立ちはだかるは魔獣の王から毒親まで⁉︎ 少年剣士と翼の少女と仲間たちの、絆と成長の物語 ー鋼魂戦記(こうごんせんき)ー

eggman

文字の大きさ
64 / 91
キサラギの里編

第61章 キサラギの里の攻防5 躍動

しおりを挟む
キサラギ本家周辺では、ジル・キサラギとゲンジが交戦を繰り広げていた。ジルが腕を振るう度に、周囲を取り囲むモンスターや機兵が、まるで見えない刃に斬りつけられたかのように、バラバラに切断されていく。

ジルは植栽や家屋の上を、まるで魔猫のように身を翻しながら躍動しながら、里に侵入した敵を撃ち落としつつ、ゲンジへの警戒も怠らない。

ゲンジは、目まぐるしく空間転移を駆使してジルの攻撃をかわしつつ、隙を窺うように、空間の断裂『ディメンションクラック』で反撃する。しかし、ジルの素早い動きを捉えることは出来なかった。

「(攻撃の軌道が目視出来ないが、オレのように空間に干渉している気配は無い。しかし、この殺傷力!なかなかに手強い。)」

ジルの力を分析しつつ距離をとろうとしたその時、上体を捻るジルの動きに合わせて、破壊された家屋の建材が、礫となってゲンジ目掛けて飛んできた。

「ぬ!」

それまでと勝手の違う、目に見える攻撃に、ゲンジは対応が一瞬遅れる。
瓦礫を『ディメンションクラック』でバラバラに破壊して直撃を防ぐも、その直後、自らの体が何かに縛り付けられている感覚に気がつく。

「これは・・・魂気で形成した繊維か!それも、極めて細く、頑丈な。」

「ご明答。」

ジルの主力武器、『エナジーファイバー』。
彼女は両手の十指から、極細の繊維状に形成した魂気を伸ばし、それを振るうことで標的をバラバラに切断したり、絡め取った瓦礫を飛ばしたりしていたのだ。
繊維は、ティルが用いているムチと比べても扱いの難しい武具。それを10本も同時に自在に操ることは、ジルの技量の高さがあってこその極技だった。

「このまま、葛餅みたいに引き裂いてやるよ。」

ジルはゲンジに巻きつけた繊維を、躊躇いなく一気に引き絞った。

「・・・ッ!」

ゲンジは、空間転移により、間一髪でジルの拘束から脱出する。ジルの背後を取ると、すかさず『ディメンションクラック』を放った。
ジルもすかさず反応するが、完全にはかわしきれず、腕を斬撃がかすめる。
魂気で体を覆っていたにも関わらず、手甲が真っ二つに割られ、前腕から鮮血が流れ出す。

「クハハッ、我が『ディメンションクラック』に斬り裂けぬものなど無いわ!」

ゲンジが高笑いを上げたその時、ゲンジの体からもまた、血飛沫が上がる。辛うじて脱出したものの、『エナジーファイバー』による拘束は、すでにゲンジの体を蝕んでいたのだ。

「気付くのが遅いよ。」

「ほざけ!」

互いに衝突する両者。
攻防の最中、ジルはゲンジの力を分析する。

「(ガード不可能の斬撃を放てるようだが、空間転移に比べて使用の頻度は高く無い。空間に干渉する力を持っている以上、断裂をいくらでも放てるのだとしたら脅威だが、よく動く割に攻撃は手ぬるい。空間転移よりも、断裂のエネルギー消費が大きいのかも知れない。これ見よがしに飛ばしてくる斬撃も、大した大きさでないものも多い。全ての攻撃に、怯える必要は無いな。)」

ゲンジの攻撃パターンを見定めながら、仮説を重ねていく。

「(人体を断裂出来るサイズの斬撃を受ければ、ガードしても致命傷は免れないだろうが、それ以外は見せ玉だな。ヤツが大きなタメを作る瞬間にさえ注意していれば良い。)」

ジルの動きに、徐々に余裕が出てくる。一方、自らの力の特性を見抜かれつつあることを悟ったゲンジは、焦りを滲ませ始める。小刻みに空間転移を繰り返し、大小織り交ぜて空間の断裂を放つが、ジルは大きな斬撃は確実にかわし、致命傷にならないと判断した斬撃については、かわし切れなくても、防具や急所以外の部位で受け流し、ゲンジに反撃を加えていく。

「ガフっ。」

ジルが飛ばした瓦礫がゲンジをかすめ、苦悶の声が漏れる。

「(空間転移の能力も、何でもありってわけじゃないハズだ。あの手の力は、あらかじめマーキングした拠点以外には、そうそう自由に飛べないだろう。オーバーテクノロジーが狙いなら、私を無視して屋敷の中に移動しても良さそうなものだが、その気配はない。
移動できる範囲は、奴が目視できる、もしくは、障害物に触れずに自力で移動出来る場所、とでも言ったところか?
・・・確かめるか。)」

