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13章
絶好調の商会長
しおりを挟むグレンが風邪を引かないように、念の為続き部屋で一泊することにした。
前にダンジョンに露天風呂を作ったときは問題になっちゃったから、コテージのお風呂に入ってもらう。
体の中から温まれるようにご飯も生姜をたっぷり使ったスープ。
グレンのには辛味酒も入れたのに、くっ付いていると温かいとの理由で眠るときに抱き枕にされたよ……
◇ ◆ ◇
ダンジョンを出て街へ戻ると、門のところにタルゴーさんが待ち構えていた。
「セナ様、おかえりなさいませ!」
「ただいま。……もしかしてずっと待ってたの?」
「いえ。そろそろ戻られる予感がいたしましたの!」
「なるほど……」
今日もタルゴーさんのお仕事アンテナは絶好調だったらしい……
「タルゴーさんに頼まれていたネギ草はいっぱい採ってきたよ」
「まあ! 流石セナ様ですわ! ありがとうございますわ! お疲れでなければこのまま商会へ来ていただきたいですわ!」
「わかった。ただ、ラゴーネさんの宿に戻ってきたことを伝えに行ってもいい?」
「ご心配には及びませんわ!」
「え?」
「セナ様が戻られたのがわかった時点で使いを走らせましたわ!」
マジか……流石タルゴーさん抜かりない……
そうまでされたらこのまま行くしかないよね。
ただ今回、私達は馬車で帰ってきた。
タルゴーさんだけ歩かせるのは申し訳ない。でもタルゴーさんの場合、この馬車の中に興味を持たれそうな気がするんだよね……いや、外もか。振動がないから構造もだね。
ガイ兄と一緒に作ったからなんとなくはわかるんだけど……パパ達がいじった中の細かい部分まではわからないし、上手く説明できる気がしない。購入したわけじゃないから誤魔化すしかない。
門前は人が多いので、一度冒険者ギルドの馬車置き場に寄って馬車をしまう。
それを見ていたタルゴーさんに「セナ様のマジックバッグは容量が大きいのですわね!」と感動された。
「あんまり馬車をしまう人っていないの?」
「なかなかおりせんわ! 貴族は基本的に馬車移動なのでしまう必要がありませんし、商人は荷物を積んでいますわ。それらが全て入るマジックバッグを持っている人はそんなにおりませんもの。冒険者はそもそも馬車を持っていることの方が珍しいですわ」
「マジか……」
一応出し入れは気を付けてたけど、これからはもっと人目を避けた方がよさそう。
街に入る前は馬車じゃなくて、グリネロに乗せてもらった方がいいかもしれない。
商会に着くと、そのまま応接室に案内されそうになったので、倉庫に連れて行ってくれるように頼んだ。
商会のスタッフが遠巻きに見ている中、ニラとネギの束を出していく。
自分達が消費する分を考えて半分ほど。それでも、売る分だけで倉庫の半分を埋めるくらいの山になった。
「これくらいでいい?」
「まあ! セナ様! こんなにたくさんよろしいんですの!?」
「うん。大丈夫だよ」
必要な分は抜いてあることを伝えると、タルゴーさんはさらに目を輝かせた。
「一応、十本ずつまとめてあるよ」
「んまああ! とても助かりますわ! セナ様は本当にお優しいんですのね……」
別に優しくはないと思うんだけど……
タルゴーさんは何故か感動したみたい。
応接室にはすでに砂糖コーティングクッキーやベビーカステラ、ナッツパンにドライフルーツパン。さらにフルーツまで用意されていた。
商会に着いてから別行動をしていたダーリさんが準備していたらしい。
「お好きなだけお召し上がりください」
「遠慮は無用ですわ!」
ダーリさんとタルゴーさんに言われたグレンは早速パンに手を伸ばした。
「あの……セナ様。新しいスライムはどのようなものに使えますの?」
少しモジモジとタルゴーさんに聞かれ、真の目的はコレかと理解した。
「あー……まだ実験してないんでわかんないの。ごめんね」
「いえいえ! 今日お戻りになられたばかりですものね。申し訳ございませんわ」
シュンと肩を落とすタルゴーさんは相当スライムに期待していたみたい。
「でも多分使えるものだと思うよ」
「まあ! そうですのね! 早速買い取りを強化致しますわ!」
タルゴーさんは言うなり、サッと立ち上がって、指示を出しに行ってしまった。
貴族なのにこういうときは自分で伝えに行っちゃうのがタルゴーさん。
執事としての仕事を奪われたダーリさんはタルゴーさんが出て行ったドアを見つめ、苦笑いを零す。
「……申し訳ございません」
「大丈夫だよ」
「こちらをどうぞ」
「ありがとう。あ、そうだ。タルゴーさん達はいつ出発するんですか?」
おかわりの紅茶を淹れてくれたダーリさんに思い付いた質問を投げかける。
「そうですね……奥様のあの様子ですと二、三日は滞在を伸ばすかと思います」
「その間護衛さん達はどうしてるの?」
「彼らもそのまま延長させてもらうことになります。セナ様が出発した後その話になりましたので。どうかなさいましたか?」
「いいものが手に入ったからおすそ分けしようかなって思って」
「それはお喜びになるかと思います。お呼び致しますか?」
「今日はまだ準備ができてないから……出発までに一回会えるようにしてもらえると嬉しい」
「かしこまりました。伝えておきます」
ダーリさんは私にニッコリと微笑んだ後、グレンが空にしたお皿に追加でパンやベビーカステラを出してくれた。
ダーリさんと話しているとタルゴーさんがテンション高く戻ってきた。
「セナ様! 今面白い情報が耳に入りましたわ!」
ドアを開けてそう言い放つタルゴーさんの息は切れていて、走らないまでも急いで戻ってきたことが一目瞭然だった。
ダムが決壊したように話すときは息切れしないのに、さしものタルゴーさんも競歩ばりの早歩きは疲れるらしい。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫、ですわ……そんなことより! 北北東にある森でシノノラーが目撃されたそうですわ!」
「しのの?」
「シノノラーですわ! シノノラー!」
そんな魔物いたっけ?
図鑑に載っていた記憶がなくてジルを見ると、首を傾げているジルと目が合った。
わかっていない私達に、遭遇すると幸せをくれる妖精だとエルミスが教えてくれた。
前に〝女神に愛される〟って言われている雨の日限定のレニーレムマッシュをグレンが狩ってきてくれたけど、それとは異なり、実際に何かしらくれる妖精だそう。
それは貴重な宝石だったり、薬草だったり、食べ物だったりとバラバラ。ただ、その人にとっていいものなんだって。
ネギとニラの精算をしても興奮が治まらないタルゴーさんの勢いに負け、お昼ご飯をご馳走になった私達はラゴーネさんの宿に向かう。
「よろしかったのですか?」
「あれ止められなくない? それに私も見てみたいってのもある」
「そうですね……」
「あぁー!! ちょっとアンタ!」
お昼すぎの賑わう通りに、女の子の咎めるような声が響き渡った。
--------キリトリ線--------
お待たせしてすみません。
少し体力の限界がきたようで……一週間ほど三日に一回更新へと変更させていただきたいと思います。
その後は体調をみて戻していきたいと思っております。
楽しみにしていただいている読者様には大変申し訳ありませんが、ご了承いただきますようお願い申し上げます。
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