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第四話:夜の車内は熱を帯びて(密室の作戦会議)【前編】
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第四話:夜の車内は熱を帯びて(密室の作戦会議)【前編】
「わざわざ店に入ることもない。……ここで話すのが、一番効率的だろう?」
フロントガラスを叩く雨粒が、街灯の光を乱反射させていた。
スーパーの裏手にある、街灯もまばらなコインパーキング。
俺の車の助手席には、いつものように彼女が座っている。
「……そう、ですね。ファミレスだと、他のママ友に見られるかもしれませんし」
丸顔の彼女が、少し緊張した面持ちで周囲を気にするように呟いた。
今日はPTA行事で使う備品の買い出しだった。予定より時間が押し、外はすっかり暗くなっている。互いの家族には「作業が長引いている」と連絡済みだ。
狭い車内には、彼女が着ている柔軟剤の甘い香りと、雨の湿り気が混じり合った、独特の濃密な空気が漂っていた。
エンジンを切った車内は、急速に二人の体温で満たされていく。
「お疲れ様。……これ、領収書と資料のまとめ」
俺が資料を差し出す際、わざと彼女の指先に触れた。
彼女はびくりと肩を震わせたが、指を引こうとはしない。それどころか、俺の手に重ねるようにして、資料をダッシュボードに押しやった。
「……あなた。今日は、もう……限界なんです」
彼女の丸い瞳が、暗がりの中で潤んで揺れている。
「何が、限界なんだ?」
俺はわざと意地悪く問いかけ、彼女の頬に手を添えた。
「……私、家に帰りたくない。優しい母親の顔をして、何もなかったように夕飯を作るのが、時々……耐えられなくなるんです。あなたに触れられた記憶が、まだこんなに熱いのに」
彼女の言葉は、俺の心の奥底にある飢えを正確に射抜いた。
俺だって同じだ。一度知ってしまったこの背徳の味は、日常という薄味の食事では決して満たされることはない。
「……なら、ここで『作戦会議』を続けよう。明日からまた、完璧な親を演じ切るための……必要な充電だ。そうだろう?」
「ええ。……これは、私たちの役割を全うするための、必要な時間」
彼女は自分自身に言い聞かせるように頷くと、自らシートベルトを外し、俺の方へと身を乗り出してきた。
狭い運転席と助手席の間で、二人の体が重なり合う。
コンソールボックスが邪魔で、思うように動けないもどかしさが、かえって欲望に火をつけた。
「……窓が、曇ってきましたね」
彼女が熱い吐息を俺の首筋に吹きかける。
外からは、俺たちの姿はもう見えない。
結露したガラスが、この車を世界から切り離された二人だけの聖域へと変えていた。
俺は彼女の丸顔を引き寄せ、貪るように唇を重ねた。
シートを深く倒す。
ギシッ、と車体が軋む音が、静かな夜のパーキングに妙に生々しく響いた。
「わざわざ店に入ることもない。……ここで話すのが、一番効率的だろう?」
フロントガラスを叩く雨粒が、街灯の光を乱反射させていた。
スーパーの裏手にある、街灯もまばらなコインパーキング。
俺の車の助手席には、いつものように彼女が座っている。
「……そう、ですね。ファミレスだと、他のママ友に見られるかもしれませんし」
丸顔の彼女が、少し緊張した面持ちで周囲を気にするように呟いた。
今日はPTA行事で使う備品の買い出しだった。予定より時間が押し、外はすっかり暗くなっている。互いの家族には「作業が長引いている」と連絡済みだ。
狭い車内には、彼女が着ている柔軟剤の甘い香りと、雨の湿り気が混じり合った、独特の濃密な空気が漂っていた。
エンジンを切った車内は、急速に二人の体温で満たされていく。
「お疲れ様。……これ、領収書と資料のまとめ」
俺が資料を差し出す際、わざと彼女の指先に触れた。
彼女はびくりと肩を震わせたが、指を引こうとはしない。それどころか、俺の手に重ねるようにして、資料をダッシュボードに押しやった。
「……あなた。今日は、もう……限界なんです」
彼女の丸い瞳が、暗がりの中で潤んで揺れている。
「何が、限界なんだ?」
俺はわざと意地悪く問いかけ、彼女の頬に手を添えた。
「……私、家に帰りたくない。優しい母親の顔をして、何もなかったように夕飯を作るのが、時々……耐えられなくなるんです。あなたに触れられた記憶が、まだこんなに熱いのに」
彼女の言葉は、俺の心の奥底にある飢えを正確に射抜いた。
俺だって同じだ。一度知ってしまったこの背徳の味は、日常という薄味の食事では決して満たされることはない。
「……なら、ここで『作戦会議』を続けよう。明日からまた、完璧な親を演じ切るための……必要な充電だ。そうだろう?」
「ええ。……これは、私たちの役割を全うするための、必要な時間」
彼女は自分自身に言い聞かせるように頷くと、自らシートベルトを外し、俺の方へと身を乗り出してきた。
狭い運転席と助手席の間で、二人の体が重なり合う。
コンソールボックスが邪魔で、思うように動けないもどかしさが、かえって欲望に火をつけた。
「……窓が、曇ってきましたね」
彼女が熱い吐息を俺の首筋に吹きかける。
外からは、俺たちの姿はもう見えない。
結露したガラスが、この車を世界から切り離された二人だけの聖域へと変えていた。
俺は彼女の丸顔を引き寄せ、貪るように唇を重ねた。
シートを深く倒す。
ギシッ、と車体が軋む音が、静かな夜のパーキングに妙に生々しく響いた。
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