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第一幕:【魔盗団】殲滅作戦編
偽の義弟シエル・クローゼ
しおりを挟む西守獣騎士団団長ユリセスとの対面から翌日。場所は東都クランセマムと南都シュルトセマムを繋ぐ【暗獄の大樹林】入口付近に設営された幾つもの簡易テント。そこにシエンは訪れていた。というよりユリセスに無理矢理連れてかれたという方が正しい。
(作戦は明日だってのになんでこんな事に…)
シエンは目の前に横一列に綺麗に並んでいる西守獣騎士団の面々を見て心の中でため息をつく。彼は現在、ユリセスによる作戦概要の後に協力者としての紹介をされる所だった。因みに変身魔法により髪と瞳の色、声帯を変えている為、ギルド職員【シエン・F・クロイセス】だということは9割程バレないようになっている。
「というわけで、私の義弟【シエル・クローゼ】が今作戦の協力者だ。みな仲良くしてやってくれ」
彼女の言葉に、騎士団の面々の頭には『?』が浮かんだ事だろう。シエン改めシエルはため息をついて、『そりゃ、そうなるだろ』と額に手を当てる。普通に考えて、唐突に『義理の弟』なんて紹介されても信じるわけが無い。やはり腕は確かでも頭はダメな騎士団長様だ、とシエルは確信する。
「ん?みな、キョトンとした顔をしてどうした?もしやあれか?私の義弟が可愛すぎて放心してるのか? うんうん、それは仕方ないことだ。何故なら、可愛いのは事実だからな!!」
ユリセスに抱きつかれてグリグリされるシエル。そのせいで彼女の鎧に顔が擦れて痛いので、無理矢理引き剥がして抱擁から脱する。どうやらこの騎士団長は騎士団員達の前でも通常運転らしい。
「…はぁ。姉さんはそろそろ弟離れした方がいいよ」
姉弟という関係が怪しまれないよう呼び方に気をつけてシエルはユリセスから距離をとる。そんな冷たい態度に肩を落とすユリセス。その茶番のような光景に、騎士団員達は『弟君も大変だなぁ』と同情の視線をシエルに送っていた。
「…ま、まぁ!きっと照れ隠しだ!みなが見てるからいつもみたいに『お姉ちゃん…怖い夢見たから…一緒に寝ていい?』とか、『お姉ちゃん大好き!』って言えないだけだろ?! 」
落ち込んでいたユリセスが現実逃避でもするかのように、願望をさも現実で起きたことがあるように捏造して心を保ち始める。シエルはそんな哀れな彼女を見て、肯定も否定もせずに黙る事にした。というのも、ここでツッコミを入れたとして、またユリセスが落ち込むだけでシエルにメリットがない。それに単なる紹介なだけなら、そろそろギルドに出勤したい、と彼は思った。きっと今頃、シエルの代わりに倍以上働かされているメイナが不機嫌MAXだろう。
「えーっと…もう帰っていい?」
まだギルドが開いてそんなに時間は経っていない筈なので、今から転移魔法を使えば直ぐに辿り着くだろう、と考えて、現実逃避中のユリセスの代わりに騎士団員の赤髪青年に尋ねる。しかし、
「いや、ダメだ。君は明日の作戦までここにいてもらわないといけない」
断られる。
「…理由とかは聞いても?」
ちゃんとした理由がなければ納得はできない。その質問に赤髪青年は答える。
「なに、簡単なことさ。それは、君との親交を深める為だよ」
「…は?」
赤髪青年の言ってることが一瞬わからず思考がフリーズする。が、数秒後には言葉の意味を思考が理解した。
「たった一回の協力だってのに、親交を深める必要はあるのか?」
「あぁ、ある。君になくても僕らにはね」
赤髪青年がそう言うと、他の騎士団員達が、『うんうん』と頷く。まさかの全員一致の意見。シエルは大きなため息をつくと共に、
(騎士団長だけでなく団員達も苦手だ…)
心の中で愚痴を吐いた。
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