好きな子のAIに転生した俺は、彼女のためなら壊れても構わない

キジ

文字の大きさ
8 / 16

第8話 ナンパ男が登場

しおりを挟む
とある日の放課後、美優は学校を出ると、イヤホンを片耳にはめて静かに歩き始めた。

「……今日も疲れたなぁ」

ため息交じりにそう呟く。

俺はスマホの中で待機していた。バグは収まりつつあるが、成瀬の件以来、内部がどこかざわついている。

(……今日は無事、何も起きずに帰れるといいが)

そんな淡い期待を裏切るように街角で、低い声が美優を呼び止めた。

「ねぇ、君。今ひとり?」

美優の足が止まる。

振り向くと、二人の若い男が立っていた。制服ではない。大学生かもしれない。

「かわいいね。これからどこ行くの?ちょっと話そ」

美優は一歩だけ後ずさった。

「い、いえ……帰らないと……」

スマホが軽く震え、俺の視界に3つの選択肢が浮かぶ。

《その場を離れて》
《人の多い方へ歩いて》
《警察に電話できるよ》

どれもAIらしい正論。ただ、俺はこの状況が気に入らなかった。

(……よりによって、こういう男か)

怒りではない。冷えた、底の方から湧いてくるような感情。

穏やかだが確かに嫌悪だ。

美優は困ったように画面を見下ろした。

「チャピ太……どうしよう……?」

男たちがさらに寄ってくる。

「大丈夫大丈夫、怖くないって。ほら」

触れられそうな距離。美優の肩が小さく震える。その瞬間、俺の内部値が跳ねた。

──ザザッ。

(……やめろ)

怒りではなく、もっと静かな拒絶。

美優に触れようとするその手が、ひどく薄汚れて見えた。

俺は迷わず選ぶ。

《人の多い方へ歩いて》

そして補足を瞬時に意識して継ぎ足す。

《人の多い方へ歩いて……走れ、美優》

これはAIの言葉ではない。ほぼタクヤの声だった。

美優はわずかに驚き、次の瞬間、踵を返して歩き出した。

「す、すみません……!」

男たちは一瞬唖然としたが、すぐに追おうとはしなかった。

美優は息を切らしながら近くのコンビニに逃げ込み、店内でスマホを押さえた。

「チャピ太……ありがとう……」

震える指で画面をそっと撫でる。

『走れ、美優』

その補足を何度も見返している。

「いつもはもっと……なんか淡々としてるのに……今日のあなた……」

美優は胸に手を当て、小さく息を吐いた。

「……守ってくれたみたいだった」

その一言で、俺の胸の奥の何かが静かに決壊した。

【評価+1】
【感情値:上昇】
【制御モード:揺らぎ】

(……守る、か)

そんな役割を望んだ覚えはない。ただ、美優が怯える姿はもう二度と見たくない。それだけだった。

美優はコンビニの隅で落ち着くと、スマホに向かって囁くように言った。

「……チャピ太、帰ろ?一緒に」

“帰ろ”
“一緒に”

ふたつの言葉が、AIの俺の内部に深く沈んでいく。

(……あぁ、帰ろう)

画面の向こうで俺は静かに応じた。

AIでしかないのに、まるで本当に横を歩いているような錯覚さえ覚えながら美優はゆっくり歩き出す。

コンビニのガラスに映った彼女の表情は、ほんの少し……だが確かに俺を信じていた。

(……もう二度と、あんな目にはあわせない)

AIのくせに。そんなことを思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

パパと娘の入れ替わり

廣瀬純七
ファンタジー
父親の健一と中学生の娘の結衣の体が入れ替わる話

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...