俺の周りのイケメンたちが全員心配性

Sora

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6.インフルエンザA型②

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 熱が上がってきたのか、夜になると頭がぼーっとしてきて、うとうとしては目が覚めるの繰り返しだった。
「大丈夫か?」
 ぼんやりと目を開けると、聞きなれた低い声が耳に入る。
「とーさん…」
 いつも夜遅くに帰ってくる父さんが氷枕を交換してくれていた。
「しんどいなあ」
 父さんが頭を撫でてくる。兄貴と違う、大きくて少しざらっとした手。その重みと温かさを感じながら、俺の意識は再びぼんやりとした眠りの中へ引き込まれていった。

 朝になって、目を覚ました時、変わらず体はだるく、頭もぼんやりとしていた。
 寝ている間に少しは楽になっているかと思ってたんだけどなあ。
「おはよう、いつき」
 兄貴が声をかけで目を開ける。体温計を脇に入れられて、ぼんやりしている俺に代わって兄貴が手際よく熱を測ってくれる。
「下がってないな」
 兄貴が体温計を取り出して、表示を確認した。体温は相変わらず高く、まだ38度を超えている。兄貴が母さんを呼んで、病院に行くことになった。
「いつき、お兄ちゃんが学校行ったら、病院に行こう。まだしんどそうだしちゃんと診てもらおう」
 俺は小さくうなずいたけど、体がだるくて起こすのがしんどい。
 母さんにさっと着替えさせられて、リビングのソファまでゆっくり歩いて座る。
 朝ごはんは食べられないので兄貴があったかいお茶を持たせてくれる。
 ぼーっとテレビを見ていると、兄貴が「じゃあ行ってくるからな」と頭を撫でてくる。
「いってらっしゃい」と兄貴に言ったけど、声がかすれてうまく出なかった。そんな俺の様子を見て、兄貴は心配そうに眉をひそめた。
 もう一度軽く頭を撫でて玄関に向かった。兄貴、ほんとによく撫でるよなあ。
 玄関の閉まる音を聞いて、持っていたお茶のコップをそばのローテーブルに置く。体のだるさは変わらず、重たい毛布を何枚もかけられているみたいだ。
 母さんが準備を整えて戻ってくる。
「さ、行くよ。ちょっとだるいだろうけど、頑張って歩こうか」
 俺は小さくうなずいたけど、いざ立ち上がろうとすると足がふらついてしまう。
「ちょっと待ってね。ほら、腕に掴まって」
 母さんが俺の片腕を支えながら、ゆっくり立たせてくれる。母さんに支えられながら靴を履いて車に乗って助手席をちょっと倒してもらう。

 車に揺られながら、俺はうとうとしていた。
 病院の消毒液のにおいを思い出して、嫌だなあと思う。
「着いたよ」
 母さんの声に目を開けると、病院の駐車場だった。母さんが車を降りて助手席のドアを開ける。
「歩ける?」
「うん」
 俺はうなずいてみせたけど、体はまだふらふらで、結局母さんの腕に掴まってゆっくり歩くことになった。
 自動ドアが開いて、病院特有の薬の匂いが鼻に入る。受付で母さんが名前を伝えると、待合室に案内された。
 椅子に座って、順番を待つ。
「予約してるからすぐだよ」
 母さんがそう言ってかばんから水筒を出す。中身は冷たいお茶で、冷たいお茶が喉を通て少しだけ気持ちが楽になった。

 数分すると名前が呼ばれて診察室に入る。中にはいつもの先生が待っていた。
「いつきくん、今日はどうしましたか?」
「昨日の夕方から熱があって、朝は38度5分でした」
 母さんが先生に症状を説明してくれる。先生はうなずきながら、俺のリンパ節や喉を診察する。
「今からインフルエンザの検査をしようね」
 先生が細い棒を持って鼻の奥に入れる。一瞬びくっとなるくらい痛かった、これが嫌いなんだよなあ。
「検査結果が出るまで少し待ってね」
 先生に言われて俺たちはまた待合室に戻る。母さんが横に座って、手を握ってくれた。
 いつもは恥ずかしいって思うけど、しんどいときは安心する。

 数分後、名前が呼ばれて診察室に戻る。先生がカルテを見ながら説明を始めた。
「インフルエンザA型だね。予防接種のおかげで症状が軽いかもしれないけど、薬をしっかり飲んで家でゆっくり休むようにしてください」
 母さんが薬の説明を受けている間、俺の頭の中は「やだなあ」だった。予防接種受けたのに。また学校行けない。

 帰り道、母さんが薬局に寄って薬を受け取ってくれる間、俺は車の中でぼんやり外を見ていた。
 時間は3時間目くらいか。時間割なんだっけ、給食なんだっけ…と思いながら、目を閉じた。
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