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 護衛に指示を出し終わると丁度担当教師がやってきて、卒業式の流れを確認し卒業式の会場へ移動するように指示してくる。

 30分後卒業式が始まった。

 予定通り式は進んでいく。

 予定通りじゃないのはアンジュだ。式の合間に報告に来る護衛や影と呼ばれる闇部隊からの話を聞く。すでに公務に着いている子息・令嬢もいる為、こっそり報告を受ける分には問題視されない。

 アンジュは報告を頭の中に入れ、ニヤリと笑う。しかし、その顔を見た者は誰もいない。

 そして、下級生や保護者、来賓の貴族、婚約者探しの年頃の貴族達が見守る中、卒業生は会場から一旦出て、パーティ会場に向かう。

 そのタイミングで大きな声をあげるバカがいる。

 ユーリ・バカルディ伯爵令息だ。

 彼の左腕には目をウルウルと潤ませた女子生徒がぶら下がっている。

 「アンジュ・シャーロック!!お前との婚約を破棄し、このアカリ・ジョルダン令嬢と婚約する!!並びに、婚約破棄の慰謝料、アカリに対するイジメの慰謝料・迷惑料を請求するっ!!」

 鼻息を荒く一気に捲し立てたバカ、ユーリに思わず呟いてしまう。

 「はあ?慰謝料を払うのはあなたのほうでしょ?馬鹿じゃないのっ!?」

 鼻でフフンと笑ってやる。

 「何だと!?」

 「シャーロック伯爵家はあなたの不貞行為を理由に婚約破棄を求めています。1週間前に通達を出したのでご存知のはずですよね?まだお返事は頂いてないようですけど?然るべき手続きを踏んでますので、その写しは法務省にありますわよ?届いてないとは言わせません。受け取りの署名もあります」

 先程影の1人から受け取った書類を掲げて見せる。するとユーリは少し顔色が青ざめた。

 「さて、私が婚約破棄を求めた理由ですが。いくつか理由があります。そもそも以前より私は婚約破棄を求めておりました。あなたの素行不良です。婚約者がありながら数々の令嬢と肉体関係になり問題を起こし、血迷った令嬢達が私に文句を言いに来るのですよ?私にあなたが慰謝料を払わないから私に払え等とお門違いもいいところです。その令嬢達の名前の控えがコレです20名程いらっしゃいます」

 またもや紙を掲げて見せ、先程の紙と同様に椅子に置く。

 「婚約してから婚約者を伴って行くパーティにもあなたは1度もエスコートしてくれませんでした。コレがそのパーティの控えです。日にち会場などが記してあります」

 紙を掲げて椅子に置く。

 「さて、今回こちらからの婚約破棄を後押しした出来事は、婚約者がありながらそちらの令嬢が妊娠したようですね?」

 静かだった会場内がザワリと騒めく。




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