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13章
筋肉肉肉肉
しおりを挟む仕事帰りで疲れているガルドさん達を癒してもらおうと、タルゴー商会のマッサージ店に連れて行く。
「これはセナ様。いらっしゃいませ。その後の調子はいかがですか?」
「体が軽くなったよ~」
「それはようございました! 本日も受けられますか?」
「ううん。今日はこの人達をお願いしたいの。大丈夫?」
「かしこまりました。そちらの男性四名様でございますね。ただいま準備致しますので、少々お待ちいただいてもよろしいですか?」
「うん!」
受付けのお姉さんが連絡しに別棟に走っていってくれた。
そんなに急がなくても大丈夫なのに……
「おい、セナ。ここは何の店だ?」
「ここ? ここは〝気持ちいい〟お店だよ」
「は?」
「ふふふ。大丈夫、大丈夫!」
ガルドさんから〝何を企んでる〟って目を向けられた私は笑って誤魔化す。
ガルドさんが何か言おうとしたタイミングで、受付けのお姉さんがガタイのいい屈強なお兄さんを連れて戻ってきた。
「お待たせ致しました。こちらの者がご案内致します」
「おい……」
「大丈夫、大丈夫! このお兄さんに付いて行って! 多分気に入るから! お兄さんお願いします」
「はい」
「うぉっ!」
私はゴリゴリマッチョのお兄さんに動かなさそうなガルドさんお願い。するとお兄さんはガルドさんをお姫様抱っこした。
「んな!? 何してんだ! 降ろせ!」
「危ないので、暴れませんようお願いします」
「だから降ろせって!」
「皆様も同様にお連れしますか?」
騒ぐガルドさんが大して暴れないことがわかったのか、お兄さんはガルドさんには答えずに、ジュードさん達に問いかけた。
「いやいやっ! オレっち達は自分で行くよ!」
「は、はい。自分達も歩けますので!」
「……うん。大丈夫」
ブンブンと首を左右に振ってジュードさんは拒否。それに続いてモルトさんもコルトさんも否定した。
「そうですか。ではご案内します」
お兄さんが前を向いて歩き出すと、ジュードさん達は揃って「ふぅ」と息を吐いた。
「いかがしました? お疲れなら……」
「「!」」
「いやいやいやー! 大丈夫だよー!」
進んでいたお兄さんが振り返ると、ジュードさん達は慌てて断った。
お姫様抱っこは嫌らしい。
ガルドさん達が別棟に移動するのを見届けは私は、受付けのお姉さんに向き直った。
「じゃあ、夕方くらいに迎えにきますね」
「かしこまりました。フルコースで対応致します」
フルコースがわからないけど、言葉の感じから疲れが取れそう。タルゴー商会関係はサービスが素晴らしい!
料金を支払って、私達はマッサージ店を後にした。
エルミスが何かあったときのために残ってくれている。
これでガルドさん達の疲れが取れてくれたらいいな!
