112 / 132
第二章 宝探し
第109話 宝探し終了!
しおりを挟む
何から何まで先読みされた葦原は、静寂の訪れた森で声高らかに笑う。
音声トラブルも後押ししてか、人目も憚らず、それはそれは盛大に……
しばらくして気が済んだのか、葦原は大きな息を吐くと共に、言葉を紡ぎ始める。
「……いやぁ~、やられたよ。お前の手のひらの上で、いいように転がされちまったってわけか」
「ああ。オレもやられっぱなしは嫌なんでね。返すべきもんは返させてもらった」
大和は言うや否や肩を揉みつつ首を回し、疲れ切った双眸で葦原の横をすり抜けていく。
もう話は終わり。宝探しも、世界のあれこれも、何もかも……
そんなお互いの背が離れゆく中、葦原は名残惜しむように最後……振り返らぬまま呟く。
「やっぱり俺たちは似た者同士……だよな?」
微かに届いた問いに、大和はゆるりと歩を止める。
が、こちらも振り返ることはなく、
「どうだかな。ま、いずれ分かるさ……必ず」
再び歩き出すと『草創の森』を後にした。
◆
校庭――
時刻は十二時二十分。
私、牧瀬友愛……並びに全校生徒は閉会式の為と校庭へ足を運ぶ。
ぞろぞろと集っていく生徒たちは、疲労と安堵の混じり合う面持ちで談笑している。
それもそのはず……蓋を開けてみれば完全失格と呼べるのは、伍堂くんと樫江田先輩なる人だけだからだ。さすが名門校とだけあって優秀ということなのだろう。
「いやぁ~、まさか本当に優勝できるとはな!」
「ほんとほんと! 諦めずに動いといてよかったぁ~」
「こんなにマジになったの初めてだぜ!」
「結構、楽しかったよな!」
そんな中でも我が二年B組は特段沸き立っていた。
集っていく度、その輪はどんどん広がっていき、気付けば一つの大きな『絆』に……。この学園でこんな景色を見れる日が来るなんて、正直思わなかった……
「そういえば相沢と蛯原の姿が見当たらねえな?」
「あぁ……あいつら何かドでかい花火打ち上げたとかで、ボロボロのまま病院に搬送されたらしいぜ」
「何やってんだあいつら……。まあ、相沢ならやりかねないけど……」
と、微かに届いた情報をさらっとスルーする私。どうも蛯原くんが関わると脳が自然にシャットアウトするようだ。仕方ない仕方ない……
「あ、牧瀬ちゃん。お疲れ様」
だが、そんな閉じられた扉を軽やかに開けたのは、小さく手を振る橋本さん。
彼女ならいつでも大歓迎。私は自然と頬を緩めつつ、お辞儀と共に橋本さんを迎えた。
「お疲れ様です、橋本さん。体調の方はもう?」
「うん。だいぶ休ませてもらったから今は大丈夫。それで……大和くんは?」
辺りを見回す橋本さんの問いに答えたのは、先程からそわそわしっぱなしの藤宮さん。
「それがまだ戻ってきてないのよぉ~ぅ! 心配ねぇ……まさか迷子にでもなってるんじゃないかしら⁉」
あれだけ縦横無尽に走り回っといて、さすがに迷子はないと思うけど……。藤宮さんは大和くんのこととなると少々自分を見失いがちだ。恋する乙女、恐るべし……!
