口撃のヤマト~異能を狩る天才~

最十 レイ

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第二章 宝探し

第108話 永遠の栄光

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 エリア⑫、北東――

「入れ代わってなかったのか……?」

 己が勘違いに漸く気付き、気が抜けたように肩を落とす葦原。

「オレならやると思ったか? 買い被りすぎだ」

 対して大和は左中指につけた『永遠とわの指輪』を眺めつつ、さらにこう付け加えていく。

「お前は裏で風紀委員の仲間を使い、状況を把握していた。そんな中で入れ代われば当然、数多ある監視カメラでバレていたことだろう。だが、お前らは『大和慧ならやり兼ねない』という先入観で、入れ代わっているものだと思い込み、判断が遅れてしまった。違うか?」
「……確かに思ったかも。憎たらしいで完全に引っ張られちまった」

 葦原は何度か頷いてみせると、自嘲気味に笑む。

「それにルール上はとなっている。その点も判断が遅れた要因の一つだろう。果たしてもう一人の大和慧を優勝者と認めていいものだろうかと」
「なるほどな……。ってことは、そいつは部外者か?」

 と、葦原はスーツ姿の偽大和を顎で指す。

「ああ。デバイスを付けちゃいるが位置情報の設定はされていない。通信用にと『偃武場えんぶじょう』からくすねさせた、ある意味まがい物だ。ゆえに運営側にも悟られない。おまけに音声トラブルで聞こえないときたもんだ。連絡を取るのは容易だったよ」
「ふ~ん……そういや、変な鴉がコイン周りをウロチョロしてたとか情報が入ってたっけな。アレもお前らが?」

 葦原は更に二人の大和を交互に指差すと、探るような視線を両者間に彷徨わせる。

「さあ? なんのことか分からんな」
「惚けんなよ。監視カメラの目を潜り抜けるには『空』を行くしかない。そうだろ?」

 と、行き場のない指を空へと向ける葦原。
 しかし大和は、尚も躱すように肩を竦めてみせる。

「どうだかな。勝敗が決まった今となってはどうでもいいことじゃないか?」
「またまた……。俺もさぁ、始めはあの~……橋本さんだっけ? あの子の能力かと思ってたんだよ。いや、思い込んじまってた。ずっと監視してた所為でな。それにもう一人の大和慧は『暴露』以降、『草創の森』を出たことが確認されている。そんな奴がこのエリア⑫まで監視カメラに映らず来れるとしたら……そりゃもう空しかねえだろうよ? なあ?」

 葦原が殊の外うれしげに推理するも、当の大和は話半分で拳銃を拾いに行っており、ちゃっかり懐にしまっていた。

「仮にそうだとしても何か問題があるのか? 咎めることができるのか? 最初から不正していたお前らに」
「おっと耳が痛い……。そうまでして手の内を隠したいということかな?」
「寧ろ手の内を全部晒す方が馬鹿げてる。そういった意味じゃお前は……あまり宜しくなかったな?」

 大和が未だブリキのおもちゃが如く立ち尽くしている神田へ視線を移すと、葦原はすぐに察したのか、気落ちした吐息と共に指を鳴らす。すると――

「……ん? あれ? 俺、今まで何を……って、大和が二人いるぅっ⁉ っつーか、うるさっ‼ 花火ぃ⁉ ってか、何だこの音楽⁉ パレードかぁ⁉」

 遅ればせながら、能力が解除された神田が復帰。
 分身した大和にビクッと肩を上げつつ、空を見上げるわ辺りを見回すわで忙しない。あまりの状況の変化に、翼が縮こまるように背中へと収納されていく。

「ご苦労だったな、神田岳斗かんだがくとくん。もう用は済んだ」

 労いの言葉をかける葦原とは、相変わらず目が合わない。

「用は済んだって……っていうか、指輪はどうなった⁉ 優勝は⁉」

 神田はそんな葦原に眉を顰めたのち、思い出したように大和(二人)へと詰め寄ると、

「もちろん……優勝だ」

 大和(本物)がドヤ顔で指輪を見せびらかした。

「うぉおお! マジで優勝したのかよ⁉ やったぁ……って、この場合、どっちに抱きつけばいいんだ?」

 と、神田は両手を広げるが直前でストップ。
 交互に二人を見遣ると大和(偽者)が、「オレが引き受けよう」と両手を広げ、神田の抱擁を受け入れる。

「うぉおおお! よくやったぞ、大和ォ! お前ならやれるって信じてたぁぁああ!」
「よーしよしよし。向こうで遊んでましょうね~?」

 大和(偽者)は神田を抱き上げると、まるで子供をあやすように背をポンポンとタッチし、空気を読んで席を外した。

 残された大和と葦原……
 睨み合いの一つでもすれば格好がつくが、あいにく葦原とは目線が合わない。よって――

「まだ何か?」

 後輩の大和が気を利かし、切り上げを提案する。

「そうだなぁ……最後に一つ聞いていいか?」

 すると葦原もメリケンサックを懐にしまい、同意を示す。

「なんだ?」
「いやさ……今回のお前の策、結構博打だったと思うんだよね。もし俺が気付いて妨害でもしてたら、どうしてたのかなーって?」

 葦原の問いは何の変哲もない、至極当然なもの。
 しかし、だからこそ……そんな浅はかな疑問を口にしてはいけなかった。

 祝福の花火が打ち終わり、バックに流れていた音楽も風に吹かれた煙の如く消えた刹那――ニヤリと狡猾な皺を頬に宿す大和。
 まるでこの時を待っていたと言わんばかりの憫笑を前に、葦原は己が愚行を察した。

 だが、もう時すでに遅し。
 大和は満を持して、嘗て浴びせられた台詞を返す。

「『バトル展開になるとでも思ったか? ハハッ、ないって……。そもそもお前じゃオレには勝てないし、争う必要もない。だってオレらは――なんだから』……そっくりそのままお返しするぜ」

 ……皮肉たっぷりに。
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