冒険者狩りをしている青年の表稼業

雪鵠夕璃

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第一幕:【魔盗団】殲滅作戦編

親交会という名の模擬戦

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親交を深めるとの事で騎士団員達と何故か模擬戦を行う事になったシエルは、簡易的な円形フィールドの中心で木剣を手に困惑していた。

(…親交を深めるってなんだ??)

想像していたものとは全然違う状況を前に、『親交を深める』という言葉の意味が分からなくなる。そして模擬戦を提案してきた赤髪青年【アドス・カートュル】が同じく木剣を手にして、円形フィールドの中央に立つ。互いに互いの前に立ち、木剣を構える。

「さぁ、親交戦を始めようか」

楽しそうな表情でアドスが告げた瞬間、未だ困惑するシエルの思考を置き去りにして襲いかかってきた。明らかなる不意打ちにも近い一撃が容赦なく降りかかる。だが、その攻撃がシエルに触れることは無い。というのも、即座に思考を切り替えたシエルの木剣がアドスの木剣を受け止めていたからだ。

「へぇ、意外とやるようですね」

値踏みするような視線と言葉にシエルは先程とは違い、即座に理解する。

(親交会ではなく、腕試しってとこか)

これは所謂、試験的なもの。騎士団長がわざわざ協力を仰ぐとなれば、本当に役に立つのかを見極めるのは普通のこと。ましてや、騎士団長の義弟となれば戦闘面に関しては騎士団長クラスの腕があるのかを確かめたいのも仕方の無いこと。要するに、ここで負ければ見込みなし、勝利すれば彼らに認められるというわけだ。ただ、シエルにとっては彼らから認められようが認められなかろうがどうでもいいのだが、ユリセスに迷惑をかけるのは御免こうむる為、勝利をもぎ取る気持ちでいる。

「では、僕もそろそろ本気でいかせてもらいます」

そう告げた瞬間、木剣にのしかかるアドスの木剣の勢いが増し、重量が増していく。まるで鉄の塊がのしかかってきたかのような感覚。その重量が止むことはなく、どんどんと木剣を握る腕の骨が軋みをあげる。

「--っ!?」

あまりの重さに顔をしかめる。そんな彼に挑発じみたような表情を浮かべるアドス。その姿にシエルは逆上するのではなく、むしろ冷静になる。こういうタイプなら遠慮なく徹底的に潰せる、と思考がシンプルな答えに辿り着いた。その後は早い。

「上手く避けないと--死ぬのでお気をつけて」

のしかかるアドスの木剣から自身の木剣を退かし、その動作と同時にバックステップからの踵の裏に反射魔法【反鏡】を展開し、あえて踏み付けることで反射させる。そうすることで木剣によるダッシュ攻撃のスピードを無理矢理生み出す。本来ならバックステップした際に一度、地面に踵を触れさせる時間を生じるが、踵が触れる前に空中に【反鏡】を展開することでその数秒のラグを消し去った事で攻撃に繋げるモーション速度を早めることが可能となる。

「クローゼ流剣術--【黒刃棘影こくばとえい】」

その一言と共に木剣に全てを飲み込むほどに真っ黒な影がまとわりついた。クローゼ流剣術の本来の名は【影殺術】であり、【黒刃棘影】は影を武器に纏わせて敵の胴を貫き、内部から影で形成された黒刃を茨の棘のように分散させ臓器などを切り裂いて殺す技。ただ、今回は模擬戦の為、臓器への攻撃ではなく、アドスが纏っている防具の破壊を目的としている。

「残念だけど、僕にその攻撃は届かない」

アドスは地面に高速で魔法陣を描き、展開する。魔法陣の色は白。効果は『肉体変化』。サァーと彼の肉体が霧散していく。これの魔法名は【霧体ミラージ】。全ての魔法・物理を無効化する厄介な効果を持っている。

「【理を砕け】--【破邪絶影はじゃぜつえい】!!」

シエルの魔法詠唱により対抗魔法アンチ・マジックが発動し、【霧体ミラージ】を強制解除させる。絶対無敵の霧の肉体を失ったアドスの表情が驚きに染る。それにより一瞬の硬直が入り、隙が生まれる。

「私の勝ちですね、アドスさん」

ズカッと【黒刃棘影】が鎧に突き刺さり、無数の黒刃が内部からズタズタに切り裂いた。そして、防具を完全に失った丸裸同然のアドスの首元に木剣を添えて、そう宣言した。
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