弟が悪役令嬢に怪我をさせられたのに、こっちが罰金を払うだなんて、そんなおかしな話があるの? このまま泣き寝入りなんてしないから……!

冬吹せいら

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勝利の後の会話

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「これで、良かったのかな……」
「何がですか?」


家に戻り、私はネイトルと、二人で会話をしている。

私の入れた紅茶を飲んで、ネイトルは小さく息を吐いた。

「ネイトルが調べてくれた資料によると……。セレノーも、ある意味では被害者だったのかなぁ。なんて」
「……スバレス。あなたは優しすぎます」
「いや、もちろん、私の大事な弟の顔に傷をつけたことは、許せないよ? でも……。なんだろう。スッキリしないっていうか」
「スバレス。私が、姉の話をした時のことを、覚えていますか?」
「姉……。うん」

確か、ネイトルの姉が、ネイトルにやたらと嫌がらせをしてくる。そういう相談だった気がする。

「そうか……。それって、今思うと……」
「えぇ。権力争いです」
「……そんな大事なことに、私みたいな人間が、アドバイスをしていたと思うと、恐ろしいよ」

私は自嘲気味に笑ったけれど、ネイトルは首を横に振った。

「あなたは言ってくれた。自分が姉より強いと思うのなら、全力で反抗してもいいんじゃないかって」
「あれは……。あなたが、普通の家庭の娘だと思っていたから、できた話よ?」
「実際、変わらないですよ。規模が大きくなっただけです。……実際私は、姉より自分が優れている点を、家族や側近にアピールし続けました。結果、姉はもう、私に何も言わなくなったのです」

すごい話だ。

そうでもなければ、あんなにたくさんの騎士たちを、あんなにすぐには、用意なんてできないだろう。

「セレノーも同じです。本当に力があるものならば、虚勢を張らずとも、人の信頼を得ることはできたでしょう。……しかし、実際は、小さな街に陣取り、大きな顔をするだけでした。家の名前をチラつかせ、ボディガードに暴力を振るわせる、最低の令嬢」
「……そうね」
「むしろ、一年間、国の検閲を受けなかったことが、不思議でたまりません」
「小さな街だから。もう五年くらい、国の人なんて、見てないよ」

みんな、いきなり現れた騎士たちに、腰を抜かしていた。

「国の責任ですね。……こんなところに、街があったことすら、知りませんでしたから」
「あはは……。地図にも載ってないような街だからね」
「……あなたが相談してくれて、本当に良かったです。いつも通り、優しい世間話で終わっていたら、まだ支配は続いていたでしょうから」

ネイトルが、にっこりとほほ笑んだ。

これが……。姫様の笑顔か。

なんだか、心が穏やかになるというか。

彼女はきっと、国を象徴する存在になる。

そう確信した。
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