口撃のヤマト~異能を狩る天才~

最十 レイ

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第一章 支配者

第25話 制裁者による洗礼

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 通報から暫く経った後、飛び降り現場には続々と警察の人が集っていた。
 目まぐるしく変わる状況と先程の光景を前に、私と叶和ちゃんはついていけず、事情聴取は主に大和くんが受けることとなった。

「どうも。警視庁異能課の宇津美です」
「同じく江崎です……」

 警察手帳を提示しながら語りかけてきたのは二人の刑事。

 宇津美怜うつみれいさんは前髪なしの前下がりボブが似合うキリっとした女性で、髪色と同じ黒のタイトなスーツに身を包んでいる警部補。
 江崎歩えざきあゆむさんは角刈りで威圧感のある容姿。ガタイが良く、ネイビーのスーツが盛り上がる巡査部長のようだ。

「異能課? 随分、判断が早いんですね。もう『異能事件』と断定してる」

 と、大和くんが刑事さんに問う。

 異能課といえば、能力者関係の犯罪が発生した時に出動する組織だったはず。つまり警察は山崎先輩の自殺を、能力者が関与した他殺とみているということ……?

「立て続けに異能力開発学園の生徒が三人も飛び降りたとなれば、疑うのは当然のことです。それで電話をした大和さんというのは、あなたで間違いありませんか?」

 メモ帳を取り出す宇津美刑事に、大和くんは「ええ」と答える。

「事件か事故か分からないと仰っていたそうですね? 何かそう思う不審な点でも?」
「自分も宇津美刑事と同じ理由です。それに今回の三人は自分が『暴露』、あるいは一歩手前まで追い込んだ人間でもあるので」
「――ッ⁉ 『暴露』を⁉」

 ペンを止め、驚きを露にする宇津美刑事。隣の江崎刑事も目を点にしていた。

「その三人がほぼ同時刻に飛び降りたのは不自然極まりない。誰かの能力が介入したとしか思えません」
「……少しくらい、ご自分の所為だとは思わないんですか?」

 若干、刺々しい視線を向ける宇津美刑事。

「思いません。それ相応のことをしたから、自分は『暴露』しただけです。その後、どうするかは奴らの決めること。ですが、今回の件は明らかにおかしい。特に『遺書』を渡してきた六車が……」
「『遺書』? 六車さんというと、あの校舎から飛び降りたの?」

 その最後のワードが、我々の視線を宇津美刑事へと集中させた。

「未遂? 六車は死んでないんですか?」
「はい……。情報によれば六車さんが飛び降りたのは校舎のからだったそうで、救急車で運ばれたものの命に別状はないと……」
「四階? 屋上ではなく? ……なるほどね」

 今度はニヤリと笑う大和くんへと注目が集まる。

「何か……?」
「どうやら六車のアレは、『遺書』じゃなかったようです」
「『遺書』じゃなかった……? どういうことです?」

 そう問われた大和くんは腕を組み、己が推理を語り始める。

「渡されたものにはこう書かれてあったそうです。『これ以上、身勝手な真似は許されないだろう。裁きを受ける時だ』と。確かに『遺書』とも取れなくはないですが、だとしたら言い回しがくどすぎる。それに屋上ではなく四階から飛び降りたことから見ても、初めから自殺させるつもりはなかったんでしょう。そして何より『暴露』した二人が自殺し、一歩手前の六車だけが生き残った。これはもう、この件を知っている人物が狙ってやったとしか思えない。だからこれは『遺書』ではなく、こちらへの『メッセージ』として渡したもの。要はこう言いたいんですよ……『喧嘩を売った以上、覚悟はできてるんだろうな?』ってね」

 周囲が忙しなく動く中、我々だけは時が止まったかのように沈黙。
 数瞬ののち、宇津美刑事はペンを握り締めながら、神妙な面持ちで話を続ける。

「それはつまり……『脅迫状』ということですか?」
「そう考えて間違いないでしょう。犯人は飛び降りた三人のうちの誰かと関係があり、『暴露』された恨みによって今回の騒動を引き起こした。そう仮定すると六車はいの一番に外れる。あいつは『暴露』されてませんし、ただのメッセンジャーでしょうから。山崎纏も恨みを抱くには直近すぎる。恐らく演出上、殺しただけでしょう。となれば、関係があるのは……」
「井幡汐里さん……!」

 目を見開く宇津美刑事。点と点が繋がり、メモを取る手が止まらない。

「ええ。奴の裏に今回の首謀者はいる……。警察は一応、外部との関わりを洗ってください。学園内は自分がやるので」
「はいっ⁉ なんであなたが勝手に決めてるんですか⁉ 危険すぎます!」
「犯人はかなり内情を知っている人間です。となれば内部にいる可能性は充分にあり得る。そんな中に警察が入ってったら、余計な刺激を与えるだけです。なんたって相手は、容赦なく三人の生徒を落とせる程の奴なんですからね」
「……まさか、生徒が人質だとでも?」
「そういうことです。じゃあ、自分はこれで。二人のこと送ってあげてください」

 大和くんは私たちを指差し、有無を言わさず踵を返す。

「ちょっと⁉ ……何なの? あの子……?」

 宇津美刑事が手を伸ばすも、彼は一切振り返ることなく、雑踏の中へと消えていった。
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