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キサラギの里編
第61章 キサラギの里の攻防5 躍動
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キサラギ本家周辺では、ジル・キサラギとゲンジが交戦を繰り広げていた。ジルが腕を振るう度に、周囲を取り囲むモンスターや機兵が、まるで見えない刃に斬りつけられたかのように、バラバラに切断されていく。
ジルは植栽や家屋の上を、まるで魔猫のように身を翻しながら躍動しながら、里に侵入した敵を撃ち落としつつ、ゲンジへの警戒も怠らない。
ゲンジは、目まぐるしく空間転移を駆使してジルの攻撃をかわしつつ、隙を窺うように、空間の断裂『ディメンションクラック』で反撃する。しかし、ジルの素早い動きを捉えることは出来なかった。
「(攻撃の軌道が目視出来ないが、オレのように空間に干渉している気配は無い。しかし、この殺傷力!なかなかに手強い。)」
ジルの力を分析しつつ距離をとろうとしたその時、上体を捻るジルの動きに合わせて、破壊された家屋の建材が、礫となってゲンジ目掛けて飛んできた。
「ぬ!」
それまでと勝手の違う、目に見える攻撃に、ゲンジは対応が一瞬遅れる。
瓦礫を『ディメンションクラック』でバラバラに破壊して直撃を防ぐも、その直後、自らの体が何かに縛り付けられている感覚に気がつく。
「これは・・・魂気で形成した繊維か!それも、極めて細く、頑丈な。」
「ご明答。」
ジルの主力武器、『エナジーファイバー』。
彼女は両手の十指から、極細の繊維状に形成した魂気を伸ばし、それを振るうことで標的をバラバラに切断したり、絡め取った瓦礫を飛ばしたりしていたのだ。
繊維は、ティルが用いているムチと比べても扱いの難しい武具。それを10本も同時に自在に操ることは、ジルの技量の高さがあってこその極技だった。
「このまま、葛餅みたいに引き裂いてやるよ。」
ジルはゲンジに巻きつけた繊維を、躊躇いなく一気に引き絞った。
「・・・ッ!」
ゲンジは、空間転移により、間一髪でジルの拘束から脱出する。ジルの背後を取ると、すかさず『ディメンションクラック』を放った。
ジルもすかさず反応するが、完全にはかわしきれず、腕を斬撃がかすめる。
魂気で体を覆っていたにも関わらず、手甲が真っ二つに割られ、前腕から鮮血が流れ出す。
「クハハッ、我が『ディメンションクラック』に斬り裂けぬものなど無いわ!」
ゲンジが高笑いを上げたその時、ゲンジの体からもまた、血飛沫が上がる。辛うじて脱出したものの、『エナジーファイバー』による拘束は、すでにゲンジの体を蝕んでいたのだ。
「気付くのが遅いよ。」
「ほざけ!」
互いに衝突する両者。
攻防の最中、ジルはゲンジの力を分析する。
「(ガード不可能の斬撃を放てるようだが、空間転移に比べて使用の頻度は高く無い。空間に干渉する力を持っている以上、断裂をいくらでも放てるのだとしたら脅威だが、よく動く割に攻撃は手ぬるい。空間転移よりも、断裂のエネルギー消費が大きいのかも知れない。これ見よがしに飛ばしてくる斬撃も、大した大きさでないものも多い。全ての攻撃に、怯える必要は無いな。)」
ゲンジの攻撃パターンを見定めながら、仮説を重ねていく。
「(人体を断裂出来るサイズの斬撃を受ければ、ガードしても致命傷は免れないだろうが、それ以外は見せ玉だな。ヤツが大きなタメを作る瞬間にさえ注意していれば良い。)」
ジルの動きに、徐々に余裕が出てくる。一方、自らの力の特性を見抜かれつつあることを悟ったゲンジは、焦りを滲ませ始める。小刻みに空間転移を繰り返し、大小織り交ぜて空間の断裂を放つが、ジルは大きな斬撃は確実にかわし、致命傷にならないと判断した斬撃については、かわし切れなくても、防具や急所以外の部位で受け流し、ゲンジに反撃を加えていく。
「ガフっ。」
ジルが飛ばした瓦礫がゲンジをかすめ、苦悶の声が漏れる。
「(空間転移の能力も、何でもありってわけじゃないハズだ。あの手の力は、あらかじめマーキングした拠点以外には、そうそう自由に飛べないだろう。オーバーテクノロジーが狙いなら、私を無視して屋敷の中に移動しても良さそうなものだが、その気配はない。
移動できる範囲は、奴が目視できる、もしくは、障害物に触れずに自力で移動出来る場所、とでも言ったところか?
