13 / 37
犠牲と疑問と
しおりを挟む
放課後。
廊下の通路の窓から射し込む夕暮れの光を背に浴びながら、悟は一人資料室の前に立っていた。
あの後、駆けつけた男性教師達のおかげで無事に資料室から抜け出す事に悟達は成功した。
勢いを増し、燃え盛っていた炎はスプリンクラーの水で炎は徐々に小さくなっていた為、後から駆けつけた教師達が手にしていた数本の消化器でその場を鎮火させた。
そして、スプリンクラーの水でずぶ濡れになった悟達は保健室でそれぞれジャージを借り、教師達に事情を説明した。
説明を終えた後、リリは午後の授業を出る気にはなれず、そのまま早退し、仕事場へと向かった。
念の為にリリの迎えを梨乃に頼み、そのまま彼女の護衛として梨乃を付けてある。
悟はと、言うとあの時放火に気づく直前に僅かな引っ掛かりを覚え、一人学校に残り、現場にいたのだった。
悟は数時間前、自分が閉じ込められていた資料室の中へと足を踏み入れた。
室内は先程の火災の為で資料棚に置いてあった大量の資料が黒く焼け焦げており、床はスプリンクラーの水で水浸しだった。
悟は先程真っ先に火の手が上がっていたドア口の傍にある資料棚へと足を向けた。
そしてその場にしゃがむと同時に一番下の棚にある、ある水滴を指で掬い、臭いを嗅いだ。
ツーンと鼻につく臭いがするそれは、一般的にある学校のプールの消毒液などに使われる次亜塩素酸ナトリウムだった。
そしてその近くに割れた小さなプラスチックミラーの破片と、湿気った小さな紙切れがあった。
その紙切れを悟は手に取り、その場から立ち上がると共にドアの冊子(さっし)へと見やる。
そこには僅かに水滴が付いており、ドアの端から流れるよう水滴のあとが資料棚の一番下の棚へと伝っていた。
(なるほどな。そう言う手口か……)
悟は目を細め、そして一瞬で理解した。
つまり犯人は悟達がこの室内に入って来る前に一度入り、ドア口のすぐ傍にある資料棚の下に塩素酸ナトリウムで湿らせ、ふやけた資料を棚に置き、その近くにプラスチックミラーを太陽の光が反射出来るようにあらかじめセットしておいた。
だが、それだけでは燃えないおそれがある。
だから犯人は悟達が室内へ入った後、鍵を外側から駆け、同時に周囲に誰もいない事を確認し、ドアの冊子から塩素酸ナトリウムを流し入れたのだろう。
犯人は資料室に行く際にすれ違ったリリの幼なじみである桐生時雨に間違えない。
あの時、悟は桐生時雨が幼なじみであり、同時にリリに好意を寄せている事にすぐに気づいた。
それでいて悟はわざと彼に吹っ掛けたのだ。
結果。
彼は見事に引っ掛かった。
それも自分に敵意を向け、警告までしてきた。それもただの脅しではなく、彼の目には殺気がこもっていた。
廊下の通路の窓から射し込む夕暮れの光を背に浴びながら、悟は一人資料室の前に立っていた。
あの後、駆けつけた男性教師達のおかげで無事に資料室から抜け出す事に悟達は成功した。
勢いを増し、燃え盛っていた炎はスプリンクラーの水で炎は徐々に小さくなっていた為、後から駆けつけた教師達が手にしていた数本の消化器でその場を鎮火させた。
そして、スプリンクラーの水でずぶ濡れになった悟達は保健室でそれぞれジャージを借り、教師達に事情を説明した。
説明を終えた後、リリは午後の授業を出る気にはなれず、そのまま早退し、仕事場へと向かった。
念の為にリリの迎えを梨乃に頼み、そのまま彼女の護衛として梨乃を付けてある。
悟はと、言うとあの時放火に気づく直前に僅かな引っ掛かりを覚え、一人学校に残り、現場にいたのだった。
悟は数時間前、自分が閉じ込められていた資料室の中へと足を踏み入れた。
室内は先程の火災の為で資料棚に置いてあった大量の資料が黒く焼け焦げており、床はスプリンクラーの水で水浸しだった。
悟は先程真っ先に火の手が上がっていたドア口の傍にある資料棚へと足を向けた。
そしてその場にしゃがむと同時に一番下の棚にある、ある水滴を指で掬い、臭いを嗅いだ。
ツーンと鼻につく臭いがするそれは、一般的にある学校のプールの消毒液などに使われる次亜塩素酸ナトリウムだった。
そしてその近くに割れた小さなプラスチックミラーの破片と、湿気った小さな紙切れがあった。
その紙切れを悟は手に取り、その場から立ち上がると共にドアの冊子(さっし)へと見やる。
そこには僅かに水滴が付いており、ドアの端から流れるよう水滴のあとが資料棚の一番下の棚へと伝っていた。
(なるほどな。そう言う手口か……)
悟は目を細め、そして一瞬で理解した。
つまり犯人は悟達がこの室内に入って来る前に一度入り、ドア口のすぐ傍にある資料棚の下に塩素酸ナトリウムで湿らせ、ふやけた資料を棚に置き、その近くにプラスチックミラーを太陽の光が反射出来るようにあらかじめセットしておいた。
だが、それだけでは燃えないおそれがある。
だから犯人は悟達が室内へ入った後、鍵を外側から駆け、同時に周囲に誰もいない事を確認し、ドアの冊子から塩素酸ナトリウムを流し入れたのだろう。
犯人は資料室に行く際にすれ違ったリリの幼なじみである桐生時雨に間違えない。
あの時、悟は桐生時雨が幼なじみであり、同時にリリに好意を寄せている事にすぐに気づいた。
それでいて悟はわざと彼に吹っ掛けたのだ。
結果。
彼は見事に引っ掛かった。
それも自分に敵意を向け、警告までしてきた。それもただの脅しではなく、彼の目には殺気がこもっていた。
0
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?
さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。
しかしあっさりと玉砕。
クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。
しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。
そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが……
病み上がりなんで、こんなのです。
プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる