352 / 533
第三部 12章
スキルを生かし切れない男
しおりを挟むその後はすんなりとレシピ登録が終わり、ホイップフラワーの買い取り強化についてジィジとギルマスが真剣に商談。
ギルマスは天狐に決めポーズ付きでアピールをしてから去って行った。
仕事はできる人なのに天狐に対する発言が残念すぎる……
◇ ◆ ◇
翌日のお昼すぎに冒険者ギルドに向かうと、何故かすぐに応接室に案内された。ジィジも天狐も一緒じゃないのに……
ソファに座って待っていると、紫がかった肌の細身の男性が入ってくるなり、「来てくれて助かった。キミ達を探してたんだ」と発言。
特に心当たりのない私達は顔を見合わせる。
「探していたとは? どういったご用件でしょうか?」
「あぁ、そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。もう一人来るから、話しはそれからにしよう。飲み物は薬草茶でいいかな?」
ジルが警戒を露わにすると、男性はおおらかに返してきた。
〈いらん。ギルドマスターが何の用だ〉
「あれ? 僕を知ってる? あんまり表に出ないんだけどな……」
グレンは鑑定したみたいだけど、相手はギルマスなのに警戒している。
しかも何故か私はグレンの手で目隠しされ、部屋の様子がわからなくなってしまった。
グレンがギルマスだと言った男性は、二十代半ばくらい。肌は薄紫色、爽やかなビジネスマンみたいな髪型で、髪の毛は黒色、瞳は濃いピンク色。切れ長の目がちょっとセクシー。スラリとした体型であまり筋肉がついているようには見えない。乱暴な冒険者もいるのに、その点だけはちょっと意外だ。
ヤバそうに見えないし、モヤモヤもしないんだけど……何でそんなに警戒するのか……っていうか何で目隠し?
「グレン、見えないよ~。取って?」
〈ダメだ。こいつは……とりあえずダメだ〉
ダメって二回も言った……!
そんなに嫌がる理由は何だろうと気配を探って鑑定をかけてみる。
(うわっ! マジか! 種族が吸血族でスキルが魅了とかヤバいじゃん! しかも対女限定の魅了なんて……グレンが警戒する理由がわかったわ……)
私はパパ達が耐性バッチリにしてくれたから魅了は効かないと思うけど……見なかったことにしよう! 性格知らないのに偏見はよろしくないからね。私は何も知りません!
そう決めたのに、吸血族ってコウモリに変身できるのかな? 食事は血だけなのかな? なんて考えていると、部屋にノック音が響いた。
「お待たせ……ってどうかしたのか?」
「ちょうどよかった。ちょっと誤解されているみたいなんだ。まぁ、ソファに座ろうか」
聞こえてきた声から、入ってきたのはおじさんだと思われる。
ギルマスとおじさんの気配が向かいのソファに移動すると、グレンの手に少し力が入った。
「えっと……まず、キミ達が知っている通り、僕はこの冒険者ギルドのギルドマスター、アランね」
「オレはサブマスのベンジーだ。アランのことを知ってるとは驚きだな。そこの兄ちゃんがその子の目を塞いでるっつーことは種族も知ってるんだな?」
〈…………〉
「そんな睨まなくても大丈夫だ。こいつは誰かれ構わずにスキル使ったりしねぇよ。っつーか、アランは女が苦手で近付けねぇんだよ。ブルブル震え出す」
「ベンジー!?」
「話した方がいいと思うぞ。さっきから兄ちゃんの威圧がやべぇ」
いつの間にかグレンが威圧していたらしい。グレンの服を引っ張って止めさせる。
「……昔、しょっちゅう姉達に無理矢理女性の格好をさせられて、笑いものにされたんだ。おかげで女性全般、苦手……いや、怖いからなるべく近付きたくもない。さすがにその子のように子供は大丈夫だけど、僕は子供に魅了スキルをかけたりしないよ。と、言うよりも魅了スキルを使ったことないし、僕にとってはいらないスキルなんだよ……」
思い出したのか暗い声でギルマスが語ると、グレンは〈本当か?〉と確かめた。
さらに、ジルが「神に誓えますか?」と念を押すと、ギルマスは「もちろんだよ」と即答。するとようやくグレンの手が外された。
「えっと……嫌なこと思い出させちゃってごめんね?」
悲しそうなギルマスと目が合い謝ると、「大丈夫……」と小さな声で返ってきた。
うん。全然大丈夫じゃないね! 怖いって相当なトラウマだよね!
