クライニング?セクニッション~天才でオタクな彼のラストストーリー

せあら

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犠牲と疑問と

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放課後。
廊下の通路の窓から射し込む夕暮れの光を背に浴びながら、悟は一人資料室の前に立っていた。

あの後、駆けつけた男性教師達のおかげで無事に資料室から抜け出す事に悟達は成功した。
勢いを増し、燃え盛っていた炎はスプリンクラーの水で炎は徐々に小さくなっていた為、後から駆けつけた教師達が手にしていた数本の消化器でその場を鎮火させた。
そして、スプリンクラーの水でずぶ濡れになった悟達は保健室でそれぞれジャージを借り、教師達に事情を説明した。
説明を終えた後、リリは午後の授業を出る気にはなれず、そのまま早退し、仕事場へと向かった。
念の為にリリの迎えを梨乃に頼み、そのまま彼女の護衛として梨乃を付けてある。
悟はと、言うとあの時放火に気づく直前に僅かな引っ掛かりを覚え、一人学校に残り、現場にいたのだった。

悟は数時間前、自分が閉じ込められていた資料室の中へと足を踏み入れた。
室内は先程の火災の為で資料棚に置いてあった大量の資料が黒く焼け焦げており、床はスプリンクラーの水で水浸しだった。
悟は先程真っ先に火の手が上がっていたドア口の傍にある資料棚へと足を向けた。
そしてその場にしゃがむと同時に一番下の棚にある、ある水滴を指で掬い、臭いを嗅いだ。

ツーンと鼻につく臭いがするそれは、一般的にある学校のプールの消毒液などに使われる次亜塩素酸ナトリウムだった。
そしてその近くに割れた小さなプラスチックミラーの破片と、湿気った小さな紙切れがあった。
その紙切れを悟は手に取り、その場から立ち上がると共にドアの冊子(さっし)へと見やる。
そこには僅かに水滴が付いており、ドアの端から流れるよう水滴のあとが資料棚の一番下の棚へと伝っていた。

(なるほどな。そう言う手口か……)

悟は目を細め、そして一瞬で理解した。
つまり犯人は悟達がこの室内に入って来る前に一度入り、ドア口のすぐ傍にある資料棚の下に塩素酸ナトリウムで湿らせ、ふやけた資料を棚に置き、その近くにプラスチックミラーを太陽の光が反射出来るようにあらかじめセットしておいた。
だが、それだけでは燃えないおそれがある。
だから犯人は悟達が室内へ入った後、鍵を外側から駆け、同時に周囲に誰もいない事を確認し、ドアの冊子から塩素酸ナトリウムを流し入れたのだろう。

犯人は資料室に行く際にすれ違ったリリの幼なじみである桐生時雨に間違えない。

あの時、悟は桐生時雨が幼なじみであり、同時にリリに好意を寄せている事にすぐに気づいた。
それでいて悟はわざと彼に吹っ掛けたのだ。
結果。
彼は見事に引っ掛かった。
それも自分に敵意を向け、警告までしてきた。それもただの脅しではなく、彼の目には殺気がこもっていた。
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