◇
もうお昼をすぎているため、全員分の肉祭りのことを考えると時間が惜しい。私は人手欲しさにキヒターの教会へ飛んだ。
パパ達がマップに印を付けてくれたため、一発で来られた。
ただ、一発だったせいか、ちょうど玄関前をホウキで掃いていたキヒターに目を丸くされた。
「女神様!?」
「ふふっ。初めてキヒターを驚かせられたね」
私が微笑むと、キヒターは悔しいのかプクーっと頬を膨らませた。
「ふふふ。キヒター、手伝ってもらいたいんだけどいい?」
「……はい! 何をすればいいですか?」
私にお願いされるのが嬉しいらしく、途端にパッと顔を輝かせる。
夜ご飯の準備を手伝って欲しいことを伝え、みんなでゾロゾロと動き出した。
正面は微妙かなと教会の裏で設営準備。
グレウスに大きな竈を作ってもらい、大鍋を三つセット。
ウェヌスも呼んで全員に手伝ってもらう。
肉祭りというからにはメインはお肉。でもそれだけだと健康によろしくないので同時に野菜も食べてもらいたい。
ジル、プルトン、ウェヌスがイグアナのお肉を切っている横で私が野菜をポンポンと取り出すと、グレンから〈むむ〉と唸る声が聞こえてきた。
〈肉じゃないのか?〉
「野菜も食べなきゃ」
〈肉を多くな!〉
「ふふっ。はいはい。グレンも手伝ってね」
〈肉ならいいぞ!〉
鍛冶ができるグレンは手先が器用なので、お肉の串打ちをお願い。「ネギマにしてね」と頼むと、ちょっと不満そうだった。
私は野菜をザク切りにした後、キヒターとクラオルに作ってもらったひき肉で団子を作る。
眉を寄せてせっせと串打ちするグレンを見てみると、各串にネギは一つずつ。圧倒的に肉の配分が多いけど、ネギを刺してない串はなかった。
途中からパトロールに行っていたシュティーとカプリコも手伝ってくれたけど、準備に時間がかかってしまい、あっという間に迎えに行く時間。キヒター達には待っていてもらい、一度ピリクの街に戻る。
マッサージ店を尋ねると、ガルドさん達は何やら様子が変だった。
入り口近くの休憩所でボーッとお茶を飲んでいるガルドさん達に話しかける。
「待たせちゃった?」
「あぁ……セナか……」
「大丈夫?」
「……一応な。念の為聞くが、わざとではないんだよな?」
「何が? ガルドさん達に疲れを取ってもらいたかったんだけど……」
ガルドさんは遠い目をしながら「そうか……」とだけ呟いた。
大丈夫かな? マッサージ気に入らなかったとか? グレンもジルもまたやりたいって言ってたのに……
「ご飯食べる元気ない??」
私が聞くと、ガルドさん達四人のおなかが揃ってグゥグゥと訴え始めた。
「ふふっ。よかった。準備したから行こ?」
座っているガルドさんの手を引っ張って立ち上がらせる。
おなかが鳴いたせいか、みんなは少し元気が出たみたい。
揃って宿に戻り、私の部屋から再びキヒターの教会まで飛んだ。
「今日のご飯はイグアナドンフェアです!」
教会裏まで案内して、準備した数々を見せると、ガルドさん達は目を見開いた。
「なんだこりゃ……」
「まずは~、焼肉! で、これが肉団子のホワイトシチュー、唐揚げ、天ぷら、ハンバーグ、ステーキ、ピリ辛炒め、……」
「ちょ、ちょっと待て。こんなに作ったのか?」
「うん! みんなで食べたくて」
ガルドさんにえへへと締まりのない笑顔を見せると、「ありがとな」と頭を撫でられた。
今日はテーブルには料理のお皿を並べてブッフェスタイル。
いただきますをして食べ始めると、ガルドさん達はすぐにおかわりに走っていった。
少し落ち着いたころ、ガルドさんにマッサージ店で何があったのか聞いてみた。
「最初はな、まだよかったんだよ……」
ガルドさん達が個室に入ると、男性が待っていて、その人に泥マッサージをしてもらったんだそう。
泥マッサージは気持ちよくてジュードさん以外は眠ってしまったらしい。
起こされ、終わりかと思ったら、施術者が交代。
案内したようなゴリゴリマッチョに〝身体を伸ばす〟という名目で、ベタベタ触られたんだって。
「身体伸ばすためなのかわからんが……すげぇ密着してくるんだよ。しかも話すときは真面目に耳元で喋りやがる。それが二時間以上続いたんだぞ……ずっと男に抱きしめられてる気分だった……」
「そうなの? フルコースって言ってたから私と違うマッサージメニューだったのかも……ごめんね?」
私が謝ると、マッサージ自体は気持ちよかったから、次頼むならストレッチなしがいいと頭を撫でられた。
ガルドさん達はご飯を食べ進めるにつれて元通りに復活。
一応、疲れは取れたみたい。
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