なんでも私のせいにする姉に婚約者を奪われました。分かり合えることはなさそうなので、姉妹の関係を終わらせようと思います。

冬吹せいら

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自業自得

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 ミゼスが慌てて振り返ったのと同時に、ドアが開いた。
 
「ぐおぉおっ……」

 男が呻き声を上げながら、入り口で倒れている。
 どうやら何者かによって、思いっきりドアに体を打ち付けられたらしい。
 その衝撃で、ドアが開いたのだ。

「……こんなことしたくないのに」

 呟いたのは……。
 伯爵家令息、ギャレン・タイラント。
 首をぐるりと回して、木刀を握り直した。

「てめぇ!」
 
 倉庫内にいた男たちが、次々とギャレンに殴りかかる。

「そんな短いナイフで戦うんですか……」

 呆れながら、襲い掛かってくる男たちを木刀で倒していく。
 あっという間に、その場にいた闇組織の男たちは全滅してしまった。
 
「ふぅ……」

 一仕事終えたギャレンは、ミゼスたちの方へと近づいていく。

「リズ様……。すいません遅くなって。タイミングがわからなかったんです」
「ギャレン。もう少しで、私の白い頬に赤い傷ができるところだったわよ」
「申し訳ございません」

 ミゼスが、状況を飲み込むことができずに、口をあわあわとさせている。
 そんなミゼスの方を振り向いたギャレンは……。
 木刀を構え直した。

「僕の婚約者に……。ちょっかいをかけないでもらえませんか?」
「……何が婚約者よ!」

 ミゼスは震える声で、ギャレンを威嚇した。

「私と浮気したくせに!」
「確かに僕は浮気しました。反省しても償える罪ではないです。……でも、だからと言って、婚約者を助けてはいけない理由にはならないはずです」
「よく言えましたね。ギャレン」

 ギャレンはリズを拘束している縄を解いた。

「随分と派手にやってくれたな」

 低い声が、倉庫の中に響いた。
 入り口に、闇組織のボスが立っている。
 ギャレンが木刀を構えたが、リズが手で制した。

「随分ご丁寧な挨拶でしたね」

 リズが言うと、ボスは大声で笑った。

「いやぁすまんね、血の気の多い奴なんだ。……そこのご令嬢も含めて」
「ちょっとあんた! なんとかしなさいよ! どうしてあんなひょろひょろの男一人にボコボコにされてるのよ! 何が闇組織なの!? 早く仲間を連れてきて!」
「あ~。まぁその、なんだ。あんまり騒がないでもらってもいいか?」
「え?」

 ボスが、ゆっくりとミゼスに近づいていく。
 そして……。首元を掴んだ。

「がっ……!」

 呼吸がし辛くなり、ミゼスは目を見開く。
 
「悪いなご令嬢。あんたの真っ黒な姉さん、もらっていくよ」
「想定外ですが……。それがけじめだと言うのなら、私は止めません」
「たっ……すっ……」

 ミゼスは涙を流しながら、リズを見ている。
 リズはただ、笑みを浮かべるだけだった。
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