なんでも私のせいにする姉に婚約者を奪われました。分かり合えることはなさそうなので、姉妹の関係を終わらせようと思います。

冬吹せいら

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妹の婚約者を奪う姉

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 リズを説教した後、ミゼスはタイラント伯爵家へと向かっていた。
 タイラント家の令息、ギャレン・タイラントは、リズの婚約者である。

 もちろん、姉であるミゼスが、それを知らないはずもない。

「こんにちは、ミゼス様」
「えぇ。いきなり押しかけてごめんなさいね?」

 ギャレンは、大広間でお茶でもどうでしょうか。と誘ったが、ミゼスは断った。
 その代わりに……。
  
 ギャレンの部屋で会話することを選んだのだ。

「あ、あの……。どうして僕の部屋なのでしょう」
「特に理由はないわよ?」
「そうですか……」

 ミゼスはギャレンに体が触れる、ギリギリのポジションを取り続けている。
 ギャレンもその違和感に、気が付かないはずはなかった。

「ミゼス様。今日は一体どのような……」

 突然、ミゼスがギャレンの頬にキスをした。

「なっ……!?」
「ふふっ。びっくりしましたか?」
「当然ですよ! どうしたんですかいきなり……」
「私、ずっとあなたのことが好きだったの」

 ミゼスが、とうとうギャレンの腕に、自分の腕を絡め始めた。
 豊かに実った胸を押し付けるように、ぎゅうっと腕を抱きしめる。

「お、おやめください……」
「あら。お胸は好みじゃなくって?」
「そうではなく……。僕にはリズが……」
「こんなこと、普通ですのよ? 家族なんですから。ね?」

 ギャレンは心優しい、十六歳の少年だ。
 剣技に優れた非常に優秀な騎士候補の少年だが、恋愛に関しては未熟である。
 女性の誘惑に対抗する術を持っていない。
 さらに、大胆にもミゼスは、ギャレンをベッドの上に座らせた。

「……ギャレン様からも、キスをしてほしいわ」
「そ、そんな……」
「お願い。私のことが嫌いなの?」
「そうではありませんが……」
「ではせめて、好きと言ってくださらない?」
「……」

 ミゼスが、甘い声を出しながらギャレンを見つめる。
 まるで、獲物を狙うハンターのような、巧みな罠による誘導。
 しかし、ギャレンは答えなかった。

「……できません。そんなこと。リズを裏切ることになってしまう」

 ミゼスは心の中で舌打ちをした。
 だとすれば、やはりもっと過激なことをするほかない。

「リズとはまだ婚約中なだけでしょう? 気持ちが変わることは、誰にでもあることです。……今だけでも、身を委ねてくださらないかしら」

 そう言いながら、ギャレンの頬にもう一度キスをした。
 ギャレンは己の理性と戦いながら、必死でミゼスから目を背けている。

「……リズは、いつもあなたの悪口ばかりなのよ?」
「え……」
「あなたは情けない。頼りない。……ってね。それを聞かされて、私はいつも腹が立っていました。……私なら、あなたをきっと幸せにできるのにって」
「ミゼス様……」

 まだ未熟なギャレンが、網にかかってしまった。

(男って、本当に馬鹿よね……。まぁ、私が本気を出せばこんなもんよ)

「私のことを、好きと言ってくれればそれで良いの。ね?」
「……はい」
「言って?」
「……好き、です」

 ミゼスが、ギャレンの唇にキスをした。
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