クライニング?セクニッション~天才でオタクな彼のラストストーリー

せあら

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密室での罠

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(なんだ……?……これ?)

眉をひそめながら悟はドア口のすぐ側にある資料棚へと目をやる。
その一番下の棚から火の手が上がっていたのだった。
それは資料を燃やしながら、徐々に勢いを増していっていた。

「ちょっと!何なのよこれ!?」
ぎょっとしながら顔色を変え、慌てるリリに悟は落ち着いた声音で制する。
「落ち着け!取り敢えず、そこの端に寄れ!」
悟の言葉に従いリリは窓際の端に寄り、リリを庇うように悟はリリの前に立つ。
「これって、まさか……犯人が……」
「ああ。そのようだな……おい、リリ!この室内には警報機とかは付いてんのか?」
「ええ。付いているわ。スクリンプラーが発動すると自動的に職員室に流れるような仕組みになっているはずよ!」
「なら、大丈夫みてぇだな」
そう言い、悟はその場から駆け出した。
「ちょっ……悟!?」
リリは彼の突然の行動に驚愕し、思わず声を上げた。
彼は左側の奥の端にある掃除用具の上にある一本のスプレー缶を手に取った。

この状況の中でリリは彼の意図がまるで読めなかった。
急いで助けを呼ぶ為に携帯を使い、もしくは窓の外から助けを呼んだ方が懸命ではないかと一瞬考えが過ぎったが、だが彼女はその考えを全てやめた。
携帯端末は今授業中であり、電話しても繋がらない。事務の方に掛ければ話は別だが、リリの携帯に事務の電話は登録されていなかった。
それに窓を開け、助けを呼んだとしてもグランドの外には誰もおらず届かない。
届いたとしても、それは時間が経過してからになるだろう。
それまでにこの部屋は炎に覆い尽くされ、リリ達は大量の煙を吸ってしまう恐れがある。

リリは悟へと不安と困惑が入り交じりした視線を向けていた。
彼はそれに気づきもしない素振りで、手にしたスプレー缶……殺虫剤を持つと共に室内の中央まで再び駆け出し、そして立ち止まると同時に天井に設置されていたスプリンクラーへと向け、それを即座に噴射した。
噴射した瞬間。勢いよくスプリンクラーから大量の水がシャァァァとした音と共に噴射される。
勢いを増していた火は徐々に小さくなって行き、ジリジリジリとしたけたたましいサイレンが室内に響き渡る。
スクリンプラーの水を大量に浴び、全身ずぶ濡れ状態になりながらも、悟は安堵した様子で呟いた。

「これで一通りなんとか大丈夫だろ。警報も作動したし、暫くしたら教師共が駆けつけるはずだ」

「でも、よくそんなのがこの教室にあったわね……」

悟と同じく全身ずぶ濡れ状態のリリは、悟の隣にやって来ると同時に、彼が手にしている殺虫剤の缶をまじまじと見ながら不思議そうに言った。

「ああ。多分大掃除か何かの時に使ったんじゃねーの?この部屋日当りが良いし、虫とか出そうだしな」

「なるほどね」

そんな会話をしていた途端。
ドアからガチャガチャと鍵を外す音がし、そして勢いよくバン!!と、ドアが開かれた。

「おい!お前ら大丈夫か!?」

慌てた様子で若い男性教師は声を大にして悟達にそう声を掛けたのだった。
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