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第一幕:【魔盗団】殲滅作戦編
止まった冒険の針
しおりを挟むS級昇級試験の裏側。宿屋【陽癒の園】内にある四人部屋【中陽の間】にて。そこにリン達4人はいた。
「・・・」
【ラビル遺跡】での【グリフェンリート】との邂逅により恐怖と痛みはリンやカズトたちの胸に根強く植え付けられ、誰一人言葉を発せずに、ただただ無力さに打ちひしがれていた。それは無理もなく、彼女らはまだまだ駆け出しの冒険者であり、ましてや【禁忌指定魔獣】と邂逅するなんて普通ならありえないことなのだから。ただ、幸いなのはあんな攻撃をくらって命を落とさなかったという点だろう。あそこで死んでいては、彼らがトラウマを克服することも第2の人生を歩むことも叶わなかっただろう。ただ、彼らに克服する気持ちがあるかないかは別だが。
「・・・ぅ」
リンはカズト達の絶望した様子になんて声をかければいいのかも分からず、口から発せられるのは吐息だけ。かく言う自分自身も心の中を埋めるのは絶望という感情だ。全身を絡めとり、ドン底へと突き落とされた様な感覚は生まれて初めての経験であり、簡単には拭い切れないトラウマだ。
「あの…さ」
無言を打ち砕いたのはリンではなくカズトの声。その声に全員がカズトに視線を送る。彼の顔には強気な表情はなく、明るいと言うより暗い。そんなカズトが次に発する言葉はなんなのか、と全員が息を呑む。やがて、彼の唇が動く。弱々しく震えながら。
「俺…冒険者を…やめようと思うんだ…」
その言葉に不思議と怒りや驚きなんて湧いてこない。誰一人、それを止めようとする言葉が出ない。何故なら、分かってしまったから。
自分には力が無いということに…。
仲間を守る力がないということに…。
そして--今度こそ死ぬと確信してしまった。
あの時【グリフェンリート】に付けられた傷が…カズトの心を完璧に砕いた。修復が不可能と言えるほどバキバキに。だから、もう立ち直れない。どんな言葉を投げかけられても立ち直れる気がしない。
「みんな…ごめん」
カズトはそう言い残して部屋から消えていった。取り残された三人は気まずさと絶望と寂しさのミキサージュースを飲み干したような感情のまま、ただただ無言の時間が過ぎていく。
彼らを立ち直らせるきっかけが起きることも無く…永遠に彼らの冒険の針は動かなくなった。
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