・・・確かめるか。)」
ジルは懐から何かを取り出すと、ゲンジに向かって投げつけた。次の瞬間、目も眩むほどの閃光が周囲を包む。
「く・・・!閃光弾か!」
ゲンジは反射的に両目を覆い、体をくの字に曲げて硬直する。
「(動きが止まった。転移して緊急避難する様子もない。条件は少なくとも前者は確定かな?」
ここが勝機と判断し、魂気の繊維で再びゲンジを絡め取りにかかる。
しかしその時、ゲンジから不穏な魔力が立ち上る。
彼の額から流れていた赤血は、青黒く変わっていた。エクトプラズマーの切り札、魔獣形態への変貌。
闇夜に怪しく灯る金色の眼。黒ずくめの服から覗く肌は、浅黒い鱗で覆われ、手先には大型の爬虫類のような禍々しい爪が。
「このオレを、舐めるなぁ!」
怒声を上げると、辺り一面に大量の空間の断裂を撒き散らした。
そのほとんどは、小型の断裂だったが、ジルの仕掛けた『エナジーファイバー』の包囲網をバラバラに切り裂く。
同時に、間合いを詰めていたジルの全身を刃がかすめた。
「(ちっ!効率度外視で反撃してきた。変態出来るとは、少々侮ったか・・・。)」
ジルは一旦、間合いを取り直す。
「今だ、やれ!」
ゲンジの命令で、残っていた機兵の1体が、キサラギ本家の家屋の壁を砲撃し、風穴を開けた。
閃光弾の影響から立ち直ったゲンジは、目視できるようになった屋敷の中に照準を定め、空間転移を発動。ジルの打倒よりも屋敷の中にあるオーバーテクノロジー強奪を優先する行動に移った。
屋敷の中に移動したゲンジは、魔獣の姿のまま、息を切らして廊下を駆ける。
「(魔力を使い過ぎた。これ以上戦いを長引かせても、恐らく奴を仕留めきれん。当初の目的を優先する。)」
屋敷の奥を目指し、ティルとバンのいる研究室の前まで迫っていた。
ジルは植栽や家屋の上を、まるで魔猫のように身を翻しながら躍動しながら、里に侵入した敵を撃ち落としつつ、ゲンジへの警戒も怠らない。
ゲンジは、目まぐるしく空間転移を駆使してジルの攻撃をかわしつつ、隙を窺うように、空間の断裂『ディメンションクラック』で反撃する。しかし、ジルの素早い動きを捉えることは出来なかった。
「(攻撃の軌道が目視出来ないが、オレのように空間に干渉している気配は無い。しかし、この殺傷力!なかなかに手強い。)」
ジルの力を分析しつつ距離をとろうとしたその時、上体を捻るジルの動きに合わせて、破壊された家屋の建材が、礫となってゲンジ目掛けて飛んできた。
「ぬ!」
それまでと勝手の違う、目に見える攻撃に、ゲンジは対応が一瞬遅れる。
瓦礫を『ディメンションクラック』でバラバラに破壊して直撃を防ぐも、その直後、自らの体が何かに縛り付けられている感覚に気がつく。
「これは・・・魂気で形成した繊維か!それも、極めて細く、頑丈な。」
「ご明答。」
ジルの主力武器、『エナジーファイバー』。
彼女は両手の十指から、極細の繊維状に形成した魂気を伸ばし、それを振るうことで標的をバラバラに切断したり、絡め取った瓦礫を飛ばしたりしていたのだ。
繊維は、ティルが用いているムチと比べても扱いの難しい武具。それを10本も同時に自在に操ることは、ジルの技量の高さがあってこその極技だった。
「このまま、葛餅みたいに引き裂いてやるよ。」
ジルはゲンジに巻きつけた繊維を、躊躇いなく一気に引き絞った。
「・・・ッ!」
ゲンジは、空間転移により、間一髪でジルの拘束から脱出する。ジルの背後を取ると、すかさず『ディメンションクラック』を放った。
ジルもすかさず反応するが、完全にはかわしきれず、腕を斬撃がかすめる。
魂気で体を覆っていたにも関わらず、手甲が真っ二つに割られ、前腕から鮮血が流れ出す。
「クハハッ、我が『ディメンションクラック』に斬り裂けぬものなど無いわ!」
