30 / 42
第一幕:【魔盗団】殲滅作戦編
親交会という名の模擬戦
しおりを挟む親交を深めるとの事で騎士団員達と何故か模擬戦を行う事になったシエルは、簡易的な円形フィールドの中心で木剣を手に困惑していた。
(…親交を深めるってなんだ??)
想像していたものとは全然違う状況を前に、『親交を深める』という言葉の意味が分からなくなる。そして模擬戦を提案してきた赤髪青年【アドス・カートュル】が同じく木剣を手にして、円形フィールドの中央に立つ。互いに互いの前に立ち、木剣を構える。
「さぁ、親交戦を始めようか」
楽しそうな表情でアドスが告げた瞬間、未だ困惑するシエルの思考を置き去りにして襲いかかってきた。明らかなる不意打ちにも近い一撃が容赦なく降りかかる。だが、その攻撃がシエルに触れることは無い。というのも、即座に思考を切り替えたシエルの木剣がアドスの木剣を受け止めていたからだ。
「へぇ、意外とやるようですね」
値踏みするような視線と言葉にシエルは先程とは違い、即座に理解する。
(親交会ではなく、腕試しってとこか)
これは所謂、試験的なもの。騎士団長がわざわざ協力を仰ぐとなれば、本当に役に立つのかを見極めるのは普通のこと。ましてや、騎士団長の義弟となれば戦闘面に関しては騎士団長クラスの腕があるのかを確かめたいのも仕方の無いこと。要するに、ここで負ければ見込みなし、勝利すれば彼らに認められるというわけだ。ただ、シエルにとっては彼らから認められようが認められなかろうがどうでもいいのだが、ユリセスに迷惑をかけるのは御免こうむる為、勝利をもぎ取る気持ちでいる。
「では、僕もそろそろ本気でいかせてもらいます」
そう告げた瞬間、木剣にのしかかるアドスの木剣の勢いが増し、重量が増していく。まるで鉄の塊がのしかかってきたかのような感覚。その重量が止むことはなく、どんどんと木剣を握る腕の骨が軋みをあげる。
「--っ!?」
あまりの重さに顔をしかめる。そんな彼に挑発じみたような表情を浮かべるアドス。その姿にシエルは逆上するのではなく、むしろ冷静になる。こういうタイプなら遠慮なく徹底的に潰せる、と思考がシンプルな答えに辿り着いた。その後は早い。
「上手く避けないと--死ぬのでお気をつけて」
のしかかるアドスの木剣から自身の木剣を退かし、その動作と同時にバックステップからの踵の裏に反射魔法【反鏡】を展開し、あえて踏み付けることで反射させる。そうすることで木剣によるダッシュ攻撃のスピードを無理矢理生み出す。本来ならバックステップした際に一度、地面に踵を触れさせる時間を生じるが、踵が触れる前に空中に【反鏡】を展開することでその数秒のラグを消し去った事で攻撃に繋げるモーション速度を早めることが可能となる。
「クローゼ流剣術--【黒刃棘影】」
その一言と共に木剣に全てを飲み込むほどに真っ黒な影がまとわりついた。クローゼ流剣術の本来の名は【影殺術】であり、【黒刃棘影】は影を武器に纏わせて敵の胴を貫き、内部から影で形成された黒刃を茨の棘のように分散させ臓器などを切り裂いて殺す技。ただ、今回は模擬戦の為、臓器への攻撃ではなく、アドスが纏っている防具の破壊を目的としている。
「残念だけど、僕にその攻撃は届かない」
アドスは地面に高速で魔法陣を描き、展開する。魔法陣の色は白。効果は『肉体変化』。サァーと彼の肉体が霧散していく。これの魔法名は【霧体】。全ての魔法・物理を無効化する厄介な効果を持っている。
「【理を砕け】--【破邪絶影】!!」
シエルの魔法詠唱により対抗魔法が発動し、【霧体】を強制解除させる。絶対無敵の霧の肉体を失ったアドスの表情が驚きに染る。それにより一瞬の硬直が入り、隙が生まれる。
「私の勝ちですね、アドスさん」
ズカッと【黒刃棘影】が鎧に突き刺さり、無数の黒刃が内部からズタズタに切り裂いた。そして、防具を完全に失った丸裸同然のアドスの首元に木剣を添えて、そう宣言した。
0
あなたにおすすめの小説
神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>
ラララキヲ
ファンタジー
フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。
それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。
彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。
そしてフライアルド聖国の歴史は動く。
『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……
神「プンスコ(`3´)」
!!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!!
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇ちょっと【恋愛】もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
【完結】私が愛されるのを見ていなさい
芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定)
公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。
絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。
ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。
完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。
立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
乙女ゲームは見守るだけで良かったのに
冬野月子
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した私。
ゲームにはほとんど出ないモブ。
でもモブだから、純粋に楽しめる。
リアルに推しを拝める喜びを噛みしめながら、目の前で繰り広げられている悪役令嬢の断罪劇を観客として見守っていたのに。
———どうして『彼』はこちらへ向かってくるの?!
全三話。
「小説家になろう」にも投稿しています。
義妹がピンク色の髪をしています
ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる