文字の大きさ
大
中
小
315 / 502
第三部 12章
スキルを生かし切れない男
その後はすんなりとレシピ登録が終わり、ホイップフラワーの買い取り強化についてジィジとギルマスが真剣に商談。
ギルマスは天狐に決めポーズ付きでアピールをしてから去って行った。
仕事はできる人なのに天狐に対する発言が残念すぎる……
◇ ◆ ◇
翌日のお昼すぎに冒険者ギルドに向かうと、何故かすぐに応接室に案内された。ジィジも天狐も一緒じゃないのに……
ソファに座って待っていると、紫がかった肌の細身の男性が入ってくるなり、「来てくれて助かった。キミ達を探してたんだ」と発言。
特に心当たりのない私達は顔を見合わせる。
「探していたとは? どういったご用件でしょうか?」
「あぁ、そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。もう一人来るから、話しはそれからにしよう。飲み物は薬草茶でいいかな?」
ジルが警戒を露わにすると、男性はおおらかに返してきた。
〈いらん。ギルドマスターが何の用だ〉
「あれ? 僕を知ってる? あんまり表に出ないんだけどな……」
グレンは鑑定したみたいだけど、相手はギルマスなのに警戒している。
しかも何故か私はグレンの手で目隠しされ、部屋の様子がわからなくなってしまった。
グレンがギルマスだと言った男性は、二十代半ばくらい。肌は薄紫色、爽やかなビジネスマンみたいな髪型で、髪の毛は黒色、瞳は濃いピンク色。切れ長の目がちょっとセクシー。スラリとした体型であまり筋肉がついているようには見えない。乱暴な冒険者もいるのに、その点だけはちょっと意外だ。
ヤバそうに見えないし、モヤモヤもしないんだけど……何でそんなに警戒するのか……っていうか何で目隠し?
「グレン、見えないよ~。取って?」
〈ダメだ。こいつは……とりあえずダメだ〉
ダメって二回も言った……!
そんなに嫌がる理由は何だろうと気配を探って鑑定をかけてみる。
(うわっ! マジか! 種族が吸血族でスキルが魅了とかヤバいじゃん! しかも対女限定の魅了なんて……グレンが警戒する理由がわかったわ……)
私はパパ達が耐性バッチリにしてくれたから魅了は効かないと思うけど……見なかったことにしよう! 性格知らないのに偏見はよろしくないからね。私は何も知りません!
そう決めたのに、吸血族ってコウモリに変身できるのかな? 食事は血だけなのかな? なんて考えていると、部屋にノック音が響いた。
「お待たせ……ってどうかしたのか?」
「ちょうどよかった。ちょっと誤解されているみたいなんだ。まぁ、ソファに座ろうか」
聞こえてきた声から、入ってきたのはおじさんだと思われる。
ギルマスとおじさんの気配が向かいのソファに移動すると、グレンの手に少し力が入った。
「えっと……まず、キミ達が知っている通り、僕はこの冒険者ギルドのギルドマスター、アランね」
「オレはサブマスのベンジーだ。アランのことを知ってるとは驚きだな。そこの兄ちゃんがその子の目を塞いでるっつーことは種族も知ってるんだな?」
〈…………〉
「そんな睨まなくても大丈夫だ。こいつは誰かれ構わずにスキル使ったりしねぇよ。っつーか、アランは女が苦手で近付けねぇんだよ。ブルブル震え出す」
「ベンジー!?」
「話した方がいいと思うぞ。さっきから兄ちゃんの威圧がやべぇ」
いつの間にかグレンが威圧していたらしい。グレンの服を引っ張って止めさせる。
「……昔、しょっちゅう姉達に無理矢理女性の格好をさせられて、笑いものにされたんだ。おかげで女性全般、苦手……いや、怖いからなるべく近付きたくもない。さすがにその子のように子供は大丈夫だけど、僕は子供に魅了スキルをかけたりしないよ。と、言うよりも魅了スキルを使ったことないし、僕にとってはいらないスキルなんだよ……」
思い出したのか暗い声でギルマスが語ると、グレンは〈本当か?〉と確かめた。
さらに、ジルが「神に誓えますか?」と念を押すと、ギルマスは「もちろんだよ」と即答。するとようやくグレンの手が外された。
「えっと……嫌なこと思い出させちゃってごめんね?」
悲しそうなギルマスと目が合い謝ると、「大丈夫……」と小さな声で返ってきた。
うん。全然大丈夫じゃないね! 怖いって相当なトラウマだよね!
その傷には触れない方がよさそうだと、四十代だと思われるサブマスに質問を投げかける。
「私達に何か用なの?」
「あぁ。三日前にダンジョンで冒険者を助けたっつーのはあんたらだろ? そんときに異変がなかったか?」
「異変? 途中で雪は降ってきたけど……あ! ボスが初級ダンジョンにしては強かったけど、そのこと?」
「いや、それも気になるが……今日あんたらに助けられたっつーパーティから、あったけぇ池が現れたって聞いたんだよ。で、あんたらがダンジョンクリアしていたって聞いてな、知ってるか聞きたかったんだ。ダンジョンに異変が起きたなら調べなきゃなんねぇからな」
「あぁー……」
ごめん! それ、私のせい!