ゲンジが高笑いを上げたその時、ゲンジの体からもまた、血飛沫が上がる。辛うじて脱出したものの、『エナジーファイバー』による拘束は、すでにゲンジの体を蝕んでいたのだ。
「気付くのが遅いよ。」
「ほざけ!」
互いに衝突する両者。
攻防の最中、ジルはゲンジの力を分析する。
「(ガード不可能の斬撃を放てるようだが、空間転移に比べて使用の頻度は高く無い。空間に干渉する力を持っている以上、断裂をいくらでも放てるのだとしたら脅威だが、よく動く割に攻撃は手ぬるい。空間転移よりも、断裂のエネルギー消費が大きいのかも知れない。これ見よがしに飛ばしてくる斬撃も、大した大きさでないものも多い。全ての攻撃に、怯える必要は無いな。)」
ゲンジの攻撃パターンを見定めながら、仮説を重ねていく。
「(人体を断裂出来るサイズの斬撃を受ければ、ガードしても致命傷は免れないだろうが、それ以外は見せ玉だな。ヤツが大きなタメを作る瞬間にさえ注意していれば良い。)」
ジルの動きに、徐々に余裕が出てくる。一方、自らの力の特性を見抜かれつつあることを悟ったゲンジは、焦りを滲ませ始める。小刻みに空間転移を繰り返し、大小織り交ぜて空間の断裂を放つが、ジルは大きな斬撃は確実にかわし、致命傷にならないと判断した斬撃については、かわし切れなくても、防具や急所以外の部位で受け流し、ゲンジに反撃を加えていく。
「ガフっ。」
ジルが飛ばした瓦礫がゲンジをかすめ、苦悶の声が漏れる。
「(空間転移の能力も、何でもありってわけじゃないハズだ。あの手の力は、あらかじめマーキングした拠点以外には、そうそう自由に飛べないだろう。オーバーテクノロジーが狙いなら、私を無視して屋敷の中に移動しても良さそうなものだが、その気配はない。
移動できる範囲は、奴が目視できる、もしくは、障害物に触れずに自力で移動出来る場所、とでも言ったところか?
・・・確かめるか。)」
ジルは懐から何かを取り出すと、ゲンジに向かって投げつけた。次の瞬間、目も眩むほどの閃光が周囲を包む。
「く・・・!閃光弾か!」
ゲンジは反射的に両目を覆い、体をくの字に曲げて硬直する。
「(動きが止まった。転移して緊急避難する様子もない。条件は少なくとも前者は確定かな?」
ここが勝機と判断し、魂気の繊維で再びゲンジを絡め取りにかかる。
しかしその時、ゲンジから不穏な魔力が立ち上る。
彼の額から流れていた赤血は、青黒く変わっていた。エクトプラズマーの切り札、魔獣形態への変貌。
闇夜に怪しく灯る金色の眼。黒ずくめの服から覗く肌は、浅黒い鱗で覆われ、手先には大型の爬虫類のような禍々しい爪が。
「このオレを、舐めるなぁ!」
怒声を上げると、辺り一面に大量の空間の断裂を撒き散らした。
そのほとんどは、小型の断裂だったが、ジルの仕掛けた『エナジーファイバー』の包囲網をバラバラに切り裂く。
同時に、間合いを詰めていたジルの全身を刃がかすめた。
「(ちっ!効率度外視で反撃してきた。変態出来るとは、少々侮ったか・・・。)」
ジルは一旦、間合いを取り直す。
「今だ、やれ!」
ゲンジの命令で、残っていた機兵の1体が、キサラギ本家の家屋の壁を砲撃し、風穴を開けた。
閃光弾の影響から立ち直ったゲンジは、目視できるようになった屋敷の中に照準を定め、空間転移を発動。ジルの打倒よりも屋敷の中にあるオーバーテクノロジー強奪を優先する行動に移った。
屋敷の中に移動したゲンジは、魔獣の姿のまま、息を切らして廊下を駆ける。
「(魔力を使い過ぎた。これ以上戦いを長引かせても、恐らく奴を仕留めきれん。当初の目的を優先する。)」
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