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13章

ごちゃ混ぜダンジョン【3】

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 結局、ジルが実験に使いたいとこのことでネズミも狩ることになって、大量のネズミのしっぽをゲット。
 第二十二階層も難なく進み、第二十三階層でセーフティーエリアを発見したので一泊した。

 第二十四階層でこのダンジョン初の隠し部屋をネラース達が発見。宝箱の中はシソ。溢れんばかりの赤じそと大葉が入っていた。
 和風ハンバーグや大葉餃子、赤じそジュースが作れると喜んだ私に、ジルから「こちらは普通に売っているのを見かけました」とお知らせが入った。
 早く言ってくれれば買ったのに……まぁ、タダで手に入ったからいいよね!

 第二十五階層は十階層ぶりのボス部屋だった。
 扉を開けていないのに既に中から何やらバキバキと木をへし折るような音が漏れている。

「何か嫌な予感がするんだけど……何この音……」
〈入ってみればわかる!〉
「そりゃ見たらわかるけど、こんな音が聞こえることなかったじゃん」
〈行くぞ!〉

 森タイプであまり思うように戦えてなかったグレンはすぐにでも戦いたいらしい。
 私の話を聞かず、扉を開いた。
 音にビビったけど、中にいたのは十匹ほどの迷彩柄の蟻。それが壁際に生えている木をかじっていた音だったみたい。

〈セナ!〉
「倒していいよ~」

 ハジける笑顔で名前を呼ぶグレンの意図を理解した私が言うと、グレンは〈手を出すなよ!〉とネラース達に命令してから突っ込んで行った。
 グレンは大剣を軽々と振り回して、みるみるうちに蟻達を粉砕していく。

「わーお」
「流石グレン様。仕事が早いですね」
「(仕事って言うか……趣味に近い思うよ……)」

 ジルがグレンに憧れの眼差しを向けているのを見て、小声で呟いてしまう。
 すると、クラオルに『ふふっ』と笑われた。聞こえてたみたい。

〈終わった〉
「ありがとう」

 戻ってきたグレンはまだ狩り足りないらしく、ちょっと不満そうな顔をしている。
 グレンはこのダンジョンに出てくる魔物が弱すぎるって言うけど、他の冒険者からしたらそこそこ強い部類に入るんじゃないかな?
 十階層のボス部屋以降他の人を見ていない。十九階層のセーフティーエリアとかニラとネギ刈りにもってこいだもん。

 中級ダンジョンって聞いてたから、ここで終わりなのかと思ったら、続き部屋に下層へ降りる階段があった。
 続き部屋でお昼ご飯を食べ、第二十六階層へ進む。


 スライムだけの階層、ゴブリンとコボルトの階層、巨大ハエや蚊の階層……と魔物に関しては魅力的な階層はなかったけど、ダンジョンに自生しているネギ・ニラは数種類手に入った。

 まさかこの世界で芽ネギまであるとは思ってなかった。
 ジルいわく、細いからって思われててあんまり収穫されないし、育てている人もいないそう。
 お寿司系しか使い道ないって思ってたけど、みんなに協力してもらっていっぱい収穫しちゃったから、レシピアプリで調べないと。特になかったら、ぶっかけうどんのトッピングで使えばいいよね!


 収穫に時間をかけて進み……第三十階層はボス部屋だった。
 部屋の中央にどデカい木が三本植わっている以外に魔物が見当たらない。

〈なんだイッタリーナサカマツか〉
「イッタリーナサカマツ?」
〈この木の魔物だ〉
「……あぁ! 何か見たことある気がするなって思ったのは松の木だからか!」

 日本でお馴染みの松の木とはちょっと違ってすぐにはわからなかった。
 言われると針みたいな葉っぱがそんな感じだね。
 今回はグレンが真ん中のどデカいの、ネラース達が両サイドの松の木を狩るらしい。
 私とジルは入り口近くで見守る。

 近付くとそうで、グレン達は離れた位置から魔法を叩き込んで、ダメージを与えてから攻撃していく。

「イッタリーナサカマツはBランクの魔物ですが、グレン様が戦っておられるのはAランク以上だと思います」
「そうなんだ。手伝……わなくても大丈夫そうだね」
「そうですね……余裕に見えます」

