12 / 37
密室での罠
しおりを挟む(なんだ……?……これ?)
眉をひそめながら悟はドア口のすぐ側にある資料棚へと目をやる。
その一番下の棚から火の手が上がっていたのだった。
それは資料を燃やしながら、徐々に勢いを増していっていた。
「ちょっと!何なのよこれ!?」
ぎょっとしながら顔色を変え、慌てるリリに悟は落ち着いた声音で制する。
「落ち着け!取り敢えず、そこの端に寄れ!」
悟の言葉に従いリリは窓際の端に寄り、リリを庇うように悟はリリの前に立つ。
「これって、まさか……犯人が……」
「ああ。そのようだな……おい、リリ!この室内には警報機とかは付いてんのか?」
「ええ。付いているわ。スクリンプラーが発動すると自動的に職員室に流れるような仕組みになっているはずよ!」
「なら、大丈夫みてぇだな」
そう言い、悟はその場から駆け出した。
「ちょっ……悟!?」
リリは彼の突然の行動に驚愕し、思わず声を上げた。
彼は左側の奥の端にある掃除用具の上にある一本のスプレー缶を手に取った。
この状況の中でリリは彼の意図がまるで読めなかった。
急いで助けを呼ぶ為に携帯を使い、もしくは窓の外から助けを呼んだ方が懸命ではないかと一瞬考えが過ぎったが、だが彼女はその考えを全てやめた。
携帯端末は今授業中であり、電話しても繋がらない。事務の方に掛ければ話は別だが、リリの携帯に事務の電話は登録されていなかった。
それに窓を開け、助けを呼んだとしてもグランドの外には誰もおらず届かない。
届いたとしても、それは時間が経過してからになるだろう。
それまでにこの部屋は炎に覆い尽くされ、リリ達は大量の煙を吸ってしまう恐れがある。
リリは悟へと不安と困惑が入り交じりした視線を向けていた。
彼はそれに気づきもしない素振りで、手にしたスプレー缶……殺虫剤を持つと共に室内の中央まで再び駆け出し、そして立ち止まると同時に天井に設置されていたスプリンクラーへと向け、それを即座に噴射した。
噴射した瞬間。勢いよくスプリンクラーから大量の水がシャァァァとした音と共に噴射される。
勢いを増していた火は徐々に小さくなって行き、ジリジリジリとしたけたたましいサイレンが室内に響き渡る。
スクリンプラーの水を大量に浴び、全身ずぶ濡れ状態になりながらも、悟は安堵した様子で呟いた。
「これで一通りなんとか大丈夫だろ。警報も作動したし、暫くしたら教師共が駆けつけるはずだ」
「でも、よくそんなのがこの教室にあったわね……」
悟と同じく全身ずぶ濡れ状態のリリは、悟の隣にやって来ると同時に、彼が手にしている殺虫剤の缶をまじまじと見ながら不思議そうに言った。
「ああ。多分大掃除か何かの時に使ったんじゃねーの?この部屋日当りが良いし、虫とか出そうだしな」
「なるほどね」
そんな会話をしていた途端。
ドアからガチャガチャと鍵を外す音がし、そして勢いよくバン!!と、ドアが開かれた。
「おい!お前ら大丈夫か!?」
慌てた様子で若い男性教師は声を大にして悟達にそう声を掛けたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?
さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。
しかしあっさりと玉砕。
クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。
しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。
そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが……
病み上がりなんで、こんなのです。
プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる