17 / 37
間違いの想い
しおりを挟む
午後の授業が終わり、誰もいない廊下を一人星野リリは急いで走っていた。
今日の夕方から行われるライブのスタッフ達と打ち合わせの為に、学校の外には梨乃を待たせていた。
彼女と合流をしたのち、車で打ち合わせ場所となるアリーナー会場まで向かう予定だった。
本来まだ時間には余裕があるのだが、会場に少しでも早く着き、時間があるうちに明日のライブの自分のステージの立ち位置、曲の最終チェックの確認をしておきたいとリリはそう思っていた。
明日自分の夢が叶う場所に立つ。
その為にもやれる事はやっておきたい。
全力で本番に望みたい。
その想いを胸に強く抱きながらも、気持ちがはやり、駆け出す足がさらにスピードを上げる。
廊下を曲がり、階段を降りていく中、さらに曲がったその先で階段の下にいる桐生時雨がいた。
その彼から突然声を掛けられた。
「リリ今から仕事なのか?」
穏やかな表情で彼女を見上げるように尋ねる時雨の言葉に、リリは思わずその場に足を止めた。
「うん。明日本番だからその打ち合わせなんだ」
そう笑顔で答えるリリに、時雨は穏やかな笑をスッと消し、真面目な表情へと切り替えた。
「なぁ……リリ。お前はアイドルには向いてないよ。明日のライブが終わったら、お前はアイドルを辞めろよ。リリは普通の女の子の方が向いているよ」
その言葉にリリは背筋からゾクリと悪寒が走るのを感じた。
彼の言葉、表情は、いつもの彼と同じで。
だが、その奥に見えない恐怖をリリは瞬時に感じ取った。
リリは強い戸惑いを覚えながらも生唾をゴクリと鳴らし、心の中で強く否定し、軽く笑いって、そして苦笑いを作った。
「何それ~。全然笑えないよー。その冗談。ごめんなさい、わたしマネージャー待たせているからもう行くね」
と、そう言いながらリリは早足で階段を降り、時雨とすれ違うようにその場から急いで去ろうとした。
それはまるで時雨から逃れるかのように。
だが、その瞬間。
「まだ俺の気持ちは変わってはいない。リリお前の事が好きなんだ」
その場から逃げ去ろうとするリリへと、時雨は真剣な声音で想いを告げた瞬間、リリは再びその場に足を止め、時雨の方を振り向いた。
「でも……時雨わたしは……」
切なそうな顔で、弱々しい声音で呟くように言うリリに、時雨はリリの腕を強く握ると同時にグイッと自分の方へと引き寄せ、そして耳元で囁くように静かに告げた。
「お前は昔のように俺の側で歌い続ければいい。他の奴の為なんかじゃない。俺だけの為だけに」
その言葉に。
全身に毒がまわるかのように恐怖心が彼女の身体の中を駆け巡る。
自分の知らない彼がいる。
そう思ったその直後。
時雨はもう片方の手で、どこからともなく取り出したスタンガンを瞬時の速さで彼女の首すじに当て、バチン!と、した音と友に電流を流した。
「!?」
それは一瞬の出来事だった為抵抗する事も叶わず頭が真っ白になり、リリは意識を手放した。
時雨は自分の腕の中で意識を失い、ぐったりとなるリリへと目をやると彼は寂しそうに、それでいて愛しそうに小さくポツリと呟いた。
「お前を取り戻す為ならば俺は何だってやる。俺からお前を奪った”音”を壊してでもな……」
人知れずに呟くその言葉は誰の耳に入る事はなかった。
そして彼は彼女を抱き抱えながら、歩を進め、その場を後にしたのだった。
今日の夕方から行われるライブのスタッフ達と打ち合わせの為に、学校の外には梨乃を待たせていた。
彼女と合流をしたのち、車で打ち合わせ場所となるアリーナー会場まで向かう予定だった。
本来まだ時間には余裕があるのだが、会場に少しでも早く着き、時間があるうちに明日のライブの自分のステージの立ち位置、曲の最終チェックの確認をしておきたいとリリはそう思っていた。
明日自分の夢が叶う場所に立つ。
その為にもやれる事はやっておきたい。
全力で本番に望みたい。
その想いを胸に強く抱きながらも、気持ちがはやり、駆け出す足がさらにスピードを上げる。
廊下を曲がり、階段を降りていく中、さらに曲がったその先で階段の下にいる桐生時雨がいた。
その彼から突然声を掛けられた。
「リリ今から仕事なのか?」
穏やかな表情で彼女を見上げるように尋ねる時雨の言葉に、リリは思わずその場に足を止めた。
「うん。明日本番だからその打ち合わせなんだ」
そう笑顔で答えるリリに、時雨は穏やかな笑をスッと消し、真面目な表情へと切り替えた。
「なぁ……リリ。お前はアイドルには向いてないよ。明日のライブが終わったら、お前はアイドルを辞めろよ。リリは普通の女の子の方が向いているよ」
その言葉にリリは背筋からゾクリと悪寒が走るのを感じた。
彼の言葉、表情は、いつもの彼と同じで。
だが、その奥に見えない恐怖をリリは瞬時に感じ取った。
リリは強い戸惑いを覚えながらも生唾をゴクリと鳴らし、心の中で強く否定し、軽く笑いって、そして苦笑いを作った。
「何それ~。全然笑えないよー。その冗談。ごめんなさい、わたしマネージャー待たせているからもう行くね」
と、そう言いながらリリは早足で階段を降り、時雨とすれ違うようにその場から急いで去ろうとした。
それはまるで時雨から逃れるかのように。
だが、その瞬間。
「まだ俺の気持ちは変わってはいない。リリお前の事が好きなんだ」
その場から逃げ去ろうとするリリへと、時雨は真剣な声音で想いを告げた瞬間、リリは再びその場に足を止め、時雨の方を振り向いた。
「でも……時雨わたしは……」
切なそうな顔で、弱々しい声音で呟くように言うリリに、時雨はリリの腕を強く握ると同時にグイッと自分の方へと引き寄せ、そして耳元で囁くように静かに告げた。
「お前は昔のように俺の側で歌い続ければいい。他の奴の為なんかじゃない。俺だけの為だけに」
その言葉に。
全身に毒がまわるかのように恐怖心が彼女の身体の中を駆け巡る。
自分の知らない彼がいる。
そう思ったその直後。
時雨はもう片方の手で、どこからともなく取り出したスタンガンを瞬時の速さで彼女の首すじに当て、バチン!と、した音と友に電流を流した。
「!?」
それは一瞬の出来事だった為抵抗する事も叶わず頭が真っ白になり、リリは意識を手放した。
時雨は自分の腕の中で意識を失い、ぐったりとなるリリへと目をやると彼は寂しそうに、それでいて愛しそうに小さくポツリと呟いた。
「お前を取り戻す為ならば俺は何だってやる。俺からお前を奪った”音”を壊してでもな……」
人知れずに呟くその言葉は誰の耳に入る事はなかった。
そして彼は彼女を抱き抱えながら、歩を進め、その場を後にしたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?
さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。
しかしあっさりと玉砕。
クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。
しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。
そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが……
病み上がりなんで、こんなのです。
プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる