転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

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17章

閑話:【裏】領主side

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 結局、全ての説明が終わったのは夕刻近くだったため、私達は今日もサーシャさん宅に泊まらせてもらうことに。
 グレンが「セナとジュードが作ったやつがいい」なんて言い出したせいで、私とジュードさんはキッチンにお邪魔しておかず作り。食べたことがないから、しゃぶしゃぶは自分達だけのときがいいんだって。
 サーシャさんの口添えのおかげもあると思うけど、シェフ達は突然現れた私達にも優しかった。なのでお礼に簡単なドレッシングの作り方をレクチャー。レシピ登録してあるやつね。
 毎度人気のパンがいいかなって思ったんだけど、街のパン屋さんが毎朝焼き立てを運んでくれているんだって。

 夕食には男性騎士もいて、ジュードさん作のハニーマスタードチキンを「とんでもなく美味しいですね」なんて食べていた。
 帰りも一緒だったからもしかしたら食べるかなって、多めに作っておいて大正解だった。「これ、まだあったりします?」なんておかわりまでしてたから。

◆ ◇ ◆

 夕食後、サロンでゆったりと寛ぎつつ歓談していたものの、セナ達は昨日と同じく早めにそれぞれの部屋に入っていった。セナに夜ふかしさせないようにしているらしい。サーシャには肩にいる従魔がセナに注意しているように見えた。やはり従魔と意思疎通ができるらしい。
 サーシャは屋敷の者に指示を出した後、男性騎士と共に執務室へと場所を移した。

「大丈夫だっただろう?」

 そうサーシャに問いかけられた男性騎士は今日一日のセナ達の様子を思い返した。
 男性騎士が同行した目的はセナ達の監視、そしてセナ達の真の目的を探ること。
 しかし、セナ達は自分の同行を嫌がる素振りなど皆無。むしろ「付き合わせちゃってごめんね」とこちらを気遣う素振りだった。そしてギルドで突然始まったジュード達の芝居にも驚かされた。
 そう、あのときセナは「えぇっ!?」と言わんばかりに目を見開き、口をパカーンと開けて呆けていたのだ。想定外だと言わんばかりの様子に笑いそうになり、ギリギリで内頬を噛んで耐えることになった。
 あの小芝居のおかげでどういった物なのかは大変わかりやすかったが、何度か手を伸ばしていたセナは早々に口を挟むことを諦め、傍観者と化していた。彼らの関係性が垣間見れた面白い時間だった。

「……ハハッ、そうですね。今のところは」
「食事も率先して食べていたくせによく言う」
「いや~、感動するほど美味しかったですね。一応毒味のつもりだったんですけど」
「彼女達は大丈夫だ。こちらが何かしなければあちらが何かしてくることはない。それにも関係ない」
「そうだといいんですけどねぇ」
「……調べるのは構わないが、彼女達に無礼な真似はするな」
「心得てます。では、そろそろ自分も戻りますね。何かあれば呼んでください。すぐに動けるようにしておきますんで」

 一礼して退室した男性騎士を見送ったサーシャは昨日セナから渡されたアデトアからの手紙を手に取った。
 形式ばった挨拶文から始まるその手紙は「――と、いったことをすでに四通分書かされている」という一文から文言が一変する。口調が砕け、まるで旧知の仲であるかのような書きぶりに変わったのだ。
 どうも渡された手紙にはランク付けがされており、物資もそのランクによって差異があるらしい。それはセナによる采配。だが、それは大した問題ではなかった。「この手紙は書かされた中で最上級のものだ」と書かれていたし、山積みにされた木箱の量を考えれば、文面通りに最上とまではいかなくともいい方なのだろうと推測できたからだ。

――実際に会って、すでにわかっているかもしれないが、セナは風変わり……いや、変人か? とりあえず常識的なようで常識がない――

 この一文で堪らず噴き出してしまった。
 懇意にしている相手だと思っていたのだが……いや、きっと仲がいいから言える言葉なのだろう。そうは思っても、インパクトがありすぎてなかなか笑いはおさまらない。
 さらに手紙にはセナ一行の取り扱い注意点なども書き綴られており、セナ達の人となりや関係性は愉快だった。そんな中……