「なんや? そないに心配せんでもワシならちゃーんとここにおるでぇ?」
すると今度は煙草を咥える伍堂くんがゆるりと登場。火はつけてないからギリギリセーフ……なんてことはなく、普通にアウトである。
「アンタじゃないわよッ‼ アタシが探してるのは慧よ、慧ッ! どこにやったのよぉぉおおおぉお⁉」
藤宮さんはまるで誘拐された我が子を返してもらわんと奮闘する、母の如き剣幕で伍堂くんの胸倉をぐわんぐわん揺すっている。こちらももうアウト寸前。
「ちょちょちょッ……落ち着かんかい、藤宮……! 兄弟ならすぐにィ……っ!」
「帰ってくる⁉」
と、一旦揺する手を止める藤宮さん。
「と、思うんやけど……」
だが、珍しく自信なさげな伍堂くんの返答に――
「アンタ兄弟分なら居場所くらい把握しときなさいよォッ‼ この不良もどきがぁぁあああああッッ‼」
藤宮さんの揺する手が、より一層激しさを増す。
「痛い痛い痛いっ……! 無茶言うなや! ……ってか、誰が不良もどきやコラァッ! ワシぁ、どっからどう見ても立派な不良やろうが……⁉」
「不良なら咥えてる煙草に火ィくらいつけなさいよッ! 中途半端だわ!」
「いや、そこは普通止める所やろ⁉ なんや⁉ 会えない時間か……? 兄弟と会えない時間がお前をそうさせたんかぁ⁉」
もはやいつものやり取り? ということにしてスルーする私と橋本さん。
しかし、さすがに見るに堪えなかったのか、次いで現れた渡くんにより、その怒りは一旦の収束を見る。
「まあまあ、落ち着きたまえ。彼ならもうすぐ――」
「帰ってくるのね⁉」
そう言いながら渡くんへと掴みかかろうとする藤宮さん。
渡くんは少々頬を引き攣らせつつ、その両腕を掴み返し、何とか阻止する。
「だ、大丈夫……! ほら、噂をすれば……」
渡くんの視線を追い、素直に左向け左する藤宮さん。
するとその先から、微かに「どけどけどけ! 優勝者のお通りだ!」との声が届く。
生徒たちが道を作るように避けていくと、奥からドヤ顔で先導する神田くん、そしてそれに続く大和くんが帰還を果たした。
「慧……」
と、その表情を少女漫画の主人公のようにキラキラと輝かせる藤宮さん。
「おう、藤宮。どうかしたのか?」
大和くんは優勝したというのに相変わらずの澄まし顔。
幾分か疲労の色を感じさせたが、果たして藤宮さんの反応は……
「ふ、ふん……! 別に? 帰ってくるならさっさと帰ってきなさいよ……バカ」
素直じゃないなぁ、もう……
音声トラブルも後押ししてか、人目も憚らず、それはそれは盛大に……
しばらくして気が済んだのか、葦原は大きな息を吐くと共に、言葉を紡ぎ始める。
「……いやぁ~、やられたよ。お前の手のひらの上で、いいように転がされちまったってわけか」
「ああ。オレもやられっぱなしは嫌なんでね。返すべきもんは返させてもらった」
大和は言うや否や肩を揉みつつ首を回し、疲れ切った双眸で葦原の横をすり抜けていく。
もう話は終わり。宝探しも、世界のあれこれも、何もかも……
そんなお互いの背が離れゆく中、葦原は名残惜しむように最後……振り返らぬまま呟く。
「やっぱり俺たちは似た者同士……だよな?」
微かに届いた問いに、大和はゆるりと歩を止める。
が、こちらも振り返ることはなく、
「どうだかな。ま、いずれ分かるさ……必ず」
再び歩き出すと『草創の森』を後にした。
◆
校庭――
時刻は十二時二十分。
私、牧瀬友愛……並びに全校生徒は閉会式の為と校庭へ足を運ぶ。
ぞろぞろと集っていく生徒たちは、疲労と安堵の混じり合う面持ちで談笑している。
それもそのはず……蓋を開けてみれば完全失格と呼べるのは、伍堂くんと樫江田先輩なる人だけだからだ。さすが名門校とだけあって優秀ということなのだろう。
「いやぁ~、まさか本当に優勝できるとはな!」
「ほんとほんと! 諦めずに動いといてよかったぁ~」
「こんなにマジになったの初めてだぜ!」
「結構、楽しかったよな!」
そんな中でも我が二年B組は特段沸き立っていた。