グレンとジルから「どうする」と念話が飛んできた。
調べるとか申し訳ないから言うしかないよね……
「えっとね……それ、セーフティエリアでしょ? 私がお風呂に入りたくて作ったんだよね。湯の花露天風呂」
「は!?」
「寒いから温まりたくて。ダンジョンだから元に戻るかなって放置しちゃっただけで、異変とかじゃないよ。ちなみにボスの続き部屋にも作っちゃった。ごめんね?」
「「…………」」
「直した方がよければまた行くけど……」
驚きに目を見開く二人に言うと、サブマスにため息をつかれた。
「いや、いい。ダンジョン内に作るなんて……不思議な女の子だって聞いちゃいたが……本当か?」
「え、うん。ダンジョンの中は寒かったから、もう冷めてるかもしれないし、地面も元通りに戻ってるかもしれないけど」
サブマスはチラりと本棚を見て、「そうか……」と再びため息を吐いた。
「本当みてぇだな。悪いが試させてもらった」
「その石?」
「気付いてたのか?」
「いや、今さっき見て確認してたからそうなのかなって思っただけ」
「……あれは嘘玉。簡単に嘘を見分けるためのものだ。嘘をつくと赤く光る」
「へぇ~。そんなもの使わなきゃいけないなんて大変だね。今日グレンはおやつ抜き!」
〈な!?〉
「あ! ホントだ! 白だったのにちょっと赤くなった!」
〈セーナー〉
「ごめん、ごめん。ちょっと実験したかったんだけど、思いついたのがあれだったの。パンあげるから機嫌直して?」
〈むむむ……我のは特別なおやつだぞ!?〉
「わかった。何か考えとくね」
スペシャルデザートを求めたけど、今ジャムパンも食べるらしく、出したパンはサッとグレンに奪われた。
「ふふっ」
「ははっ!」
笑い声にギルマス達の方を向くと、何故か二人して笑っている。
何か面白いことあった?
感想 1,825
あなたにおすすめの小説
親に放置された四歳の末娘ですが、前世の知識で家のお金の使い込みを見つけて追放されました〜もふもふ聖獣と、おいしいものを食べる旅に出ます〜
子爵家の末娘リリア、四歳。家族の誰にもかまわれず、屋敷のすみで育ちました。
でも私には、前の人生の記憶があります。数字を見ると、勝手に計算してしまうんです。
ある日、お父様の帳簿のお金の使い込みを、うっかりその場で言ってしまいました。
返ってきたのは「出来損ない」の一言と、追放でした。持たされたのは銅貨23枚だけ。
いいでしょう。それなら、この銅貨23枚を開業資金にします。
森で助けた銀色のもふもふな子犬のフェンと一緒に、つぶれかけのお店を立て直しながら、おいしいものを食べる旅に出ます。
つぶれかけのパン屋さんは村一番の人気店に。ガラクタだらけの雑貨屋さんは町一番のお店に。
私はただの経理顧問。なのに、まわりが勝手に大騒ぎしていきます。
え? 今さら「家がつぶれそうだからお金を何とかして」?
……ふふ。数字は、うそをつきませんよ。
※本作は、既存作品を全面的に改稿(リライト)した作品です。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
結婚式の夜に愛人を連れてきたので、署名せずに帰ります
結婚式の夜、夫となったはずの侯爵さまが、披露宴の席に愛人を連れてまいりましたの。
「彼女も今日からこの屋敷に住む。君は正妻なのだから、寛大に受け入れるように」ですって。
義母は「騒げば恥をかくのはあなたよ」と微笑むし、お客さまたちは見て見ぬふり。まあ、皆さまそろって、なし崩しにするおつもりですのね。
けれど、おあいにくさま。この国の結婚は、式を挙げただけでは成立しませんのよ。婚姻誓約書に夫婦双方が署名し、三日以内に神殿へ納めて、はじめて夫婦。
――そしてわたくし、まだ署名しておりませんの。
既成事実は、事実ではございませんのよ。
捨てられた赤ちゃんを拾ったら、創世神様でした。世界を救うより、お父さんを幸せにしたいそうです
山で捨てられていた赤ちゃんを拾い、家族として育てることを決めた青年。
その日から、枯れた大地は実り、病は癒え、伝説のもふもふ神獣たちが次々と家へ集まってくる。
実はその赤ちゃんの正体は、この世界を創った創世神だった。
「いっぱい育ててくれてありがとう。今度は私がお父さんを幸せにする番だよ。」
これは、神様が初めて手に入れた”家族”との、優しくて温かな奇跡の物語。
夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。
七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!!
初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。
2024年5月 書籍一巻発売
2025年7月 書籍二巻発売
2025年10月 コミカライズ連載開始
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
側妃を紹介されたので、その婚約はお断りいたします
公爵令嬢ヴィオレッタは、王子の婚約披露の日に、もうひとりの令嬢を「側妃に」と紹介された。
逆らってはいけない――そう信じて微笑んだわたくしは、濡れ衣を着せられ、お腹の子を奪われ、雪の離宮でひとり息を引き取った。
けれど目を開けると、そこはあの婚約披露の日。時間が、巻き戻っていた。
今度は、飲み込まない。今度は、微笑まない。
前の生で覚えた数字も、罠も、あの女の手口も、ぜんぶ覚えている。
「その婚約、謹んでお断り申し上げます!」
涙を武器にする令嬢に、二度は負けない。そして――誰も見ていないと思っていた場所で、ずっとわたくしを見ていた騎士がいた。
これは、運命に流されるだけだったわたくしが、自分の人生を"選び直す"物語。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。