その傷には触れない方がよさそうだと、四十代だと思われるサブマスに質問を投げかける。
「私達に何か用なの?」
「あぁ。三日前にダンジョンで冒険者を助けたっつーのはあんたらだろ? そんときに異変がなかったか?」
「異変? 途中で雪は降ってきたけど……あ! ボスが初級ダンジョンにしては強かったけど、そのこと?」
「いや、それも気になるが……今日あんたらに助けられたっつーパーティから、あったけぇ池が現れたって聞いたんだよ。で、あんたらがダンジョンクリアしていたって聞いてな、知ってるか聞きたかったんだ。ダンジョンに異変が起きたなら調べなきゃなんねぇからな」
「あぁー……」
ごめん! それ、私のせい!
グレンとジルから「どうする」と念話が飛んできた。
調べるとか申し訳ないから言うしかないよね……
「えっとね……それ、セーフティエリアでしょ? 私がお風呂に入りたくて作ったんだよね。湯の花露天風呂」
「は!?」
「寒いから温まりたくて。ダンジョンだから元に戻るかなって放置しちゃっただけで、異変とかじゃないよ。ちなみにボスの続き部屋にも作っちゃった。ごめんね?」
「「…………」」
「直した方がよければまた行くけど……」
驚きに目を見開く二人に言うと、サブマスにため息をつかれた。
「いや、いい。ダンジョン内に作るなんて……不思議な女の子だって聞いちゃいたが……本当か?」
「え、うん。ダンジョンの中は寒かったから、もう冷めてるかもしれないし、地面も元通りに戻ってるかもしれないけど」
サブマスはチラりと本棚を見て、「そうか……」と再びため息を吐いた。
「本当みてぇだな。悪いが試させてもらった」
「その石?」
「気付いてたのか?」
「いや、今さっき見て確認してたからそうなのかなって思っただけ」
「……あれは嘘玉。簡単に嘘を見分けるためのものだ。嘘をつくと赤く光る」
「へぇ~。そんなもの使わなきゃいけないなんて大変だね。今日グレンはおやつ抜き!」
〈な!?〉
「あ! ホントだ! 白だったのにちょっと赤くなった!」
〈セーナー〉
「ごめん、ごめん。ちょっと実験したかったんだけど、思いついたのがあれだったの。パンあげるから機嫌直して?」
〈むむむ……我のは特別なおやつだぞ!?〉
「わかった。何か考えとくね」
スペシャルデザートを求めたけど、今ジャムパンも食べるらしく、出したパンはサッとグレンに奪われた。
「ふふっ」
「ははっ!」
笑い声にギルマス達の方を向くと、何故か二人して笑っている。
何か面白いことあった?
1,139
あなたにおすすめの小説
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
4/10コミック1巻発売!【完結】魔王様、溺愛しすぎです!
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
2026/01/20追記
『魔王様、溺愛しすぎです!』のコミカライズ情報、解禁となりました!
TOブックス様から出版、1巻が4/10発売予定です。
キャラクターデザインに『蒼巳生姜(@syo_u_ron)』先生! 以前表紙絵をお願いした方です(*ノωノ)
漫画家は『大和アカ(@asanyama)』先生です° ✧ (*´ `*) ✧ °
連載については改めて発表させていただきますね_( _*´ ꒳ `*)_
「パパと結婚する!」
8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!
拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。
シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264)
挿絵★あり
【完結】2021/12/02
※2026/01/20 1巻発売日(4/10)発表!
※2025/12/25 コミカライズ決定!
※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過
※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過
※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位
※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品
※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24)
※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品
※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品
※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。