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15章
穢されし聖地
しおりを挟む「特に何も感じないよ?」
〈こいつを見ればわかるだろう〉
「!」
グレンが指を差したのはアデトア君。
そのアデトア君を見てわかることと言えば……合法ショタであること、左右の目の色素が異なることくらい。
ジルのスパルタ教育によって魔法の扱い方は上達したけど、そんなもん。そんなことから何がわかると言うのか……
全くわかっていないことを私の表情から読み取ったのか、グレンがヒントを出してくれた。
〈ふむ。セナはこいつの魔力を抑えるとき何か感じなかったか?〉
「うーん……薄めてたときはめちゃくちゃ気持ち悪かったけど、あれは他人だからだと思ってた。モヤモヤした感じはしなかったよ? 本当にむちゃくちゃ気持ち悪かっただけ」
〈……〉
そんな違和感なんか感じてたら、みんなに魔力を移したりしない。
気持ち悪いとハッキリ言われたアデトア君は口元をピクピクと引き攣らせている。
グレンは私からの答えが思っていたのと違ったのか、おや? と片眉を上げた。
〈ふむ。こやつそのものが呪われているわけではないから、その程度だったのかもしれんな〉
「んん? それってアデトア君が呪われてるってこと?」
「なっ……!?」
〈セナが呪いだと感知しなかったのならば正確には違うんだろう。だが、アレの影響を受けていることは間違いない〉
「影響?」
〈うむ〉
満足そうに頷くグレンを前に、アデトア君は口をパクパクとさせている。
山に封じられていたドラゴンの影響と言われても、何がどうなってアデトア君に影響があるのかさっぱりわからない。
「そんなこと一言も言っておられませんでしたよね?」
〈ん? セナに直接害が出ることはなさそうだったからな。我が気付いたのは、これの魔力に混じっていた若干の龍の気のみ。その気が知り合いの古代龍に似ていた故、確かめたかった〉
「セナ様に影響がないのですね」
少し不満そうに質問したジルはグレンの返答にホッと表情を緩めた。
ジルにとってはそこが重要なポイントなのね……
ただそれじゃアデトア君の受けた影響ってやつはわからない。
「ねぇ、グレン。なんでここに来たこともないアデトア君が影響を受けるの?」
〈ここはヴィルシル国の象徴とも言える場所だろう。さらに聖地としたことで拝み奉られている、な?〉
「……ああ。〝神に祈るのと同じように聖地に感謝を捧げよ〟と言われている」
〈だからだ。本来ならばこの火山が魔に侵される。しかし、祈りの力でわずかに相殺されたものの、行き場のなくなった負のエネルギーは別の場所へ向かった。貴様以外にも過去に魔力が多すぎて自滅した者がいただろう〉
「!」
アデトア君は心当たりがあったのか、ビクリと肩を揺らす。
「なんでそんなのわかるの?」
〈こやつから龍の気を感じた。だからその負のエネルギーが王族へ向かっていることは確かだ。こやつだけに影響が出たとは考えにくい〉
「なるほど」
〈何故アレを封じたのかは知らんが、我らが落とされた火山の周りの森もアレの影響であることは間違いない〉
「あぁ……あのジメジメの熱帯雨林ね。あそこ居心地悪かったもんね」
夜、みんながうなされていたのも堕ちたドラゴンが原因だとすれば納得してしまう。
「じゃあ、もうアデトア君は大丈夫なの?」
〈うむ。魔力の扱いやすさは格段に上がったハズだ。もう影響を受けた子供も生まれんだろう。セナに感謝するんだな〉
「私はグレンを目覚めさせたかっただけだから別に感謝はいらないよ。感謝するならグレンのおじいさんに……」
〈何を言う! こやつの魔力暴走を身を呈して止め、こやつのために魔道具も作っていただろう〉
「そりゃそうだけど……」
元々アデトア君の魔力が暴走したのはニキーダのせいだし、魔道具は教えているジルの安全性を考えた結果だ。
別に感謝されたくてやったワケじゃない。
なのにジルは「セナ様は女神のようにお優しいのです」なんて言っていて、ニキーダは「アタシのセナちゃんだもの。そうよ、感謝しなさい」とドヤ顔をアデトア君に披露している。
二人に気圧されたのか、アデトア君に「お前……いや、セナはオレだけではなく国の恩人だ。最大の感謝を」と改まった口調で言われてしまった。
ごめん、アデトア君。偶然の結果です。気まずい。こういう賛辞には慣れていない。さっさと話題を変えちゃおう。
「えーっと、グレンは知り合いかもしれないって確かめに来たワケだけど、知り合いだったの?」
〈……うむ。知り合いと言えば知り合いではあるが、アレと関わるとロクなことがない。幻で見ただけでも腹が立ったのに……〉
幻……間近で見た幻と言えば幻灯花に見させられたやつだ。
そういえばあのときグレンの機嫌めちゃくちゃ悪かったね……しかも私はブラン団長達の警備の話を聞き、ジルはスタルティと会っている。
あれはある意味正夢だったのね……
「そもそもの原因を解明しなくちゃ帰れないわ。魔に侵されたドラゴンを浄化させたけど、そのまま放置してきました。なんて言えないもの。理由がわからないにしてもあのドラゴンから聞いてからよ」
〈ム……どうしてもか? 放っておけば勝手にいなくなると思うぞ〉
「どうしてもよ。アタシが聞くからあなたは話さなくてもいいわ」
〈ムムム……〉
ニキーダのセリフを聞いた途端、グレンは渋面になってしまった。
そんなグレンは私を膝の上に抱え、グリグリと頭を擦り付けてくる。
拒否り具合が、過去にグレンに恋をしていたあの子よりも激しい。そんなに嫌がるなんてどんな人なんだろうね?
「とりあえず、下に移動しないとだよね」
小猿に任せたままだったけど、あのドラゴンはどうなってるかなと下を覗いてみたら……どうやったのか、人型のドラゴンの体が胸元まで土に埋められていた。
下剤飲まされて、おなかに刺激を与えられ、さらに土に埋められるなんて……あのドラゴンは一ミリも想像してなかったんじゃなかろうか……
「わーお……トイレに行きたくても行けないね……」
『キキッ!』
私達の視線に気付いたお猿さんが私に向かって得意気に手を振る。
それに手を振り返しつつ、無邪気って怖いなと実感した。
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