ジルは懐から何かを取り出すと、ゲンジに向かって投げつけた。次の瞬間、目も眩むほどの閃光が周囲を包む。

「く・・・!閃光弾か!」

ゲンジは反射的に両目を覆い、体をくの字に曲げて硬直する。

「(動きが止まった。転移して緊急避難する様子もない。条件は少なくとも前者は確定かな?」

ここが勝機と判断し、魂気の繊維で再びゲンジを絡め取りにかかる。

しかしその時、ゲンジから不穏な魔力が立ち上る。

彼の額から流れていた赤血は、青黒く変わっていた。エクトプラズマーの切り札、魔獣形態への変貌。
闇夜に怪しく灯る金色の眼。黒ずくめの服から覗く肌は、浅黒い鱗で覆われ、手先には大型の爬虫類のような禍々しい爪が。

「このオレを、舐めるなぁ!」

怒声を上げると、辺り一面に大量の空間の断裂を撒き散らした。
そのほとんどは、小型の断裂だったが、ジルの仕掛けた『エナジーファイバー』の包囲網をバラバラに切り裂く。
同時に、間合いを詰めていたジルの全身を刃がかすめた。

「(ちっ!効率度外視で反撃してきた。変態出来るとは、少々侮ったか・・・。)」

ジルは一旦、間合いを取り直す。

「今だ、やれ!」

ゲンジの命令で、残っていた機兵の1体が、キサラギ本家の家屋の壁を砲撃し、風穴を開けた。

閃光弾の影響から立ち直ったゲンジは、目視できるようになった屋敷の中に照準を定め、空間転移を発動。ジルの打倒よりも屋敷の中にあるオーバーテクノロジー強奪を優先する行動に移った。

屋敷の中に移動したゲンジは、魔獣の姿のまま、息を切らして廊下を駆ける。

「(魔力を使い過ぎた。これ以上戦いを長引かせても、恐らく奴を仕留めきれん。当初の目的を優先する。)」

屋敷の奥を目指し、ティルとバンのいる研究室の前まで迫っていた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

異世界国盗り物語 ~戦国日本のサムライ達が剣と魔法の世界で無双する~

和田真尚
ファンタジー
 戦国大名の若君・斎藤新九郎は大地震にあって崖から転落――――気付いた時には、剣と魔法が物を言い、魔物がはびこる異世界に飛ばされていた。 「これは神隠しか?」  戸惑いつつも日本へ帰る方法を探そうとする新九郎  ところが、今度は自分を追うように領地までが異世界転移してしまう。  家臣や領民を守るため、新九郎は異世界での生き残りを目指すが周囲は問題だらけ。  領地は魔物溢れる荒れ地のど真ん中に転移。  唯一頼れた貴族はお家騒動で没落寸前。  敵対勢力は圧倒的な戦力。  果たして苦境を脱する術はあるのか?  かつて、日本から様々なものが異世界転移した。  侍 = 刀一本で無双した。  自衛隊 = 現代兵器で無双した。  日本国 = 国力をあげて無双した。  では、戦国大名が家臣を引き連れ、領地丸ごと、剣と魔法の異世界へ転移したら――――? 【新九郎の解答】  国を盗って生き残るしかない!(必死) 【ちなみに異世界の人々の感想】  何なのこの狂戦士!? もう帰れよ!  戦国日本の侍達が生き残りを掛けて本気で戦った時、剣と魔法の異世界は勝てるのか?  これは、その疑問に答える物語。  異世界よ、戦国武士の本気を思い知れ――――。 ※「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも投稿しています。

霊力ゼロの陰陽師

テラトンパンチ
ファンタジー
生まれつき霊力を持たない少年、西園寺玄弥(さいおんじげんや)。 妖怪の王を封じた陰陽師の血を引きながら、彼だけが“無能”と呼ばれていた。 霊術学院で嘲笑され、才能の差を突きつけられる日々。 それでも諦めきれなかった彼の前に現れたのは、王と対立する最強クラスの妖怪――九尾・葛葉。 「貴様の力は、枯れているのではない。封じられているだけだ」 仮契約によって解かれた封印。 目覚める霊力。動き出す因縁。 これは、無能と蔑まれた少年が、仲間と共に妖怪の王へ挑む物語。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

おっさん冒険者のおいしいダンジョン攻略

神崎あら
ファンタジー
冒険者歴20年以上のおっさんは、若い冒険者達のように地位や権威を得るためにダンジョンには行かない。 そう、おっさんは生活のためにダンジョンに行く。 これはそんなおっさんの冒険者ライフを描いた生活記である。

処理中です...