お義兄様に一目惚れした!

よーこ

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19 未練を断ち切るために

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 さて、家を出て修道院に逃げ込み、二度と戻らないつもりのわたしだけれど、実は決行前に一つだけやっておきたいことがある。お義兄様に関することだ。

 六才の時に初めて会った時から、わたしはずっとお義兄様が好きだった。
 想いは年々膨らんでいき、今ではもう「愛」の域に達している。

 本当に本当に好きで好きで大好きで、お義兄様のためなら死ねると思うくらい、わたしはお義兄様を愛している。

 あまりに好きすぎて少し怖い。なぜなら、未練が残りそうな気がするからだ。
 未練が残ると、お義兄様に会いたいと思うあまり家に帰りたくなるかもしれない。

 そうならないために!
 お義兄様への未練を完全に断ち切るために!

 わたしはお義兄様を夜這いしようと決意した。
 お義兄様にわたしの処女を散らして欲しい。一度だけでいいから愛してもらいたい。
 その思い出があれば、この先ずっと一人でも生きていける。

 そうわたしは思ったのだった。



 ギレンセン家を去るすべての準備を整えた日の夜遅く。
 お義兄様が執務を終えて自室に戻り、就寝の準備を整えて一人になる頃合いを見計らうと、わたしはお茶のセットを持ってお義兄様の部屋を訪れた。
 ノックの後、開いた扉の向こうのお義兄様が、わたしの姿を見て驚いた顔をする。

「クリス? こんな夜遅くにどうしたんだ」
「眠れなくて。少しだけでいいので、お茶に付き合っていただけませんか?」
「ああ、なんだ、そいういうことか。もちろんかまわない。さあ、入ってくれ」

 お義兄様はなんの警戒もなくわたしを部屋に招き入れると、ソファに座るように促してくれた。わたしがお茶のセットをテーブルに置いてソファに座ると、そのすぐ隣にお義兄様も腰を下ろす。

 わたしはお茶を二人分作ると、カップの一つをお義兄様に差し出した。
 受け取ったお義兄様は所作美しくカップを持ち上げた。

「すごくいい香りだ」
「わたしが自分でブレンドしてみたんです。お口に合うといいのですが」

 お義兄様はカップを口につけた後、口角をわずかに上げた。

「美味いな。少しだけ変わった風味があるが……ハーブか?」
「さすがはお義兄様、滋養に良いという薬草がほんの少しだけ入っているんです。毎日たくさんのお仕事をなさっていて、お疲れのご様子ですから」
「そうか、気を使わせてすまないな……うん、美味い」
「お口にあって良かった」

 実はそのお茶には、出入り商人から密かに買い求めた媚薬と睡眠薬が入っている。
 睡眠薬は遅効性だけれど、媚薬は即効性のものだ。

 わたしはさりげなくお義兄様ににじり寄り、そっと身を寄せた。


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