――セナが開発した道具や魔導具は便利なものが多い。特に「そろばん」という道具。これは書類作成時に劇的な変化をもたらす。この手紙を受け取っているのなら入っているハズだ。これを理解すればするほど、セナのをそれはそれは痛感することだろう。ちなみに、これは褒め言葉だ――

 という一文もあった。ずいぶんな言いようである。字面だけ見れば褒め言葉としては受け取りがたい。
 本当に気安い仲なのだな……と、これを読んだ当初は微笑ましさすら抱いていた。

 気安い仲なのは違いないだろうが、そうではない。そろばんを学んだ今ならアデトアが言外に伝えたかったことがわかる。料理のレシピ、便利道具、魔導具……こちらが感心するものを開発したのがあの少女なのだ。幼いハズなのに頭の中はどうなっているのかと、空恐ろしさすら感じてしまう。
 一部の騎士はからの介入などと勘ぐっているようだが、それはありえない。あの道具類を開発する頭脳、古代龍エンシェントドラゴンすら従魔にする実力、他国との交友関係などなど、あらゆるものを兼ね備えた彼女達……いや、彼女を御するなど不可能なのだから。
 手紙によれば、宰相からの料理に関する頼みを「忙しいし、面倒くさいからパス」と軽く突っぱねたこともあるそうだ。

 サーシャからすればセナ一行はとても好印象である。
 初対面時、あまりにも可愛らしい少女で内心驚いたのが始まりだ。多少なりとも警戒していたのだが、頭を下げられて毒気を抜かれた。田舎者だと、女のくせにと、騎士上がりのくせにと、バカにされることも見下されることもない。領主である自分にも、家で働くメイドや従者にも、騎士にも、ギルド職員にも、総じて態度を変えることもなかった。表情が豊かで庇護欲をそそる。頭の回転が速く、理解力も高い。話しやすく、こちらを気遣ってくれる優しい少女。久しぶりに友になってほしいと思える人物であった。
 事前情報では貴族嫌いとのことだったが、貴族に限らず、お互いに尊重し合えなければダメなのであろうなと、サーシャはここ二日ほどのセナの態度を見て察することができた。


 百年以上もの間、我が国の象徴とされていた火山が古代龍エンシェントドラゴンの呪いに侵されていた。実際に全てを目にしたアデトア殿下は全国民に知らせるべく、絵本という手段を取った。
 その内容はとても信じがたいことではあるが、確認した際のセナ達の会話は妙に現実味を帯びており、信じざるを得なかった。絵本はかなり簡略化したものであり、常人では解決など夢のまた夢であったのだと、己も戦いの場に身を置くことがあるサーシャは理解できてしまった。
 ヴァリージェ国の影響はこの街以外にも及んでいるらしい。その被害は甚大で、とある街は領主が殺され、近隣の村でも略奪被害が頻発している。さらに、この国どころか隣国キアーロにも波紋を広げているとのこと。

 それらを解決、及び解決に向けた助力をしたのがセナ達である。これらのことをあの騎士に伝えてしまえば、余計にからの干渉だと疑いを強めてしまうだろう。
 絵本にもされた呪いに関しては仕方ないとしても、「国民の窮地にも気が付かず、自国の問題を他国の者の手を借りなければ解決できませんでした」などというのは大っぴらにしていい内容ではない。国王の統治力を疑問視されてしまう。ただでさえこの街はからいて、国境がほど近いのだから。
 ゆえに、サーシャは騎士に仔細を告げられずにいた。

「……まぁ、アイツは敏い男だから大丈夫か」

 あの騎士の性格から、セナ達に何かを仕掛けるとは考えにくい。少し調べれば嫌でも理解するだろう、彼女達はただ旅の途中で寄っただけなのだと。
 フッと笑みを浮かべたサーシャはアデトアからの手紙をしまい、本日手が付けられなかった書類に手を伸ばした。


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