俺の周りのイケメンたちが全員心配性

Sora

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7.インフルエンザA型③

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 車のエンジンの音が心地よくて、ぼんやりとまどろんでいた。母さんが運転席に戻ってきた気配でうっすら目を開ける。
「薬もらったから、帰って飲もうね」
 母さんの言葉に小さくうなずく。喉が痛くてあまり声を出したくない。

 家に着いて、母さんに支えられながらリビングまで戻る。ソファに座ると、母さんが用意してくれた水と一緒に薬を渡してくれた。
「ご飯はあとでもいいから、とりあえずお薬飲んで横になろうね」
「……うん」
 錠剤を口に含み、水で流し込む。飲み込むたびに喉がひりひりして嫌になる。

 そのまま自分の部屋に戻り、着替えて布団にもぐり込んだ。いつもの布団なのに、熱のせいかひんやりして気持ちいい。母さんが毛布をかけ、上掛けを軽く整えてくれる。
「寝てていいからね。何かあったら呼んで」
 俺は小さくうなずいて、目を閉じた。

 そのまましばらく眠っていたらしい。気づけば外はもう夕方になっていて、玄関の方からドアが開く音がした。
「ただいまー」
 兄貴の声だ。母さんが「おかえり」と応じるのが聞こえる。
 足音が近づいてきて、部屋の扉が開く。
「いつき、どうだ?」
「……んー、だるい」
「そっか。薬は?」
「飲んだ……」
「なら、そのうち熱下がるだろ」
 兄貴が軽く俺の髪をくしゃっと撫でる。ちょっと安心する。
「ご飯、少しでも食えそうか?」
「……まだ無理」
「そっか。食えそうになったら言えよ」
「ん……」

 またまどろんでいると、母さんが様子を見に来た。
「そろそろお熱測ろうか」
 体温計を脇に挟む。しばらくしてピピッと音が鳴り、母さんが体温計を覗き込む。
「うーん、まだ38度ちょっとあるね。無理せず寝てようね」
「……うん」
 そのまま俺は再び眠りについた。

 でも、しんどさは変わらなかった。布団の中で身体を縮こまらせる。熱のせいで全身がじんわりと痛くて、喉も焼けるようにひりひりする。
 額や首元がじっとりと汗ばんでいるのに、寒気もする。布団をかぶると暑いし、はぐると寒い。どうしても落ち着かない。
 息をするだけで苦しくて、鼻が詰まっているせいでうまく息が吸えない。

「……うぅ……」
 思わず小さく声が漏れる。

 その気配に気づいたのか、部屋の扉がそっと開く音がした。足音が近づいてきて、布団のそばに座る気配がする。
「いつき? 大丈夫か?」
 俺は何も言えずに目をぎゅっとつぶる。涙がこぼれそうになるのを堪えようとしたけど、うまくいかなかった。

「……しんどい……」

 鼻が詰まって、声がくぐもる。兄貴は俺の頭をそっと撫でた。
「大丈夫、大丈夫だからな」
それに安心して、そのまま俺は眠りについた。
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