集っていく度、その輪はどんどん広がっていき、気付けば一つの大きな『絆』に……。この学園でこんな景色を見れる日が来るなんて、正直思わなかった……
「そういえば相沢と蛯原の姿が見当たらねえな?」
「あぁ……あいつら何かドでかい花火打ち上げたとかで、ボロボロのまま病院に搬送されたらしいぜ」
「何やってんだあいつら……。まあ、相沢ならやりかねないけど……」
と、微かに届いた情報をさらっとスルーする私。どうも蛯原くんが関わると脳が自然にシャットアウトするようだ。仕方ない仕方ない……
「あ、牧瀬ちゃん。お疲れ様」
だが、そんな閉じられた扉を軽やかに開けたのは、小さく手を振る橋本さん。
彼女ならいつでも大歓迎。私は自然と頬を緩めつつ、お辞儀と共に橋本さんを迎えた。
「お疲れ様です、橋本さん。体調の方はもう?」
「うん。だいぶ休ませてもらったから今は大丈夫。それで……大和くんは?」
辺りを見回す橋本さんの問いに答えたのは、先程からそわそわしっぱなしの藤宮さん。
「それがまだ戻ってきてないのよぉ~ぅ! 心配ねぇ……まさか迷子にでもなってるんじゃないかしら⁉」
あれだけ縦横無尽に走り回っといて、さすがに迷子はないと思うけど……。藤宮さんは大和くんのこととなると少々自分を見失いがちだ。恋する乙女、恐るべし……!
「なんや? そないに心配せんでもワシならちゃーんとここにおるでぇ?」
すると今度は煙草を咥える伍堂くんがゆるりと登場。火はつけてないからギリギリセーフ……なんてことはなく、普通にアウトである。
「アンタじゃないわよッ‼ アタシが探してるのは慧よ、慧ッ! どこにやったのよぉぉおおおぉお⁉」
藤宮さんはまるで誘拐された我が子を返してもらわんと奮闘する、母の如き剣幕で伍堂くんの胸倉をぐわんぐわん揺すっている。こちらももうアウト寸前。
「ちょちょちょッ……落ち着かんかい、藤宮……! 兄弟ならすぐにィ……っ!」
「帰ってくる⁉」
と、一旦揺する手を止める藤宮さん。
「と、思うんやけど……」
だが、珍しく自信なさげな伍堂くんの返答に――
「アンタ兄弟分なら居場所くらい把握しときなさいよォッ‼ この不良もどきがぁぁあああああッッ‼」
藤宮さんの揺する手が、より一層激しさを増す。
「痛い痛い痛いっ……! 無茶言うなや! ……ってか、誰が不良もどきやコラァッ! ワシぁ、どっからどう見ても立派な不良やろうが……⁉」
「不良なら咥えてる煙草に火ィくらいつけなさいよッ! 中途半端だわ!」
「いや、そこは普通止める所やろ⁉ なんや⁉ 会えない時間か……? 兄弟と会えない時間がお前をそうさせたんかぁ⁉」
もはやいつものやり取り? ということにしてスルーする私と橋本さん。
しかし、さすがに見るに堪えなかったのか、次いで現れた渡くんにより、その怒りは一旦の収束を見る。
「まあまあ、落ち着きたまえ。彼ならもうすぐ――」
「帰ってくるのね⁉」
そう言いながら渡くんへと掴みかかろうとする藤宮さん。
渡くんは少々頬を引き攣らせつつ、その両腕を掴み返し、何とか阻止する。
「だ、大丈夫……! ほら、噂をすれば……」
渡くんの視線を追い、素直に左向け左する藤宮さん。
するとその先から、微かに「どけどけどけ! 優勝者のお通りだ!」との声が届く。
生徒たちが道を作るように避けていくと、奥からドヤ顔で先導する神田くん、そしてそれに続く大和くんが帰還を果たした。
「慧……」
と、その表情を少女漫画の主人公のようにキラキラと輝かせる藤宮さん。
「おう、藤宮。どうかしたのか?」
大和くんは優勝したというのに相変わらずの澄まし顔。
幾分か疲労の色を感じさせたが、果たして藤宮さんの反応は……
「ふ、ふん……! 別に? 帰ってくるならさっさと帰ってきなさいよ……バカ」
素直じゃないなぁ、もう……
0
あなたにおすすめの小説
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる