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剣聖討伐戦 Ⅲ

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「痺れとけ!『ライトニング』!」
「効くかよ!」
 
 俺の放った『ライトニング』は軽々と剣で払われてしまう。
 スキルを弾くなんて聞いたことが無い。
 
「遅い!」
「くっ!」
 
 一気に距離を詰められる。
 が、『俊足』で距離を取る。
 
「……お前、複数スキルを使えるのか?」
「……さて、どうだろうな。」
 
 カインは足を止め、暫く考える。
 
「……『ライトニング』に『俊足』、どちらも被害者のスキルだ……。それに気配を遮断する『隠密』。……この『隠密』は独自の物か……。どうなんだ?アルフレッド?」
「答えるかよ!」

 また『俊足』で距離を詰め、仕掛ける。
 が、難なく躱されてしまう。
 
「お前、スキルを奪えるのか?そういうスキルを手に入れたのか……それとも古代の特殊な遺物か……。」
「くそっ!」
 
 何度も何度も仕掛ける。
 が、全てかわされてしまう。
 片手間に躱されてしまうのが情けない。
 
「……そのナイフ、中々独特な形をしてるな……。それか?」
 
 夢中で仕掛けていると、僅かな隙から攻められる。
 何とか凌げるが、余裕ではない。
 そして、質問される。
 この洞察力の鋭さもスキルのお陰なのか。
 
「くそっ!強い!」
「アルフレッド君!落ち着くんだ!おそらく、君の手の内は読まれている!一度自分の手札を見返すんだ!勝利の鍵は必ずある!」
 
 シャインがアドバイスをくれた。
 そうか。
 落ち着け。
 俺にはあれがあるじゃないか。
 
「まぁ、何をしても俺の勝利は変わらないがな。おらっ!」
「くっ!」
 
 カインの一撃を受ける。
 非常に重い。
 が、耐えられる。
 時間が経てば経つほどこちらが有利になる筈だ。
 
「ティルは大丈夫そうか?」
(私は余程の事が無い限り壊れませんのでご安心を。)
 
 成る程。
 ならば無茶しよう。
 
「おいおい。そんな物か?……そういえばフレンは泣いて助けてくれって言ってたぞ?体でも何でも好きにしていいからってな?命の為ならお前も裏切るってな。」
「……分かりやすい挑発だな。」
 
 だが、奴の雰囲気は変わった。
 挑発に乗ったな。
 
「だが乗ってやるよ!」
「よしっ!」
 
 カインはすぐに距離を詰め何度も何度も斬り込んで来る。
 俺は何とか受けるので精一杯だ。
 だが、もうすぐ戦況は一変する。
 
「……そろそろか。」
「……ん?」
 
 カインが違和感を覚え始めたようだ。
 が、攻撃は止まない。
 
「お前……いや、気のせいか?」
「……残念だけどお前の負けだよ。」
 
 ナイフを横に一振り薙ぐ。
 すると、カインはすぐに後ろに退いた。

「……なっ!?」

 カインの服が少し斬れていた。
 俺のナイフが届いたのだ。

「何故だ!?何故斬られた!?体力的にもお前は限界のはず!」
「……お前の動きを『模倣』した。体力も、傷も『回復』した。」
 
 そして、懐に隠していた針を投げる。
 これもグレンの『模倣』だ。
 
「ちっ!」
 
 何本か弾かれるが、一本だけ刺さった。
 
「くそっ!」
 
 すぐに抜かれてしまう。
 が、もう遅い。
 
「今の針には『調合』した麻痺毒が塗られている。いくら耐性がスキルで強化されていても、じきに動けなくなる。」
「っ!クソが!」
 
 カインはすぐに距離を縮めてくる。
 俺はカインに向けて『ファイアボール』を放った。
 
「こんな子供騙しが……っ!?」
 
 カインは火を払ってこちらに突っ込んでくる。
 が、火を抜けた先に俺は居ない。
 
「どこだ!?ぐっ!」
「お前が俺を感知していたのは音だろ?『隠密』でも音は消せないからな。」
 
 背後からナイフを一突き。
 スキルの効果も合わさって大ダメージだ。
 
「『ファイアボール』の炎の音で俺の音を消し、お前を焦らせることで注意を散漫にした。『俊足』と合わせて『隠密』を発動し、背後に回った。すると、見事にお前の背中はがら空きになった。」
「く……そが!」
 
 激痛に耐えながら剣を振り回すカイン。
 
「くっ!……かはっ!」
「ナイフには毒を塗っておいた。本来なら即死の毒だが、お前のスキルの効果ならばまだまだ死ねないだろ?」
 
 カインは剣を杖にまだ立っている。
 が、血を吐き、満身創痍だ。
 
「俺はそれ以上に苦しい思いをしてきた。死んだほうがマシだとも思える事を、ずっと、ずっと、ずっと、生まれてからずっと、経験してきた。」
 
 カインはついに立ってられなくなる。
 その場にうつ伏せに倒れてしまう。
 
「だが、死ねなかった。お前も簡単には殺さない。」
 
 薬を飲ませる。
 俺が『調合』した即効薬だ。
 毒だけを消し去る。
 
「くっ!」
 
 少しは楽になったのか、立とうとする。
 が、毒のダメージに加え『奇襲』と『不意打ち』のダメージが強かったのか、立てずにいた。
 
「動くなよ?『ライトニング』」
「ぐあっ!」
 
 今度こそ命中し、動けなくなるカイン。
 
「お前の剣技は覚えた。今度はお前のスキルを貰うぞ。その前に……。」
「なっ!?」
 
 動けなくなったカインの腕を折る。
 
「ぐあぁぁぁぁ!」
「存分に虐めてやる。」
 
 そして、足も。
 村中にカインの悲鳴が鳴り響く。
 
「ア、アルフレッド君!警備隊や自警団がこっちに来てます!」
「……仕方ないですね。」
 
 このまま『ワープ』して拠点で殺しても良いが、村人に心の支えであったカインが死んだことを知らしめておきたい。
 
「……本当ならもっといじめてから殺したかったけど、いいや。」
「ま、待て!悪かった!これまでの事は謝る!何でもする!お前に頼まれれば勇者でも何でも殺してやる!だから殺さないでくれ!」
 
 見苦しい。
 こんなにも見苦しいのか。
 
「……お前に勇者は殺せないだろ?」
「え?」
「こんな俺に負けるんだからな。」
 
 ナイフで心臓を一突きにする。
 ナイフが光り、スキルを奪った。
 
(……お疲れ様でした。スキル『剣聖』を奪いました。)
「やっと……。」
 
 拳を握りしめる。
 
「やっとだ。ついにカインを殺した!後は村の連中を皆殺しにするだけだ!もう楽勝だ!『剣聖』があればどんな奴でも殺せる!村の連中だって!勇者も殺せば……魔王でさえも殺せるぞ!」
「……アルフレッド君。お疲れ様。ひとまず拠点に戻ろうか。疲れを癒そう。」
「……そうですよ。『回復』は精神的疲労は癒せません。一旦帰りましょう。」
 
 シャインに肩に手を置かれ、我に帰る。
 少し気分が高揚していたようだ。
 
「……そうですね。帰りますか。グロールさんにもこの事を知らせたいですし。」
 
 早く帰ろう。
 もう俺の復讐は終わったも同然だ。
 後はゆっくりと殺して回れば良い。
 そう思うと思わず笑みが溢れてしまう。
 
「さ、帰りましょうか!行きましょう!レインさん!」
「あ、はい……。」
 
 俺はスッキリとした気分であった。
 今まで以上に心が晴れていた。
 最高の気持ちだ。
 
 
 
(大丈夫でしょうか?……少し不気味に感じてしまいます。)
 
 アルフレッド君の最後の様子。
 以前のアルフレッド君なら復讐以外には興味が無いといった感じでしたが……。
 最後のアルフレッド君はどこか、力を求めている……もしくは殺戮を求めているように見えました……。
 
(アーロン隊長……。私は……レインはどうすれば……。)
 
 恐らく、今後はシャル隊長達、陽炎部隊も敵対していくことになるでしょう。
 その時、アルフレッド君がアーロン隊長の、お父さんの仇を取ろうとするのか……殺しを楽しむのか、しっかりと見極めなければ……。
 
「後でグロールさんにも相談してみましょう……。」
「さ、帰りましょうか!行きましょう!レインさん!」
「あ、はい……。」
 
 何処か心はスッキリとしないままアルフレッド君達と共にワープをする。
 今までで一番心が曇っている。
 この不安は、杞憂なのだろうか……。
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