シンプル男子の恋愛談

第2話『アクシデント』

　辺りは暗くなり始め、雨が降り出した。生徒たちは傘をさしながら一斉に下校し始める。
　僕は終わっていない課題があったために、友人の大和蓮と共に、放課後、1時間ほど教室にいた。そして課題が終わり、「帰らないか」と誘われたので承諾し、二人で帰る。大和は中学からの仲で同じ高校に入るとわかった時は、この僕でもちょっとばかり嬉しかった。家も近所で、趣味や嗜好が似ているなど、何かと共通点の多い友である。
　二人が通る道に雨は降り続け、傘からはみ出た僕のズボンの裾を濡らす。その瞬間、向こうから歩いてくる人影に鳥肌が立った…。そう、僕はまた例の彼女に会ってしまった。
　「あ、え、うそ」と声を上げてしまうと、大和は当然それに気づき、「どうした？」と心配する。
　これまでは朝にしか会ったことがなかった。帰り道で遭遇するなんて初めてである。まあでも同じ学校に通っているわけだから、どっちだって当たり前である。
「来る、こっちへやって来る…」
迫る彼女は僕の心臓を鼓動させる。両方の距離はどんどん狭くなっていく。このとき、僕はこの感情を理解することはできなかったが、後々考えれば、このときすでに彼女のことを…。
　そして僕らの前を彼女は通り過ぎた。チラ見することすらなく。すると大和が僕に言った。
「もしかして濱のこと（笑）」
半笑いでそう言うと、僕は大袈裟に否定した。
「そんなわけない！そんなことない！なんでそう思われないといけないんだよ！」
大和は少し引いて「へぇ」と告げ、僕を置いて先にゆく。
　雨はさっきよりも強くなっていった。