匂いが移ったらしい。
グレンが大げさに報告してきたので、手に【クリーン】と【浄化】をかけてあげる。ジルとコルトさんにもかけてあげると、安心したようにお礼を言われた。二人も硫黄の香りは嫌だったみたい。
そのうち、温泉のよさをわかってもらえたら嬉しいな!
湯の花の採取を終え、私達は森を進み始める。するとまた湯の花の群生地が。
これも全て採取して、今日の探索は終了。
結界石を設置した中にコテージへのドアを出して、私達は中に入った。
コテージでクラオルとグレウスを呼び、留守番をしてくれているプルトンに今夜は泊まることを伝える。
ジュードさんとモルトさんは復活したらしいけど、馬車から降りてはいないみたい。《ジュードが「食べ物あるのかなー?」ってしつこいわ!》とプルトンが笑っていた。
今のところ食べ物は見つかっていないけど、入浴剤を見つけたことを報告しておく。
早速湯の花を使おうかと思ったんだけど、無限収納から出した瞬間、クラオルから悲鳴が上がって止めておいた。残念……
普通のお風呂に入り、夜ご飯を食べ、甘えてくるクラオルとグレウスと一緒にベッドに入る。
お仕事が大変だと中々会えなくなったパパ達の差し入れに、湯の花はいいかもしれない……なんてことを考えつつ、クラオル達を撫でていると、いつの間にか眠ってしまった。
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