 グレンは笑顔だし、ネラース達は笑いながら……みんな楽しそうに攻撃を繰り出している。
 ドロップ品の宝箱を回収して続き部屋に向かおうとすると、プルトンの声が離れた場所から聞こえた。

《セナちゃーん! ここに何かあるわよー!》

 私達がプルトンの下に集合すると、プルトンは《ここ、ココ》と木を指差した。
 そこはボス部屋の周囲を囲うように生えている木の幹が五本ほど合体しているように見える。
 よくよく調べると、魔石が埋め込まれていた。
 その魔石に魔力を流すと、木に光のラインが。ラインがドアのような模様を描くと、一度強めに発光した後、完全にドアと化した。

「わお! 何これ!」
〈ほう……面白い〉

 初めての出来事にワクワクしてくる。
 通常の続き部屋への入り口と別のドアがボス部屋に存在することがあるなんて、パパ達からの刷り込み情報にもない。

「早速!」
あるじはグレンの後ろだ》
「むぅ……」

 エルミスに抱えられ、私が頬を膨らませるとエルミスにクスクスと笑われた。
 クラオルとプルトンにまで《危ないわ》なんて言われてしまった。

 グレンがウキウキとくだんのドアを開ける。
 みんなで覗き込むと、ドアの先は細い通路になっていた。
 ボス部屋は草原型だったけど、通路は洞窟型。暗くて、先が見えない。

 【ライト】を付けて進んだ先は少し開けていて、花が咲き乱れる小さな広場になっていた。
 ツボを抱えた二匹の黄色いが、その広場のど真ん中で寄り添うように眠っている。その黄色いからは甘~い匂いが漂ってきた。

「(あれは……)」
〈(あいつらが言っていたハニーベアだな)〉

 私が呟くと、グレンが声量を落として教えてくれた。
 マジか……私にはあの有名キャラの黄色い熊にしか見えないんだけど……おばぁちゃん……パクリはいかんよ。パクリは。

「(どうするの? 寝てるよ?)」
〈(あれが抱えているツボを奪ってからる。プルトン、アルヴィン。気配を消して取ってこい)〉
《(えぇー!? ま、いいけど)》

 プルトンとアルヴィンがそろ~っと近付いて、バッと奪って素早く離れる。
 ツボを奪い取られた熊はすぐさま目を覚まし、手元にツボがないことがわかると怒りに任せて咆哮を上げた。

「うわ……可愛くない」
〈来るぞ!〉
「へ!?」

 突如として目の前に迫ってきた熊をギリギリでかわし、距離を取る。
 すると、どこからか日本サイズの蜜蜂がわらわらと現れた。
 怒っているのか、私達の周りをブンブンと飛び回って気が逸らされる。

《ちょっと何なのよー!》

 プルトンの声に驚いてそちらを見ると、大量の蜜蜂に襲われていた。
 プルトンとアルヴィンは自身に結界を張って耐えているけど、結界内から攻撃はできない。
 何とかしないと!

〈セナ!〉
「え? うひっ!」

 グレンに呼ばれると同時に危険察知スキルが発動して、咄嗟に体が動く。
 突進してきた熊は私が張った結界の壁に勢いのままぶつかった。
 私は結界を素早く解除して急いで離れる。
(超ビビった……)
 バクバクと激しく動く心臓を落ち着けながら頭を回転させる。

「あ! 寒くするよ!」
〈は!?〉
「エルミス、アクラン! 吹雪!」
《御意》
『はいなの!』

 三人がそれぞれ氷魔法を使い、狭い広場を急速に冷やしていく。
 寒さで動きが鈍った蜜蜂は吹雪でていたので、熊の方に風魔法をお見舞いして仕留めた。
 エフェクトが出たのを確認して、急いで吹雪を止める。

〈セ、セナ……寒い……〉
「わわっ! グレンごめんね」

 ガクガクと震えるグレンに火魔法の魔力を纏わせて温める。
 ジィジの国で作って残っていた辛味酒入りスープをグレンに渡すと、グレンは 一気に煽った。

〈お! おぉ! 即効性が高いな〉

 グレンも震えが治まり、私達は熊を倒したと同時に現れた扉に進む。
 すると、その先は普通のボス部屋の続き部屋のようで、入り口へ戻る転移装置が設置されていた。
 ダンジョンの攻略が終わったみたい。

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